コラム

卒業式、体育館外も無線で映像配信し、保護者にも好評

学校法人ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパンのオンライン配信事例

学校現場では、コロナ禍の対応をきっかけに、多くの授業や学校行事がオンラインで配信されるようになったほか、さまざまな学習活動がリモートで実施されるようになりました。一方で、オンライン配信の利用が増えたことから、児童生徒や保護者、先生の中にはより高いクオリティの配信を望む声もあがっています。本稿では、学校現場でも愛⽤者が多い映像機器関連メーカー「Blackmagic Design (ブラックマジックデザイン)」にご協⼒いただき、様々な学校での配信事例をご紹介していきます。
UWC ISAK Japan、卒業式をオンラインで配信

第1回目は長野県軽井沢にあるインターナショナルスクール、学校法人ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン(以下、UWC ISAK Japan)です。同校は、約80カ国から集まったおよそ200名の生徒が在校する全寮制の高校になります。

生徒の保護者の約70%は海外在住。そのため、コロナ禍で我が子の卒業式に参加できない海外在住の保護者のために、同校では2020年から卒業式をライブ配信してきました。今年からよりクオリティの高い配信を保護者に届けたいとBlackmagic Designの「ATEM Miniスイッチャー」を導入し、卒業式の配信を実施。導入の背景や使用感をDirector of Communication and MarketingのDean Kirkness 氏 (以下 Kirkness氏) と、Manager of TechnologyのRie Koido 氏(以下、Koido氏)に聞きました。

学校の配信動画も「クオリティ」が重要な時代、一方で「生徒が使えるシンプルさ」も欲しい

「以前は、配信中に不具合があっても保護者の方に許容してもらえる感じだったのが、最近は配信動画を観る機会も増えたせいか、学校に対しても、よりクオリティの高い配信を求められるようになってきました」と語るのは、UWC ISAK JapanのKoido氏です。たしかに、卒業式のような人生の節目にあたる学校行事については、我が子の晴れ姿を良い画像で観たい、という保護者ニーズはあるでしょう。

そこでUWC ISAK Japanが導入したのは高スペックなビデオスイッチャー「ATEM Mini Extreme ISO」と、よりシンプルで低価格なスイッチャー「ATEM Mini(※)」の2台。前者はもちろん高品質な配信を行なうためですが、後者は「生徒も使えるように」という意図があるといいます。

※現在、ATEM Miniは終息しており、より多機能なATEM Mini Proがエントリーモデルとなっています。

ATEM Mini Extreme ISO
ATEM Mini(現在はATEM Mini Proがエントリーモデル)

Kirkness氏によると、導入のポイントは「価格が手頃だったことや、ATEM Miniシリーズの製品ラインナップが多く、生徒用、教員用と機材を柔軟に選べたところ」とのこと。特に、利用者が多いために英語でも日本語でも活用情報を入手しやすく、YouTubeにチュートリアルビデオなども沢山ある点も高く評価いただいています。

卒業式では体育館内外を接続カメラ3台と無線伝送システムをフル活用

実際の卒業式では、これらの製品をベースに卒業式の会場である体育館の中と外を配信できる環境を構築。インターナショナルスクールの卒業式では、卒業生が外でキャップを投げるセレモニーがあるため、その様子を撮影・配信できるように、無線で映像を飛ばす環境も用意しました。

卒業式、外でのセレモニーも撮影し、オンライン配信

具体的には、無線伝送システムの「Hollyland COSMO C1」を導入し、SONYのビデオカメラで外の様子を撮影。体育館の中には、Canonの一眼レフカメラ「EOS」を2台を設置し、それぞれテッククルーと呼ばれる生徒がKirkness氏のカメラワークの指示の下、操作を担当しました。

卒業式のオンライン配信環境と体育館で使用したカメラ
Micro Converter BiDirectional SDI-HDMI 3G

ちなみに、カメラとATEM Mini Extreme ISOの接続は距離が長いため、Blackmagic Designの「Micro Converter BiDirectional SDI-HDMI 3G」を接続してケーブルの距離を延長したといいます。HDMIケーブルは長距離の接続ができないため、HDMIから業務用のSDIケーブルを使用できるようにコンバーターを使用する必要があるからです。ほかにはYAMAHAの音声のミキサーや、Shureのワイヤレスマイクセットモニター、PCも使用しました。

Kirkness氏のカメラワークの指示の下、生徒たちも映像配信を担当

Kirkness氏は実際に使用してみて、「ATEM Mini Extreme ISOでは、ほとんどの操作は実際にボタンを押して行います。以前はソフトウェアで映像切り替えをしていましたが、圧倒的に使いやすいですね。またこのモデルは、配信の機能も搭載しているため、配信用のソフトウェアが必要ない点も便利ですね」と話してくれました。

またKoido氏は、「レシーバーの置く位置によって電波の強弱があり、式典の最中と外に出る直前でレシーバーの位置を動かすようにアドバイスをいただいたり、音声ミキサーの入出力レベルについても確認していただきました。単純に機材を繋いで配信する、といったことは自分たちできますが、実際に見ている方にどんな風に見える/聞こえるかといったところまでは、なかなか気がつきません。おかげできれいな形で配信することができました」と、販売店のサポートが配信の質を上げるために役立ったと語ってくれました。

今後は、生徒自身がカメラやATEM Miniを操作して配信したり、授業でATEM miniを取り入れるなど、生徒や教員のやりたいことを尊重したいとKirkness氏。映像体験を通して、多くの経験を積めるようサポートしていきたいと考えているそうです。

荒井 幸子(Blackmagic Design)