コラム

文化祭から選挙演説まで、生徒主体で活用が広がるオンライン配信

茗溪学園中学校高等学校の配信事例

学校現場では、コロナ禍の対応をきっかけに、多くの授業や学校行事がオンラインで配信されるようになったほか、さまざまな学習活動がリモートで実施されるようになりました。一方で、オンライン配信の利用が増えたことから、児童生徒や保護者、先生の中にはより高いクオリティの配信を望む声もあがっています。本稿では、学校現場でも愛⽤者が多い映像機器関連メーカー「Blackmagic Design (ブラックマジックデザイン)」にご協⼒いただき、様々な学校での配信事例をご紹介していきます。
今では、かなりのイベントを生徒たちがオンライン配信

第2回目は茨城県つくば市にある茗溪学園中学校高等学校です。同校は、日本最大級のサイエンスシティ「筑波研究学園都市」の研究者子弟の教育を目的に創立された中高一貫校です。国際理解教育に重きを置くほか、2017年には国際バカロレア認定校にもなっています。

そんな同校では、コロナ禍のオンライン授業をきっかけに「ATEM Miniスイッチャー」を導入。学校行事や教育活動にその活用を広げていきましたが、なかでも興味深いのは、生徒会選挙をオンラインで実施し、選挙演説を生徒たちがオンライン配信したこと。その時の様子について、茗溪学園中学校高等学校 DX戦略室 室長 赤木 義和氏に話を聞きました。

複雑なことがしたくなったから、出力数が多いスイッチャーを導入

「2020年のコロナ禍でオンライン授業への移行を検討し始めた頃、ATEM Miniがとても手ごろな値段だったので、これなら予算内で買えると思って飛びつきました」と赤木氏。

最初は、必要に迫られてやり始めたオンライン授業でしたが、1か月も過ぎれば、良いところがたくさんあることに気づいたといいます。これを機に、著名な先生を招いたオンライン講演会、学校説明会や文化祭、卒業生を送る会など、さまざまなイベントをオンラインで開催するようになり、現在は、オンラインと対面のハイブリット形式で学校行事を開催することも増えてきました。

卒業生を送る会の様子

なかでも、学校説明会はオンラインの方ができることが多くて反響もよかったそうです。赤木氏は「本校の志願者には海外駐在者の子弟も多く、以前はわざわざ説明会のために来日しないといけなかったのですが、オンラインになったことで海外にいながら参加できるようになりました。学校側にとっても会場設置費やシャトルバスのチャーター代などコストや準備の負担軽減につながりました」と語ってくれました。

同校では、最初にATEM Miniスイッチャーの初期モデルを導入したものの、すべての入力信号を1画面で確認できるマルチビュー機能を搭載した「ATEM Mini Pro」を追加で購入。さらに出力数が多い「ATEM Mini Extreme ISO」も購入し、映像配信のクオリティを向上させていきました。「何か複雑なことをしようとすると、出力が足りなくなる」と話す赤木氏。ATEM Mini Extremeでは、HDMIとUSBの出力がそれぞれ2系統あるところを評価いただいています。

学校説明会の様子。出力数が多い「ATEM Mini Extreme ISO」を導入し、見せられるものが増えた

生徒会のオンライン選挙で、演説を配信

同校の取り組みで注目したいのは、生徒会のオンライン選挙です。筑波大学と組んで、同大学が用意したサーバーを使って、データの改竄がないことを担保したオンラインの投票システムを実現。さらに、ATEM Mini Proを活用して選挙演説を生徒たちがオンライン配信し、各教室のプロジェクターで観て投票するというスタイルで、選挙全体をオンライン化しました。主権者教育の一環で取り組み、これらを全て生徒主体で進めたといいます。

オンライン選挙や演説の様子

こうした活動などを通して、生徒たちから「自分たちで配信をやってみたい」というリクエストが来るように。同校では、生徒には新しいことにどんどん挑戦してほしいという教育方針のもと、生徒たちのやりたい気持ちを尊重し、かなりのイベントを生徒主導で配信しているようです。現在は、生徒用にもATEMスイッチャーを導入しています。

「生徒主体で文化祭の配信を初めてしたときは、失敗続きでしたが、試行錯誤しながら良くなってきています。ATEMスイッチャーは直感的に使えるし、操作も映像を切り替えるスイッチングくらいなので、中学生でも使いこなせてしまいます。本校で一番配信に詳しい生徒(現在は高等部)がいて、彼は中学3年の時に校内の配信を全部取り仕切っていました」と赤木氏。初心者の生徒から配信を極める生徒まで、さまざまな生徒たちが関わって学校行事を盛り上げている様子が伝わってきました。

今では、対面とオンラインのハイブリッドで開催することも増えた

一方で、機材は導入したけれど、まだ配信をやったことがない、活用ができていないという学校もあると思いますが、”まずはやってみることが大事”だと赤木氏は話しています。同校でも配信を始めたばかりの頃は、不具合に対して苦情がきたこともあったようですが、「全て学校のスタッフでやっている」と伝えたら苦情が来なくなったようです。

茗溪学園中学校高等学校 DX戦略室 室長 赤木 義和氏

「本校では、配信の時も敢えて配信スタッフを画面に映したりします。それは、本校にそうした人材がいることの広報活動にもなりますし、校内で手弁当でやっていることを伝えてもいます。最初はトラブルがあると思いますが、失敗を恐れずに、それも教育だと思って始めることが大事だと思います」と赤木氏は話してくれました。

導入機材

映像スイッチャー:ATEM Mini(現在はATEM Mini Proがエントリーモデル) (生徒用)
映像スイッチャー:ATEM Mini Extreme ISO (教職員用)

荒井 幸子(Blackmagic Design)