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ボタンひとつでハイフレックス授業、リアルとオンラインの一体感を実現する環境

関西大学の配信事例

学校現場では、コロナ禍の対応をきっかけに、多くの授業や学校行事がオンラインで配信されるようになったほか、さまざまな学習活動がリモートで実施されるようになりました。一方で、オンライン配信の利用が増えたことから、児童生徒や保護者、先生の中にはより高いクオリティの配信を望む声もあがっています。本稿では、学校現場でも愛⽤者が多い映像機器関連メーカー「Blackmagic Design (ブラックマジックデザイン)」にご協⼒いただき、様々な学校での配信事例をご紹介していきます。

第3回目は関西大学です。同大学は、学生数が約3万人、大阪府下に5キャンパス13学部を擁する総合大学です。コロナ禍以前は、キャンパス間の交流や、海外大学との交換留学も当たり前のように行っていましたが、コロナをきっかけに状況は一変。実施が難しくなり、ICTを活用した教育環境の整備に着手しました。

具体的には、5つのキャンパスに「ATEM Mini Extreme ISO」をベースに設計したハイフレックス教室「Global Smart Classroom(以下、GSC)」を整備したほか、映像コンテンツを制作するための小部屋「GSC Cubic」を3室設置。これらの設備について、大学執行部 堀井康史氏に話を聞きました。

ハイフレックス授業が誰でも簡単にできる環境を重視

オンラインと対面、同時に授業を行う「ハイフレックス授業」は、コロナ禍をきっかけに多くの大学で実施されるようになりました。関西大学も同様ですが、堀井氏によるとそのタイミングで文部科学省の補助金が下りたこともあり、ハイフレックス授業が行える専用教室GSCと、映像コンテンツを制作できるGSC Cubicを整備したといいます。

GSCは、ATEM Mini Extreme ISOをベースに設計。教室は広く、大画面ディスプレイ、天井マイク、遠隔操作で首振りを制御できるPTZカメラを設置しています。イベント利用の際は学内にあるカメラを追加することも可能です。

Global Smart Classroom(GSC)の大画面ディスプレイ

ハイフレックス授業では、学生と教員のコミュニケーションが円滑に行えるよう、双方向性を作り出す仕組みとしてLMS(学習管理システム)を活用。オンラインで授業を受ける学生、教室で授業を受ける学生、その両方が教員による画面操作で交流するようになりました。

GSCに設けられた教員の操作デスク

堀井氏はGSCを設計するにあたり、「多くの教員が使う環境なので、トラブルを避けるために、できる限り設定画面に触れる必要がないよう、誰でも簡単に使える環境を重視しました」と話しています。そこで、ATEM Mini Extreme ISOの操作についても、教員が直接触るのは複雑だと考え、Elgato製マクロボタンデバイス「Stream Deck」を導入。同製品を使うと、授業でよく使う機能などを液晶ボタンに割り当てられるので、ICT機器の操作に不慣れな教員もボタンひとつで操作を完了することができます。

Elgato製マクロボタンデバイス「Stream Deck」

Stream Deckは、Bitfocusが開発する無償の制御ソフト「Companion」を使って、欲しい機能を各ボタンに割り当てることができます。こうした機器を取り入れることで、さまざまな操作をワンタッチでできるようにしました。

一方で、簡単な操作性を重視するのであれば、エントリーモデルのATEMスイッチャーを使うという選択肢もあると思いますが、これについて堀井氏は、エントリーモデルは機能に制限があり、授業の一体感を届けられないといいます。

「オンライン授業を受ける学生はパソコンしか持っておらず、学生に一体感のあるリアルな授業を届けるには、授業のコンテンツ、先生の顔、教室の雰囲気、教員側から見えるオンライン上の学生の様子、これらを全て同じ画面に出したくて、そのためにはATEM Mini Extreme ISOの4画面を1画面にまとめて同時出力する機能 (SuperSource)が便利でした。また、授業以外でも講演会の配信でカメラをたくさん使う場合に、ATEM Mini Extreme ISOだと入力が8系統もあるので、入力が足りなくなる心配もありません」(堀井氏)。

GSCに整備されたATEM Mini Extreme ISO

映像コンテンツを制作する小部屋も

関西大学では、GCSのほかに映像コンテンツを制作する専用の小部屋GSC Cubicも整備しました。同大学では現在、多くの授業が対面に戻っていますが、AI・データサイエンス等の全学向け共通教養科目ではオンデマンド配信を行っており、今後も映像コンテンツを活用した講義は増えていくようです。

映像コンテンツを制作する専用の小部屋GSC Cubic

GSC Cubicは、グリーンバックを設置して教員をクロマキーで抜いて背景を合成できるようになっています。またBlackmagic DesignのStudio Camera 4K Plus (2台)、HyperDeck、そしてATEM Miniスイッチャーを組み合わせて対談風の収録もできるようになっており、よりコンテンツ作りに特化した部屋となっています。そして、ここでもStream Deckを使ったコントロールを可能にしました。編集用に、DaVinci ResolveとコントローラーのDaVinci Resolve Speed Editorも使えるようになっています。

大学執行部 堀井康史氏

堀井氏は、「今後もこんな機能が欲しいというリクエストがあれば、ボタンひとつで実現できるように機能を追加したいと思っています。また、デジタル機器に強い学生さんにもティーチングアシスタントとしてこの活動に参加してもらい、DX機器のサポート体制を充実させたいですね。私は”進化するDX”と呼んでいますが、教員や学生の要望に合わせて学習環境を進化させていきたいです」と語ってくれました。

導入機材

映像スイッチャー: ATEM Mini Extreme ISO 8台
編集用コントローラー:DaVinci Resolve Speed Editor 3台
再生/レコーダー:HyperDeckx 3台
編集ソフトウェア:DaVinci Resolve Studio
カメラ:Blackmagic Studio Camera 4K Plus 6台
Elgato製マクロボタンデバイス:Elgato Stream Deck MK.2

荒井 幸子(Blackmagic Design)