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地域の人を笑顔にしたい! 小4がプログラミング×プロジェクションマッピングの発表イベントを開催

柏市立大津ケ丘第一小学校・4年生「プログラマッピング」授業レポート①

校内のさまざまな場所で工夫をこらしたプロジェクションマッピングを披露

いつもならとっくに下校しているはずの暗くなった学校の教室で、カラフルなプロジェクションマッピングを披露する子供たち……そんな非日常感たっぷりのイベントが、2023年12月15日に千葉県柏市立大津ケ丘第一小学校で開かれた。地域の人に楽しんでもらおうと企画された本イベントは、保護者や地域とのつながりを感じる温かい時間となった。

大津ケ丘第一小学校「プログラマッピング」の授業レポート(全4回)

目次
1回目:地域の人を笑顔にしたい! 小4がプログラミング×プロジェクションマッピングの発表イベントを開催
2回目:学校は面白い場所がいっぱい!小4が創造性を発揮するプロジェクションマッピングが始動
3回目:小4が挑むプロジェクションマッピング、試行錯誤と工夫の連続が育む論理的思考力
4回目:2月20日公開予定

地域の人に楽しんでもらいたい!プログラミングで作品づくり

このイベントに挑んだのは大津ケ丘第一小学校の4年生。2クラスが10班に分かれて、この日のためにプロジェクションマッピングの準備をしてきた。2学期の総合的な学習の時間に、地域の人に喜んでもらうことを目指して進めてきたプロジェクトで、テーマは「笑い」。1学期の国語で落語を学んだことを生かして、見る人を楽しませる笑いがあるストーリーの作品作りに取り組んできた。

投映する作品はプログラミングで制作した。使用したのはエプソン販売株式会社と株式会社ユニティで共同開発中のアプリ「プログラマッピング」。直感的な操作でプロジェクションマッピングにぴったりのアニメーションのプログラムを作成できる。笑いを意識したストーリーづくりと、それを実現するプログラミング、さらにプロジェクションマッピングとして投映するという3つの要素が詰まった成果をいよいよ発表する。

アプリ「プログラマッピング」でプロジェクションマッピング用のアニメーションをプログラミングで作った。プログラムのチェックも入念に

子供たちは班ごとに校内の10箇所の発表場所に分かれ、お客さんを待った。普段なら学校から子供がいなくなる16時過ぎからお客さんがどんどん集まり始め、非日常感が高まる。

お客さんを迎える準備を整える

読書センター、理科室、家庭科室……校内のあちこちで一斉に発表スタート!

開始の放送を合図にそれぞれの発表場所で一斉に作品の発表がスタート! 作品は投映場所も内容も実に様々で、個性が出る。例えば天井に投映した班は読書センターの畳スペースを生かして「横になって見てください」と呼びかけた。

畳スペースに転がったり座り込んだりして天井に映った作品を楽しむ

廊下の壁の特徴を生かした班も。あえて窓枠にかかるように投映し、キャラクターが角に頭をぶつけてしまうという演出にリアリティを持たせた。位置を合わせて投映するのには苦労したという。見ているお客さんからは「ジャンプしてぶつかるところがよく考えられているなと思いました」という感想が出た。

キャラクターが窓枠の角にぶつかるという演出。ぴったり位置があっている
リハーサル中、位置が合っているか確認しながら動作チェック

家庭科室では中央にトースターを置き、開けるたびにいろいろなものが出てくるという不思議なトースターを演出した。扇風機で出てきたものが飛ばされるシーンもあり、家庭科室にあるリアルなものとの組み合わせを工夫した。さいごには通販番組のような口調でトースターの値段を当ててもらうというトークも。笑いが起き、「最後のクイズが面白かったです」とお客さんにも好評だ。

トースターを開けるたびにいろいろなものが登場

同じくリアルなものとの組み合わせでも、こちらは投映する壁の手前に本を積み上げ、山に見立てた。山を舞台にしたストーリーが展開した。

手前に本を積んで山に見立てた。教室の高い位置に投映したのもいい演出になっている

さまざまなしかけや「笑い」につながるストーリーも

プロジェクションマッピングならではのしかけや、笑いを生み出す工夫もさまざまだ。水槽に投映した班は、その意外なアイデアで多くのお客さんの目をひいた。

実際に魚が泳いでいる水槽に釣糸を垂らし、いろいろなものを釣り上げてしまうというストーリー。目の前にいる発表メンバーが映像に登場して釣りをしたり、ときには釣られて水中から現れたりするので、そのたびに笑いが起こる。タイミングを合わせてセリフを言う様子もリズムがいい。「話の内容がとても面白くて水槽を生かすのもすごく良かったです」とお客さんから感想があがった。

水槽上部にトレーシングペーパーを貼って水上部分の投映を見やすくした。水中部分には魚も投映されていて、水槽のリアルな魚とあわせた演出に
アニメーションに合わせてセリフを言って上演

理科室の雰囲気を生かしてお化け屋敷が舞台のストーリーを展開した班は、広い教室の中でお客さんを誘導するために、観覧席以外を「呪い」の机とする演出も行った。投映場所に人体模型を置いたり、机の金属部分を叩いて効果音を出したり、リアルなお化け役が登場したりと、プロジェクターで投映する画面だけで完結しない工夫をした。

リアルな要素との組み合わせをいろいろ盛り込んだ
「呪い」の机とする演出を盛り込むなど理科室の雰囲気も工夫

教室の後ろのロッカーの四角いマス目に注目し、その形状を生かした投映も。9マス分のロッカーにピタッと合うようにカラフルなマス目を投映し、どこかから何かが現れるというクイズ仕立てにした。投映箇所の立体的な特徴に合わせて投映するプロジェクションマッピングらしさが際立つ。

マス目を生かした映像と内容でワクワク感が増す

ほかにもストーリーにこだわった工夫をこらした作品が並び、お客さんは校内の発表場所を自由に見てまわった。1時間の発表時間に子供たちは繰り返し上演をして、お客さんの誘導や前後の発表トークも行い、充実した時間となった。

校内の各所でいろいろな作品が発表された

見守る地域の人や保護者の目線も温かく

見に来ていた保護者に感想を聞いてみると、「どの班もそれぞれ内容も違って、みんなで考えてやってきたんだなということがすごくよくわかりました」、「今の子供たちは勉強でプログラミングを学べていいなと思います」、「それぞれ、最後を笑いに持っていくという風にちゃんと考えられていて素晴らしいなと思いました」、「とても面白かったです。さすが4年生だなと思いました」など、感心する声があがった。

また、家庭での子供たちの様子については、「家でもすごく練習していて『楽しみにしててね』と言っていました」、「放課後家に帰ってからオンラインで話し合ったり練習したりしていました。今は便利ですね……」、「家でも話していましたね。みんなの意見をまとめるのがやっぱり大変で、それを反映させてプログラムをするっていうのが良い学びだなと思います」などと具体的な話が聞け、子供たちのがんばりを家庭でも見守ってきた様子が伝わってきた。

上演後のトークで子供たちが聴衆に感想を求めると、地域の人や保護者を含むお客さんから毎回積極的に声があがり、「たいしたもんだね。堂々としているのがいいね。120点だな!」などの激励も。全体的にとても温かい雰囲気だった。

実は4年生は発表会直前に体調不良者の増加で学年閉鎖になり、この日も登校できなかった児童がとても多く、家庭からオンラインでつないで発表側の一員として参加した子供たちもいた。上演中のセリフや、上演後のトークも家庭にいながらオンラインで行っていて、日頃からパソコンの活用が定着し子供たちが使い慣れているからこその対応力が見えた。

イベント開始前、欠席の子供たちもオンラインで参加しながら準備を進めた

ストーリー作りとプログラミングの協働で個人の試行錯誤を越えた成果に

4年生の発表の後は全員が真っ暗な校庭に集まり、6年生が校舎に投映するデジタルイルミネーションを披露した。4年生の子供たちは今回の経験をもとに、2年後自分たちもさらにステップアップした作品づくりをするイメージが持てたのではないだろうか。

大勢の保護者や地域の人が集まり、校庭から校舎に投映した大きな作品を楽しんだ
季節感のある作品を6年生の2クラスが1作品ずつ作成して発表した

※6年生のデジタルイルミネーションはプログラマッピングとは別の取り組みです。

放送大学 客員教授 佐藤幸江先生

4年生が取り組んできた本プロジェクトは、放送大学教授 中川一史先生と、同客員教授 佐藤幸江先生の監修の元で行われた。当日子供たちの発表を見てまわった佐藤先生は、子供たちの発表コメントに、「友達と意見が合わずに大変だった」という声があったことに注目。「単にプログラムを試行錯誤して作るだけでなくて、自分たちの考えをぶつけあって折り合いをつけている。正にこれからの子供たちが必要な調整して合意形成をしていく姿が見えたので、私たちが望んだ以上のレベルになっていると感じました」と話す。

柏市立大津ケ丘第一小学校 佐和伸明校長

大津ケ丘第一小学校の佐和伸明校長は、「これまでのプログラミングは論理的思考力を育むということを中心にやってきました。今回はそれに加え、自分の思考だけではなくて、友達と協働しながら作品を作っていく、その作品を発表する、さらにデジタルアニメーションとさまざまなアナログの要素を融合していくということで、子供たちが得るものは大きかったのではないかと思います」と振り返った。

暗くなってからの学校という非日常的な空間で、子供たちの「地域の人を楽しませたい」という思いと、そこに至るまでの成長の成果が発揮された素敵な発表会となった( 第2回に続く )。