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「前の環境には戻れない……」、電子黒板と1人1台端末の活用が進んだ学校の声

―戸田市立戸田東小学校・中学校の電子黒板活用事例

戸田市立戸田東小学校・小学2年国語の授業の様子

“1人1台端末の活用がなかなか広がらない”、そんな課題を抱えている教育関係者は多い。

一方で、「電子黒板があったからこそ、1人1台端末の活用が進んだ」と話す学校がある。戸田市立戸田東小学校・中学校(以下、戸田東小学校・中学校)では教科に関係なく、すべての教員が電子黒板を日常的に活用し、1人1台端末を文房具のように当たり前のツールとして児童生徒が使っているという。

戸田東小学校・中学校では、電子黒板と1人1台端末を使ってどのような授業を実施しているのか。その様子を紹介しよう。

ほとんどの教室で朝から電子黒板をフル活用

埼玉県戸田市といえば、GIGAスクール構想が始まる前からICT教育に力を入れている自治体だ。2016年から教育改革に着手し、1人1台端末やクラウドを活用した学びを見据えてChromebookを導入。以来、産官学民で連携しながら、ICT教育にまつわる様々な実証事業や研究に取り組み、全国から多くの視察が訪れている。

戸田市立戸田東小学校・中学校(埼玉県戸田市)

そんな戸田市において、2021年に新たに開校したのが戸田東小学校・中学校である。同校は1つの施設で小学1年生から中学3年生までが学ぶ施設一体型小中一貫校で、全教室にエプソンの電子黒板が整備されている。ほかにも校内には、壁3面のプロジェクターや3Dプリンター、高性能コンピューターなど最新のICT環境を整備した「STEAM Lab」と呼ばれる教室もあり、プログラミング教育やSTEAM教育といったクリエイティブな学習が行われている。

戸田東小学校の登校時間に訪問すると、すでにほとんどの教室の電子黒板に電源がついていた。そこには、教員からのメッセージや今日の予定、連絡事項が表示されており、登校してきた児童たちが確認できるようになっている。

予定や連絡事項を児童に見せるだけなら、普通の黒板と変わらないと感じるかもしれない。しかし、黒板は毎回書いて消す時間がかかり、そして一度消した情報は元に戻らない。これが電子黒板なら、スライドを用意しておけば一瞬で表示でき、他のスライドに切り替えるのも一瞬だ。学校の朝の限られた時間、児童に伝えたいことを瞬時に切り替えることができるのは、とても貴重である。

朝の会の様子。左)小学2年生のクラス、右)小学4年生のクラス

さらに始業前の英語モジュール学習も、電子黒板でデジタル教材を表示。児童は発音を聞きながら単語や英文を復唱、五感を刺激しながらテンポよく学習が進められた。これも動画やデジタル教材をすぐ表示できる、電子黒板ならではの活用方法だ。

英語モジュール学習の時間。教室の前は配線やテレビスタンドがなくスッキリしている

複雑なことをしない。見せる・書き込む、シンプルな使い方で授業を効率化

授業ではさらに電子黒板が大活躍。もちろん単元によって電子黒板を使わない学習もあるが、戸田東小学校・中学校では基本的にほとんどの授業で電子黒板が使われているという。しかも、驚くほどシンプルな使い方をしているのも特長。「見せる」「書き込む」「共有する」など、どの先生も、どの授業でも使える方法で授業の効率化につなげている。

ここでは、エプソンのWebサイトからダウンロードできる事例集PDF冊子に掲載された活用事例の一部を紹介しよう。

●小学4年算数:デジタルとアナログをひとつの黒板で。児童の集中力もアップ

児童の解答を一斉表示し意見交換を充実

小学4年算数では授業の導入部分から、デジタル教科書を表示し前回の振り返りや今日の授業で学ぶ課題が大きく表示された。一方で学習のめあてなど授業時間全体を通して見せたい部分はホワイトボードに先生が手書き。ひとつの黒板でデジタルとアナログを扱い、児童たちがあちこち目をそらすことを防ぎながら、見せたい部分をフォーカスしていた。

また児童それぞれが端末に書き込んだ解答を電子黒板で意見共有したり、解き方が異なる児童の解答をピックアップして大きく表示したりと、児童と教員、児童同士のやり取りが生まれる場面を電子黒板で生み出している。そのやり取りもテンポがとても良く、児童が飽きずに落ち着いて授業を受けていた。

授業を担当した山下佳菜先生は、電子黒板を使うと児童がしっかり前を向くと評価している。「前の校舎ではテレビ画面と黒板を切り替えて使っていましたが、今は板書もデジタル教材もホワイトボードひとつで見せられるので児童たちが前を向き集中しやすくなりました」と語ってくれた。

●中学3年社会:板書時間の削減で学習進度アップ、話し合いの時間が増加

資料の見せたい部分を大きく表示。電子ペンで書き込みながら説明することも可能

中学3年社会の授業では、先生の板書時間やプリントの配布・回収にかかる時間を削減する工夫がなされていた。一般的に中学の社会科は授業で使う資料も多いうえ、インプットする情報量も膨大だ。そのため配布プリントも多くなりがちであるが、電子黒板や1人1台端末を活用することで大幅な時間削減につながったというのだ。

この日の授業は「民事裁判」がテーマ。最初に先生から各自の端末に資料が配信され、生徒たちはそれぞれのペースで黙読。その後、原告と被告に分かれて議論に必要な情報を収集し、各グループで議論に取り組んだ。授業では情報収集や話し合いの時間がたっぷり設けられ、議論では生徒たちが熱くなる場面も見られた。

授業を担当した大貫翔先生は「板書やプリント配布・回収の時間を削減できたことで、授業が効率的に進められるようになりました。学習進度もアップし、その分、生徒たちが思考する時間、話し合いの時間が増えています」と語る。アウトプットの活動時間を創出し、思考力・判断力・表現力を育む授業へと変わってきている。

電子黒板は教員の働き方改革にも効果アリ

このように戸田東小学校・中学校では電子黒板が多くの授業や学習活動で使われており、先生も日常使いをすることで授業の効率化につながっている。また紙の印刷が減ったことやデジタル教材が使えるようになったことで授業準備にかかる時間が削減され、働き方改革にも効果が出ているという。

こうした動きが結果として、先生が1人1台端末を活用するメリットを感じることにつながり、"便利だから使ってみよう"という行動に変わっていくようだ。

戸田東中学校 教頭 武田吉司先生

戸田東中学校の武田教頭は、電子黒板は"書いたり消したりが楽"、"切り替えが早い"、"意見を共有しやすい"など、良いところがたくさんあるが、1番のメリットは1人1台端末の相乗効果を高められることだと話す。

「本校においても、端末だけが導入されていたら授業での活用は進まなかったでしょう。電子黒板とセットで使えたからこそ、教員も1人1台端末の効果を実感することができ、ここまでやってこれました。実際、本校の教員は”前の環境に戻れない……”とよく言っています」と語ってくれた。

1人1台端末や電子黒板を活用していくことは、学校や先生にとって新しい挑戦であり簡単なことではない。とはいえ、シンプルな使い方を重ねていけば、その効果を実感することができ継続的な活用につながると、戸田東小学校・中学校の取り組みからわかる。

そんな同校の取り組みをまとめた事例集PDF冊子が無料でダウンロード可能だ。ぜひこの機会にご覧いただき、明日からのICT活用に役立てていただきたい。

★戸田東小学校・中学校の活用事例をまとめた『電子黒板活用授業事例集』
PDF冊子を無料でダウンロードし、印刷して配布も可能!
小学4年算数における電子黒板の活用(電子黒板活用授業事例集より抜粋)
1人1台時代の学びに欠かせない電子黒板
本記事でもご紹介した戸田東小学校・中学校。同校の電子黒板の活用事例をまとめたPDF冊子がこちらのページから無料でダウンロードできます。

授業の流れに沿って電子黒板の活用ポイントがまとめられているほか、教科に関係なくどの授業でも使える活用事例を紹介していますので、ぜひご覧いただき、これからの教育活動にお役立てください。

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