【連載】どれ使う?プログラミング教育ツール

「embot+」に進化して登場!拡張性の高いプログラミング学習ロボットへ

子供向けプログラミング学習ロボットキットの「embot(エムボット)」の進化版「embot+(エムボットプラス)」が2023年12月に発売されました。パッと見た姿は今までのembotのようでありながら、拡張性が大幅にアップしたその中身をご紹介しましょう。

スピーカー登場!&サーボを3つ同時に使用できる!

embot+の箱をあけてみると、embotの頭脳部分にあたる「embot+コア」とサーボモーター2個、LEDライト2個、ブザー1個は同じですが、それにスピーカーが1個加わっています。

embot+コアをよく見てみると、これまでのembotよりもたくさんコードをつなぐ場所があります。これが拡張性アップの秘密です。まずは、サーボモーターを3個まで同時につなげるようになりました。キットに付属するサーボモーターは2個で、基本のクマの姿のデザインでは両手に使われますが、もう1個追加できるのです。

昨年開催された「embot大展覧会」で見た作品の中には、サーボモーターを複数使うためにembotコア自体を買い足して2個以上使用しているものもありました。基本のクマを卒業していろいろなオリジナル作品を作り始めると、「サーボモーターをたくさん使いたい!」というニーズがまず生まれるのかもしれませんね。

新規に追加されたスピーカーからは、これまでのブザーだけでは再現できなかったちょっとリッチな音声や「こんにちは」などの言葉をプログラムで選んで鳴らせるようになります。

また、embotの有料機能の「ひらめきAPI」を利用すれば、天気予報やニュース、指定した言葉などを、スピーカーから出すことができます。スピーカーはembot本体内に設置しますからロボット本体から声が出るようになるのです。

これまのembotでは、「ひらめきAPI」の音声はプログラミングアプリのタブレットから出すしかなかったのですが、embot+では本体から出せるようになるので断然臨場感が上がります。なお、試したところ、スピーカーからの音声は出るまでにタイムラグがあるので、即応が必要な効果音にはちょっと向きません。

その他に、別売りの拡張ユニットがありますが、それらは最後にまとめてご紹介します。

本体組み立てダンボールが組み立てやすくアップグレード!

embot+を基本のクマの姿にまずは組み上げてみましょう。ダンボールで本体を作りますが、作り方はウェブ上でとてもわかりやすく図解されています。初代embotと同じ外観ながら、中の設計がとてもよくできていて、スピーカーとコアがすっきり納まるように設計されています。そして初代より本体がかなり組み上げやすくなっている!……気がします。

顔と体を作ったところ

概ね30分くらいで組み上がりますが、手先がまだあまり器用でないお子さんの場合は、保護者が見守るのがおすすめです。ダンボールなのでお子さんが勢い余ってうっかり破っちゃうと悲しみそうなので……。

とはいえ、ダンボールキットはとても枠から外れやすく、型抜きしやすくできていますので扱いやすく安心。万が一やぶれてもテープではってしまえばOKです。

スピーカーが下部でembot+コアが上部に納まる。電池交換のしやすさなどに配慮されている

embot+ならではの作品をつくってみよう!

せっかくなので、embot+だからこそできる作例をひとつご紹介しましょう。タブレットの傾きセンサーを利用した腹筋カウントマシンです。腹筋を1回するごとに、embotが旗を上げて応援してくれて、写真左側の回数カウント用矢印が1目盛進みます。10回達成するとおめでとうダンスをしてくれます。サーボモーターを3個使用し、「スタート」の音声はスピーカーから流れるリッチな音声です。

サーボモーターを1個足して、3個使用。写真左側のカウント用矢印のサーボモーターはコードを延長してある
タブレットをお腹に乗せて腹筋する想定。40度以上傾くたびに1カウントする。

動画でご覧ください!

上記作例のプログラムの一部。embotのプログラミングアプリはフローチャート型とブロック型を組み合わせていて直感的でとてもわかりやすい

私は過去にembotの作例を複数制作していてアイデア自体は目新しいものではないのですが、サーボモーターを3つ使える利点を生かすと、クマの動きはそのままに、もうひとつ動きを加えてこんな演出もできるようになります。もちろん、基本のクマの姿ではなく完全にアレンジして何をつくってもOK!!

別売り拡張ユニットでアイデアがふくらむ

せっかくembot+になったというのに、スピーカーとサーボモーターの追加だけではちょっと物足りない……ですよね。実は、embot+コアには、まだコードを差す場所が残っていて、別売りの拡張ユニットを追加できるのです。

別売り拡張ユニットのラインナップは、超音波測距センサー、3軸ジョイスティック、温湿度気圧センサー。入力できる値が一気に豊富になります。手をかざしたらなにかが起きる、ジョイスティックで動きをコントロールする、温湿度や気圧に応じて反応させる……なんてプログラムがとても簡単に作れるようになります。

embot+のウェブサイトより画面キャプチャー

また、別売りアダプターも使用可能となり、これを使えば電池切れの心配もありません。プロトタイプを作るときにスイッチをONにしたままにしていると、けっこう電池を消耗してしまうもの。いざというときに電池の入れ替え!なんてことになる心配がなく、これは地味に便利です。

基本のembotよりもちょっとお値段は上がりますが、今からembotを購入するならembot+の方が拡張性があって、子供の「もっとやってみたい!」に対応できる安心感があります。もちろん、買い足しの必要な拡張性はいらないから最低限で……という場合は基本のembotで楽しめますから、ニーズに合わせて選んでみてくださいね。

狩野さやか

株式会社Studio947のデザイナー・ライター。ウェブサイトやアプリのデザイン・制作、技術書籍の執筆に携わる。自社で「知りたい!プログラミングツール図鑑」「ICT toolbox」を運営し、子ども向けプログラミングやICT教育について情報発信している。