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安河内哲也氏が、今すぐ使える英語学習のAI活用法を伝授!
教育AIサミット2024 Day2レポート
2024年9月18日 06:30
一般社団法人教育AI活用協会は、8月2日と3日に「教育AIサミット2024」を開催した。2日目はオンライン開催で、一般財団法人実用英語推進機構 代表理事の安河内哲也氏が基調講演「教育者の新常識!生成AIをフル活用した学習スタイルとは」としてGhatGPTの活用の実例を紹介した。
講演では、AIで起こった大きな変化の解説よりも、具体的なAIを使っての活用法を紹介することに多くの時間を割き、AIに命令する「プロンプト」のコツや、AIのクセや特徴などを紹介。なかでも、安河内氏は自ら「マイGPT(※)」を作成し、プロンプトなしに例文から問題を作成させたり、英文要約の解答をChatGPTに添削させるといったことを実演。誰でも活用できる状態でマイGPTを公開している。本レポートでは、そんな安河内氏による充実した講演内容をお届けする。
※事前にプロンプトによる指示や知識を追加してある、カスタマイズされたChatGPTのこと。
「ど文系」がAIを駆使して、教材作成は10時間→5分
最初に安河内氏は自らを「ど文系」でプログラミング言語は1ミリもできないと自己紹介。現在の状況をコンピューティングの大衆化によって「今、歴史が変わる!」とし、「2年前、私がAIを使うなんて思ってもなかった。一生AIに触れることもないと思ってた」と少し前の状況を説明した。
ところが、現在は「プログラミング言語で動くAIが、日本語でも英語でも自然言語で操作できるようになってしまい、自然言語でアプリが作れるようになってしまった。つまり、誰でも使えるものになり、私のようなど文系がアプリを作ってる」と変化を強調。
具体的な作業量の変化として、2年前は英語教材作成プロセスに10時間と10万円を使っていたが、AIを導入し1年前には30分と月額20ドル(ChatGPTの有料版の料金)になった。それでも1年前は「毎回プロンプトを書くのが難しく面倒くさい」としていて、さらに1年経過した現在では、プロンプトを記憶するなどカスタマイズしたマイGPTの機能によって5分間まで短縮し「もはやプロンプトも書かない」状況になっているという。
トピックの語句1つで5分で英文教材を作成
講演で多くの時間を費やした実演は、まず、教材作成を行った。安河内氏作成のマイGPTから「トピック別英文教材作成システム」を使って英文教材を作る。講演では「生体肝移植」と入れるだけで医学部用の対策教材が表示された。
要約問題が一瞬で作られ、単語のリストまで発音記号付きで出てくる。例文が必要かという問いかけに「はい」とすれば単語リストの単語を使った例文まで作成される。一般的にAIが作り出したものは、思い通りにならないところもあるが、単語の抜き出しの数や例文の長さなど、問題に必要な調整はすでにマイGPTで設定済のため調整をしなくても完成度の高い状態で表示している。
続いて、問題の音声の作成はAIビデオジェネレーターの「HeyGen」を使って実演。AIのアバターに映像付きで喋らせるというもの。問題として作られた文をHeyGenにコピー&ペーストするとアバターが映像付きで喋り出す。安河内氏は「音声はネイティブに遜色ないレベル」とし、これで「はい、教材のでき上がり」と5分で作成したことを強調、「3日分の仕事が終わったんで2泊3日で沖縄にダイビングに行こう!」と時間短縮度合いを強調した。
AIに仕事させるには、とにかく具体的、明確な指示が必要
続いて、文系のためのプロンプトエンジニアリングについて解説。安河内氏は現時点の有料版のChatGPT(GPT-4o)は「多言語を駆使できる大学教授級の部下」と評価する一方、勉強するだけではChatGPTを使えるようにはならないと語る。
「スマホでChatGPTをすぐ使えるように、親指が届く画面右下にアプリアイコンを置き、右手で持ち上げたらChatGPTとの対話を一瞬で始められるよう、生活の一部として取り込むことをおすすめします」とした上で、著作権侵害や機密情報を漏洩には注意するよう、各種ガイドラインに沿った活用をするようにアドバイスした。
例に出した100ワードほどの英文作成では、英文のレベルの指示は「(AIの中身は)アメリカ人なんだから英検やTOEICは分からない、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)が絶対いい」とし、ChatGPTの指示における英検とCEFRの対応表を示して解説。
その上でプロンプトに書くこととして、言語、語数、レベル、トピックや内容とし、トピックや内容はできるだけ詳しくし、語数については「英単語で100語」というように指示をしないと、日本語の語数で作成してしまうこともあるという。
ChatGPTは人間と違って推し量る能力はなく、条件付けなど細かく指示することが重要で「頭が良くて作業も早いが、当たり前のことも前提として教えないと動かない」「すぐ怠けるので、怠けないように、解答の根拠を書け、詳しく、といったワードを入れる」とし、明確に指示を出すことの必要性を強調する。
安河内氏はこのほかにも、4択問題の作成、解説付きの和訳の作成、教室で使えそうなChatGPTと1分間の会話などを実演した。なお、会話中も日本語になってしまうこともあり、その際はChatGPTを「Speak in English. と叱りつけてあげる」とポイントを紹介した。
プロンプトを書くのが面倒なら、安河内氏作成のマイGPTを活用
続いて「私の経験と努力をプレゼントします」として、プロンプトを書くのが面倒な人のために自ら作成したマイGPTを7つを示し、「何もプロンプトなんて書かなくても使えます」と紹介した。
・英語カンタン意味調べシステム
・英文構造とことん解説
・英文エッセイ添削システム
・英単語深掘り解説はかせ
・音読用対訳シート自動作成
・語彙問題自動生成システム
・英検準1級要約問題添削システム
7つのアプリについて実演をし、特に英文の添削については「大規模言語モデルに入っているネイティブの英語と競争しても勝ち目はない、英文の添削はChatGPTにやらせましょう」とし、英検の添削では間違った表現を正しい表現に修正されて文を出してくれる例を紹介。単語については「語彙問題自動生成システム」で、単調になりがちな単語テストを英検のように例文の中から選択するような問題をChatGPTが作成することを実演した。
生徒には英文構文の解説や、単語の深掘りなどで役立つことが多いとし今回紹介したアプリを生徒に紹介するよう促し「そうすれば先生ひとりで対処しなくてもなんとかなる」と効果を示した。
なお、安河内氏は英語学習以外にもマイGPTを多数作成し「提出用反省文and始末書ライター」といたものも作成している。形式的であまり意味がないと思われるような文章はChatGPTに作成させれば、がより効率的に仕事が進められるとした。
教室はコミュニケーション、個別最適化された学習はAIで
まとめとしては、AI時代に必要なこととして、人と違ったことを思いつく能力を挙げた。昔はプログラマーしか作れなかったアプリが誰でも作れるようになったので、一番大事なのはアイデアだという。AIが発達すればするほど、人間には人間にしかできないことをやる。人間的な部分を教育で育てていくことが大事とした。
一方で、すでに安河内氏が教えている生徒にはもれなくChatGPTの使い方を教えているという。今回紹介したアプリも、プロンプトライティングも全部教えているとのこと。ただし、教室では使っていない。教室は人間と人間がコミュニケーションを取り合う場。誰とも話さないのは学校の意味がない。教室から出たときに個別最適化された学習をAIでやればいいとした。
また、ChatGPTの活用として「好きなアニメのプロットで英文を作ってもらい、それを音声化してスマホで聞けば、生徒だって大好きなアニメで勉強できて単語を覚える」「自分が覚えないといけない単語集の単語を使って、例えば『推しの子』の第1シーズンのストーリーを書いてください、ということもできる」とした。
安河内氏は最後に「これからは、やる気とテクノロジーを活用すれば何にでもなれます。The best way to predict the future is to create it!」と教育者と学習者へエールを送り、講演を終えた。