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GIGA端末更新950万台に備え、データの消去徹底と自治体の予算確保を提言

一般社団法人 児童生徒のデータプライバシー協会が、児童生徒の個人情報を保護するための「適切なデータ消去と処分方法」「自治体における予算確保の重要性」を提言

 一般社団法人児童生徒のデータプライバシー協会は、児童生徒のプライバシー保護のため、GIGAスクール端末の適切なデータ消去方法と予算確保を6月19日に実施したラウンドテーブルで提言した。2025年から2027年にかけて、約950万台のGIGAスクール端末が更新時期を迎えることから。

 同協会は2025年1月に設立、目的は「1件のデータ漏えいも起こさないGIGAスクール端末処分」を実現するため。ラウンドテーブルでは「教育委員会のGIGA端末処分の実態調査」をテーマに、全国ICT教育首長議会 会長である佐賀県多久市長の横尾俊彦氏、同協会理事の佐原忠史氏、塚本幸治氏が端末処分に関する現状の課題を共有した。

 塚本氏は「端末の更新時に情報漏えいリスクがある」などと指摘、事故につながらないデータ消去の実現が必要とし、GIGAスクール端末の更新時には「端末処分とデータ消去はセットで考えてほしい」との見解を示した。

 GIGAスクール端末の処分については文部科学省・経済産業省・環境省の3省が小型家電リサイクル法などでの処分、確実なデータ消去に関する徹底の方針を提示している。ただし、実際に取り扱う自治体が、国の方針をどこまで理解・実行できるかは、同協会のアンケート結果から不透明である現状を報告している。

 佐原氏は安全なデータ消去方法について解説。2020年12月に総務省が発令した「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を説明し、データ消去レベルについても、2025年3月に発令された「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」から「GIGA端末の場合、データ抹消後に外部に出す際は、抹消処置を完了したというエビデンスも確認されなければいけない」と説明した。

 そのうえで、同協会が行った調査結果などから「12.5%が安全性が最も高いとされるソフトウェア消去を採用しているが、物理的破壊や初期化・リセットもまだまだ多い」とした。さらに、文科省推奨の処分を検討・準備しているのは3割以下で、「適切な処分、データ消去を実行する予算確保が十分に理解されておらず、予算確保も進んでいない」など、危険性や課題を指摘した。

 横尾氏は、全国ICT教育首長協議会のアンケート結果から「GIGA端末の導入形態」は64%が買い取り形式で、処分方法を自治体で考える必要がある実態を紹介。以前使っていた端末を、約3割の自治体が「保管している」と回答しており、更新委託業者に依頼後の処分内容を確認できていない自治体もあるという。このことから、「どうやって予算を確保するかと、自治体トップや幹部がしっかりと状況を理解することがポイント」としている。

 なお、今回の提言の締めくくりとして、塚本氏は「1件のデータ漏えいが起きたとき、その端末を使っていた子供や家族がどれほど深く傷つくかを、大人こそ真剣に考えるべきだ」と語り、データ漏えいは1件も起こしてはならないという点を強調した。