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SASUKEは"探究学習そのもの"だった、TBSがEDIXで語った「夢中になる学び」の設計図
―「EDIX東京2026」レポート④
2026年5月18日 12:03
5月13日から東京ビッグサイトで開催された「第17回 EDIX(教育総合展)東京」に、株式会社TBSホールディングスが初出展した。放送局として75年間培ってきたコンテンツ制作や取材のノウハウを教育へ生かす取り組みで、同社が掲げるキーワードは「 エデュテイメント 」。「遊びの中に学びがある」をコンセプトに、ブースでは、探究学習支援ツールや「AI for School」(ニュースコンテンツと生成AIを組み合わせた学習支援ツール)の展示に加え、トークセッションも行われた。
なかでも、注目を集めたトークセッション「SASUKEを解剖したら授業が見えた 隠された夢中の設計図」をレポートしよう。
「SASUKE」は探究学習そのもの!?
登壇したのは、1997年の第1回大会から「SASUKE」の総合演出を手掛ける乾雅人氏、鹿児島市教育委員会 教育DX担当部長で文部科学省 学校DX戦略アドバイザーも務める木田博氏、そして、SASUKEの実況を担当するTBSアナウンサー・杉山真也氏だ。
SASUKEは、100人もの挑戦者が巨大障害物コースに挑むTBSの人気番組である。全4ステージで構成され、約30年の歴史の中で完全制覇を達成したのはわずか4人。年末恒例番組として、子供から大人まで幅広い世代に親しまれている。
大のSASUKEファンだという木田氏は、「SASUKEには教育のエッセンスが詰まっている」と語り、探究・協働・非認知能力・言語化による価値付けという4つの教育キーワードを軸に、番組を教育の視点から読み解いていった。
木田氏が探究学習との共通点として挙げたのは、出場者が障害物を攻略するプロセスだ。「ローリングヒル(ファーストステージにある、回転する円筒形の障害物)をどの角度で飛ぶか、順手か逆手か。そこには物理や力学の視点がある。体力だけでなく、さまざまな知識を組み合わせて課題を解決している」と言い、課題への向き合い方がそのまま探究のプロセスだと説明した。
乾氏もこの見方を裏付けるように、「番組側が練習方法を指示したことは一度もない。家に練習セットを自作する出場者もいるが、それも全部自発的なもの」と語った。「『次はクリアしたい』という思いから自分で研究し工夫している。その姿が探究そのものですよね」という木田氏の言葉に、乾氏は深くうなずいた。
番組に台本がほとんど存在しないことも語られ、番組側が用意するのはコースだけで、結果は誰にもわからない。
「100人全員が最初のエリアで落ちる可能性もある。でも、その予測不能さを含めて視聴者と一緒に驚きたい」と乾氏。この予定調和を排除する姿勢について、木田氏は学校現場にも必要な視点だと応じた。「教員は途中でルール変更をしたくなる。でもそれをやると、子供たちは『最初から言ってよ』となる。一度決めたルールで最後までやり切ることが大事な場合もある」と語った。
個人競技に見えて、実は協働的な学び
木田氏は、SASUKEは一見すると個人競技だが、実際には協働的な学びの要素が強いと指摘する。挑戦中、仲間が横を走りながら「落ち着け」「時間あるぞ」と声を掛け合う光景を例に挙げ、「みんなで成功を支えようとしている。個人プレーに見えて、実はチームプレーなんです」と語った。
乾氏は制作の立場から「番組側が関係性を演出したことは一切ない」としたうえで、「誰と誰を仲良くさせようなんてことはしていない。同じ目標を持った人たちが自然につながっていく」と強調した。
その言葉を裏付けるのが、完全制覇者として知られる森本裕介選手、通称「SASUKE君」の存在だ。SASUKE君を慕って10代の若者が自主的にトレーニングを始めたり、世界中のプレイヤーが彼を「Mr.モリモト」と呼んでリスペクトしたりと、番組の枠を超えてコミュニティが広がり続けている。「パフォーマンスだけでなく、生き方そのものが人を動かしている」と乾氏は語った。
「失敗」ではなく「リタイア」と呼ぶ理由
セッション後半では、SASUKEが育む非認知能力についても議論が及んだ。粘り強さや感情のコントロール、計画性といったテストでは測れない力を、番組はリアルな形で視聴者に見せていると木田氏は言う。「1年かけて準備して、本番は一回勝負。失敗しても誰かのせいにせず、次に向けて考える。これはまさに非認知能力の実践です」と語り、SASUKEの現場が非認知能力を育む"生きた教材"になっていると強調した。
印象的だったのは、「失敗」という言葉を使わない番組の哲学だ。杉山氏が実況担当になった際、乾氏から最初に受けた指示は「失敗」「残念」という言葉を使わず「リタイア」と表現することだったという。たった一つの言葉の指示が、10年以上たった今も杉山氏の実況を支えている。
木田氏はさらに、杉山氏の実況スタイル自体を「教育的」と評した。「ただ結果を伝えるのではなく、そこに至るまでの努力や背景を言語化している。これは教員が子供を見取ることと同じ構造です」。これに対して杉山氏は「自分の妄想ではなく、取材した事実をもとに実況することを大切にしている。この一年どういうテーマで挑んできたか、その背景を汲み取って言葉にしている」と語った。木田氏は「『よく頑張ったね』だけでは子供には響かない。その子を理解した上で、どんな言葉を掛けるかが大切」と続けた。
乾氏と木田氏のやり取りから見えてきたのは、「人が夢中になる構造」そのものを学びへ応用しようとする視点だ。子供が自ら挑戦したくなる課題設定、仲間と協力したくなる環境づくり、失敗を否定せず次の挑戦につなげる言葉掛け。こうしたSASUKEを支えてきた番組の設計思想が、教育の文脈で語られたセッションだった。
TBSブースでは、このほかにもニュースコンテンツと生成AIを組み合わせた探究学習支援ツール「AI for School」のデモ展示、世界遺産を題材にした探究旅行プログラムの紹介、文部科学省の「教育分野特化の生成AIの実証研究事業」に関するセッションなども行われた。これらの内容については、順次レポートを掲載していく。
5月13日~15日に開催されたEDIX東京2026の関連記事をまとめています。製品レポートや各社ブース、セミナーの内容など今年の教育トレンドをチェックできます。
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