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大学入試改革から「教育の再構築」を提言、教育改革国民運動
2025年5月22日 06:00
任意団体「教育改革国民運動」推進委員会は、2025年5月12日に東京都千代田区の渋沢ホールでシンポジウムを開催した。約200名の教育関係者や企業関係者が集まり、大学入試改革を出発点にした教育制度の見直しについて意見を交わした。
事務局長の大久保秀夫氏は、現行の教育制度が社会や経済の変化と乖離していると危機感を示した。特に大学入学後の学修時間の短さや、社会で必要とされる「創造的思考力」や「人間力」とのギャップが広がっていると指摘。偏差値至上主義が及ぼす心理的圧力が学生の自己肯定感を著しく損ない、長期にわたりウェルビーイングを阻害していると問題提起している。
大久保氏は、「大学入試改革」を教育全体の再構築の突破口と位置付け、面接などを通じて学生の将来像や目的意識を評価し、それに応じた教育環境を整えることで、若者一人ひとりの成長と幸福につながるだけでなく、小中高を含む教育全体に好影響が波及する可能性があると語った。
さらに、特定の制度改革にとどまらず、「教育をどう変えるべきか」を社会全体が自分ごととして捉える必要性を強調。ESG(※)やハラスメントといったテーマが社会規範として定着した例を挙げ、教育においても意識変革が必要だと述べた。
※企業の成長に必要な「環境」「社会」「ガバナンス」の視点
基調講演では、人口戦略会議 議長の三村明夫氏が、人口減少が最大の構造的課題であるとし、若年女性人口の激減による自治体の存続危機に警鐘を鳴らした。また、東京大学 名誉教授の坂村 健氏は、生成AIの急速な進化が大学教育に本質的な変革を迫っていると述べ、「問題設定力」「批判的思考力」「創造力」の育成が不可欠だと提言した。
教育改革国民運動は大学入試改革を基点に、人間力や創造性を育む教育への転換を今後も提唱。社会全体の意識変革を促す活動を継続するとともに、提言の発信を通じて賛同者の輪を広げ、教育現場に限らず企業・地域・家庭を巻き込んだ社会全体での改革推進を目指す方針だ。