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AIが客観的な評価とアドバイスを実施、指導AI「Ututor」をデジタルハリウッドとneoAIが開発
2025年3月12日 15:00
デジタルハリウッド株式会社は、AI技術の研究・開発を手がける株式会社neoAIとともに、学生・受講生によるアウトプット(課題作品)に対していつでも気軽にフィードバックを得られる「Ututor」(ユーチューター)を共同開発した。
6月を目処にベータ版をリリースし、直営スクールの受講生およびデジタルハリウッド大学の学生への提供を開始する。開始当初は一部の受講生および学生に限定し、徐々に利用範囲を拡大する予定。
「Ututor」は、クリエイティブ教育に特化した学習支援AI。3DCGやグラフィックデザインなどの課題作品に対して、即時フィードバックと具体的なアドバイスを提供する。主に以下のようなことができるという。
作品の評価と改善提案
・世界観や構図、ライティング、モデリングなどを分析し、改善点を提示
・AIの評価レベル(Normal/Hard)を選択でき、目的に応じた指導が可能
クリエイティブアイデアの相談
・デザインの方向性や広告コンセプトの壁打ちをAIと対話しながら深められる
・作品のターゲット層やメッセージ性を考慮したアドバイスを提供
学習サポート
・作品の課題に応じたおすすめの学習動画を提示し、スキル向上を支援
・制作の進ちょくに応じたアドバイスを実施し、学習サイクルを加速
「Ututor」は、「Unlimited(無制限の)+Tutor(指導者)」を組み合わせた名称。時間や場所を問わず、いつでも何度でも作品のフィードバックを受けられる「無限のチューター」として、クリエイターの学びを支え続ける存在を目指して命名された。
両社の役割として、neoAIは、画像・動画を解析できる最先端の生成AI技術を駆使し、高精度な作品評価システムをゼロから開発した。そして、評価精度とフィードバックの質を最大化するため、最先端のAIモデルを厳選・最適化し、クリエイティブ分野の特性に合わせた評価方法・評価基準を再定義。AIのシステムプロンプト最適化を実施した。さらに、RAG技術を用いて「動画教材推薦機能」を構築し、デジタルハリウッドの動画教材プラットフォーム「Any」と連携して、受講生に最適な動画教材を瞬時に推薦可能とした。
一方のデジタルハリウッドは、クリエイティブ教育の専門知識として、3DCGやグラフィックデザイン、映像制作における実務的な評価基準や講師の知見をAI開発に反映した。また、AI活用の方向性の設計として、学習プラットフォーム「Any」との統合や、AIによる動画教材推薦機能を検討。さらに、後述する実証プロジェクトを実施し、そのフィードバックをもとに、AIの評価精度向上をサポートした。
実証プロジェクトの実施と結果
デジタルハリウッドとneoAIは、2024年10月から4カ月間にわたり、3DCG・グラフィック領域におけるAI活用の可能性を検証する実証プロジェクトを実施した。学生・受講生が制作した課題作品に対して、AIが客観的な評価と学習のアドバイスを行う「チューターAI」の開発・検証を行った。
開発時には「CG静止画」「CG動画」「ポスター広告」のそれぞれ10作品(良い作品:5・惜しい作品:5)を用意し、AIをチューニング。CGやグラフィックに関して、デジタルハリウッド大学の学生や「デジハリ・オンラインスクール」の受講生がAIの有効性に立ち会ったという。
結果として、実証プロジェクトに参加した学生・受講生の約90%が「AIのフィードバックが制作の参考になる」と回答。また、教員・講師からも「基礎的なフィードバックをAIが担うことで、より深い指導に集中できる」との評価を得た。一方で、「テクスチャの評価精度向上」や「より詳細な意味解釈を可能にする改善」など、今後の課題も明らかになった。
デジタルハリウッドでは、さらにChatGPTなどの汎用LLMと教育特化型チューターAIを比較。汎用LLMは、幅広い分野の質問に対応できる反面、クリエイティブな学習や創作活動に特化したフィードバックをするためには追加のカスタマイズが必要で、十分なアドバイスができないと分析。それに対してチューターAIは、デジタルハリウッドの教材や講師陣のナレッジを組み込み、クリエイティブ教育の現場に適した評価・指導が可能だとしている。
さらに、汎用LLMでは提案が少なく、具体性に欠けるが、チューターAIでは具体的かつさまざまな角度から、作品をより良くするための提案が可能だという。
そのほか、汎用LLMでは動画教材プラットフォームとの連携ができないため推薦ができないが、テューターAIでは学生・受講生の作品の改善点にマッチした動画教材を推薦することが可能と強調している。