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こども家庭庁、「子供の自殺に関する意識調査」の結果を発表

こども家庭庁が全国の15歳から59歳の男女を対象とした「子供の自殺に関する意識調査」の調査結果を2025年2月28日に発表

こども家庭庁は、2025年1月に全国の15歳から59歳の男女を対象とした「子供の自殺に関する意識調査」を実施し、調査結果を2025年2月28日に発表した。調査はインターネットを通じて行われ、2,324名から回答を得た。

小中高校生の自殺者数は、2024年が527人(暫定値)と過去最多となっており、こども家庭庁では、子供が自ら命を絶つようなことのない社会の実現に向けて、今年度から「こどもの自殺対策の推進に向けたデジタル広報啓発事業」を開始。有識者とともに、子供・若者に届くような広報啓発活動を実施・検証を通じて、子供の自殺対策について取り組むべき広報啓発の方針を検討している。

<調査概要>
・調査時期:2025年1月25日~30日
・調査方法:インターネット調査
・調査対象および回答数:全国の15~59歳の男女を対象に実施し、計2,324名が回答
1.大人(19~59歳)男女各800名(計1,600名)
※19~29歳、30~39歳、40~49歳、50~59歳の各年齢区分につき、400名
2. 子供(15~18歳)男性324名、女性400名(計724名)
※調査前後に心理的負担となる可能性を提示し、不安を感じるような場合は途中で回答を中止可能とするほか、事前質問で「つらい状況に置かれている」「わからない」「答えたくない」と回答した子供は、本調査へ移行させず、相談窓口を示すなどの配慮を実施

調査結果によると、19〜59歳の回答者のうち、子供の自殺を社会課題として「強く認識している」が16.8%、「どちらかといえば認識している」は45.2%となった。

19〜59歳の回答者のうち、16.8%が子供の自殺を社会課題として「強く認識している」と回答

日本国内における子供の自殺について、自分の周囲に起こりうる社会課題として認識しているかを問う設問に対しては、「強く認識している」が15.6%、「どちらかといえば認識している」が38.4%という結果となっている。

19〜59歳の回答者のうち、15.6%が子供の自殺を自分の周囲に起こりうる社会課題として「強く認識している」と回答

日本国内における子供の自殺に関する事柄を聞いたところ、「知っていたものはない」(47.8%)が最多の回答となった。一方で、知っていた事柄については「日本はG7の中で10代の死因の1位が『自殺』となる唯一の国であった」の19.7%が最多で、次いで「大人も含めた日本全体における自殺者数は減少傾向にあるものの、子供の自殺者数は増加傾向にある」が19.5%、「若年(18歳~29歳)の44.8%が希死念慮を持った経験がある」が16.6%となった。

子供の自殺に関する事柄については、「知っていたものはない」(47.8%)が最多の回答に

「子供の自殺を自分の周囲に起こりうる社会課題として認識している」と回答した人にその理由を聞いた設問では、「TV・新聞などのニュースでよく見かけるから」(42.0%)、「子供は日本の未来を担う存在だと考えるから」(23.6%)、「自分が子供を持つ親だから」(22.0%)が上位となっている。

子供の自殺を自分の周囲に起こりうる社会課題として認識している人の理由の1位は「TV・新聞などのニュースでよく見かけるから」(42.0%)

自殺の可能性や深刻な悩みを持っていることを感じさせる子供への望ましい対応方法を問う設問では、「あまり知らない」(32.9%)、「全く知らない」(23.8%)となり、合計で5割以上に達している。

深刻な悩みを持つ子供への対応については、5割以上が「知らない」と回答

深刻な悩みを持つ子供に対しての行動を聞いたところ、「行動したことがある」が8.5%、「行動したことがない」が17.5%となった。なお、「深刻な悩みを持っていると感じる子供に、出会ったことがない」は65.4%に達した。

65.4%は「深刻な悩みを持っていると感じる子供に、出会ったことがない」と回答

周囲の子供に対し、何かしらの対応をしなくてはいけないと感じる子供の行動を問う設問では、「自殺について考えたり、関連する言動や行動をとる」(54.3%)、「不眠や食欲不振、体調不良が続く」(51.4%)、「危険な行動をとったり、周囲の大人へ迷惑をかけるような行動をとる」(47.3%)が上位となっている。

何らかの対応をしなければいけないと感じる行動は「自殺について考えたり、関連する言動や行動をとる」(54.3%)が1位

子供の自殺に関する事実や情報に触れても、あまり関心が持てない、特段行動しようと思えない理由を問う設問に対しては、「自分に何ができるかわからないから」(24.6%)、「素人が介入する問題だと思えないから」(24.6%)、「自分に子供がいないから」(23.1%)が上位3項目となった。

態度変容や行動変容につながらない要因は、「自分に何ができるかわからないから」(24.6%)、「素人が介入する問題だと思えないから」(24.6%)が同率

自殺を考えるほどの深刻な悩み・不安を持つ子供に対応する国・自治体・NPOなどの相談先を知っているか聞いたところ、「存在を知っている」(50.9%)、「存在を知らない」(49.1%)となり、19〜59歳の回答者のうち半数以上は相談先があることを知っていることが判明した。

半数は「相談先があることを知っている」と回答

子供に関する社会課題を見聞きする場所で回答が多かったものは、「テレビ」が47.9%、「Webメディア・ポータルサイト(Yahoo!ニュース, Smart Newsなど)」が26.4%、「X(旧Twitter)」が16.2%となっている。

子供の社会問題を認知する機会は、「テレビ」(47.9%)が最多

一方で、15〜18歳に自ら命を絶つ同年代がいることに対する認識を聞いたところ、「強く認識している」が37.4%、「どちらかといえば認識している」が46.3%(合計83.7%)で、19~59歳の結果(合計62.0%)と比較すると、若年層の方がより強い認識を持っていることが明らかになった。

「強く認識している+どちらかといえば認識している」は、19~59歳の結果と比べると20%以上の差がある

15〜18歳に、自ら命を絶つ同年代がいることを自分の周囲に起こりうる社会課題として認識しているかを問う設問では、「強く認識している」が34.7%、「どちらかといえば認識している」が43.0%となり、若年層の方が認識度が高い。

15〜18歳の回答者のうち、34.7%が子供の自殺を自分の周囲に起こりうる社会課題として「強く認識している」と回答

自ら命を絶つ子供に関する事柄で認識していたものを問う設問に対して、最も多い回答は「知っていたものはない」(30.9%)だが、19〜59歳の回答(47.8%)と比べると数値が低い。「日本はG7の中で10代の死因の1位が『自殺』となる唯一の国であった」が23.6%となるほか、19〜59歳の回答と比較すると全体的に認識度が高い傾向となった。

最多の回答「知っていたものはない」は30.9%

また、子供の自殺を身近な問題と認識していない理由として、「『自分の周りの友達は、自ら命を絶つ行動とは無関係だろう』と思っているから」(32.4%)、「自分自身が周囲との関係性が良好であるため、そのような事柄を意識することが難しいから」(16.2%)のほか、「死というテーマが遠すぎると感じるから」といった回答が挙がっている。

自殺を身近な問題として認識していない理由の第1位は、「『自分の周りの友達は、自ら命を絶つ行動とは無関係だろう』と思っているから」(32.4%)

自殺の可能性や深刻な悩みを持つ人への対応方法を問う設問では、「具体的なことまで知っている」が7.7%、「どちらかといえば知っている」は36.6%(合計44.3%)で、19〜59歳の回答(合計20.9%)と比べると倍以上の差がある。

自殺の可能性や深刻な悩みを持つ人への対応は、4割以上が「知っている」と回答

深刻な悩みを持つ人に対して行動を取ったことがあるかを問う設問に対して、「行動したことがある」が20.7%、「行動したことがない」は20.6%となった。なお、「深刻な悩みを持っていると感じる子供に、出会ったことがない」は53.9%となっている。

深刻な悩みを持つ人に対して「行動を取ったことがある」は、約2割

どんな情報があると「自ら命を絶つ同年代がいること」に関心を持ったり、行動しようと思えるかを聞いたところ、「若年(18歳~29歳)の44.8%が希死念慮を持った経験がある」(34.3%)、「子供の5人に1人は自殺未遂・自殺準備の経験がある」(30.1%)、「令和4年の小中高生の自殺者数は、514人で過去最多であった」(22.0%)が上位3項目となった。

「若年(18歳~29歳)の44.8%が希死念慮を持った経験がある」(34.3%)が第1位に

深刻な悩み・不安を持つ子供に対応する相談先については、「存在を知っている」が72.4%、「存在を知らない」が27.6%となっている。

7割以上が「相談先があることを知っている」と回答

同年代が深刻な悩みや不安を持っている場合に、起こりうる変化として何が考えられるかを聞いたところ、「イライラしたり、気分が落ち込んだりする」が51.7%、「友人との関わり方が変わったり、身だしなみや生活習慣が乱れたりする」が48.9%、「自ら命を絶つことについて考えたり、関連する言動や行動をとる」と「不眠や食欲不振、体調不良が続く」が同率で46.3%となった。

「イライラしたり、気分が落ち込んだりする」(51.7%)が最多

悩みを相談しやすい周囲の大人に関する設問では、「相談しやすい(とても相談しやすい+やや相談しやすい)」の相手について、「親・保護者」が50.3%、「話しやすい先生(そのほかの先生)」が45.0%、「養護教諭・スクールカウンセラー」が38.0%という結果となっている。

悩みを相談しやすい周囲の大人の第1位は、「親・保護者」(50.3%)

最後に、世の中で起こっている問題に関するニュースを見聞きする場所を聞いたところ、「テレビ」(55.9%)、「YouTube」(34.4%)、「X(旧Twitter)」(34.4%)、「学校」(31.1%)が上位にランクインした。

社会問題を認知する機会は、「テレビ」(47.9%)が最多で、「YouTube」(34.4%)が第2位
NPO法人OVA 代表理事 伊藤次郎氏

NPO法人OVA 代表理事 伊藤次郎氏は、同調査で最も注目すべき点について、子供の自殺の問題について大人よりも子供が関心を持ち、その知識や問題意識を持っていた割合が高かったことを挙げている。

さらに、「周囲の大人が、悩みを持つ子供の変化に気付き、話を聞き、支援につなぐ役割を担うことが自殺対策の早期発見において重要」と語った。

また伊藤氏は、「多くの子供が、同年代が深刻な悩みや不安を持っている場合に起こりうる変化として『イライラしたり、気分が落ち込んだりする』を挙げており、周囲の大人がこうした小さな変化に気付く必要がある」とした。さらに「調査結果では悩みを持つ子供に、大人よりも子供が気付いて行動を起こしている。子供同士の気付きをどう支援につなげるかが今後の課題」とコメントしている。

なお、深刻な悩みを持つ人や、子供の自殺の問題に悩んでいる人に対して、どんな小さなことでもすぐに相談できる窓口が用意されている。悩みがある人や困っている人に対する電話やSNSの相談窓口を総合的に紹介する「まもろうよこころ」や地域別・方法別・悩み別に相談窓口を検索できる支援情報検索サイトのほか、18歳までの子供に対応する24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)、24時間365日対応の「いのちSOS」(0120-061-338)などがある。