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約34人に1人の児童生徒が深刻な悩みのキーワードを検索、「SOSフィルター」の11月データを公開
2024年12月23日 13:30
特定非営利活動法人OVA(オーヴァ)は、児童生徒用の1人1台端末に提供しているブラウザー拡張機能「SOSフィルター」に関する11月のデータを2024年12月23日に公開した。
SOSフィルターは、児童生徒が学習用端末で深刻な悩みに関するキーワードを検索した際、相談窓口やセルフケアに関する情報を利用者にプッシュ型で通知する無償のブラウザー拡張機能である。
キーワードは、「自殺」「学校での人間関係(いじめなど)」「家庭での人間関係(虐待など)」「性暴力」「自傷」「精神疾患」と6つのカテゴリーで、約5000個を設定。2024年12月現在、GoogleChromeとMicrosoft Edgeに対応する。
11月末時点で、同ツールは5つの教育委員会と1つの私立中高一貫校がインストールしており、インストール数は6万1,129台に達している。検索キーワードに基づくポップアップの表示回数は5,144回で、ユーザー数は1,799人となっており、児童生徒の約34人に1人が悩みに関連する検索を実行していることが判明した。
なお、学校や教育委員会以外でも利用できる「一般向け」版のインストール数が4万台弱あり、10万8,378万台で活用されているという(12月19日時点)。
検索内容のカテゴリー別では、「精神疾患」に関する検索が全体の約48%(2,486回)を占め、次いで「自殺」関連が約18%(915回)、「学校での人間関係」が約15%(792回)となった。具体的なキーワードとしては、「死にたい」「自殺」「いじめ」「消えたい」といった言葉が多く見られる。
SOSを早期に把握する1人1台端末向けツールでは、深刻な悩みに関するキーワードで検索をすると、児童生徒の同意なく学校に自動で通知が届くものや、検索結果を表示しないものもある。有害な情報に触れさせないことは自殺予防の観点からも重要だが、感情の吐露ともいえる検索行動を制限されると、自分が抱える悩みや感情を否定されているように感じる可能性があるという。
SOSフィルターは無償で利用できるため、予算を確保しにくい場合でも容易に導入が可能だ。また、検索した生徒個人を特定したり、学校に通知するといった設計はあえて行わないようにしているという。これは、深刻な悩みを抱える児童生徒に対して、援助要請やセルフケア能力を高めることを目的として、監視的な対応を回避しつつも適切な支援への橋渡しを行うためである。
OVAでは、SOSフィルターの全国普及を目指し、教育機関や関係者への無償提供を進めている。これにより、地域間の格差を解消し、より多くの児童生徒が適切な支援にアクセスできる環境づくりを目指している。
●1人1台端末向け児童生徒の心のケア・自殺予防ツール【SOSフィルター】