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両備システムズ、データ連携基盤「こどもの杜」を開発、2024年からサービス提供開始

関係機関のデータを連携させて、プッシュ型支援の実現へ

両備システムズが2024年から、データプラットフォーム「こどもの杜」を開始

 両備システムズは、自治体などが所有するこどもや家庭に関する情報を相互連携するデータプラットフォーム「こどもの杜」を開発。2023年に実証実験を行い、2024年からサービス提供を開始すると発表した。

子どもの支援に必要なデータを連携、プッシュ型支援の実現を目指す

 こどもの杜では、地方公共団体内の子育て関係部署が持つデータのほか、医療機関や保育園、幼稚園、学校、児童相談所などの子育て関連施設の情報を連携し、データ分析に基づいて支援が必要な子育て家庭の早期発見を実現するという。

株式会社両備システムズ パブリックセクター戦略室 室長 角 敏幸氏

 両備システムズ パブリックセクター戦略室の角敏幸室長は、「従来の業務システムは、省庁ごとや、法律によって定義され、それぞれが個別システムとなっていたが、デジタル庁の発足後、データを連携した活用が増えている。こども家庭庁の設立によって、今後データ連携の動きはさらに加速することになる。蓄積されている様々なデータを効果的に活用することが求められており、その部分を『こどもの杜』が支援することになる」としている。

 地方公共団体の場合、母子保健や児童福祉、教育などの業務はそれぞれに担当が分かれているため、支援に関する情報を共有したいといった要望が多いという。また、データが連携していないため、対象者を把握するための作業に多くの労力がかかること、支援内容や情報を病院などの各機関に共有する仕組みがないといった課題も指摘されている。さらに、医療機関からは地方公共団体が管理している健康管理の情報を閲覧したいといった要望があるほか、保育所や幼稚園では、地方公共団体と相談しながら、虐待などの課題に初期段階で対応をしたい、成育歴や周産期、健診の情報を確認したいという要望があるという。

 だが、子育て関連データは、システムごとにデータ項目やデータフォーマットがバラバラであったり、各システムを運用する業者が異なっていたりするために、データ連携がしにくいという課題があった。こどもの杜による連携プラットフォームを通じて、各団体が持つデータをルールに則って接続することができるようになり、こうした課題を解決できるという。

各業務システムのデータ連携と標準化について

 2022年10月に示された地方公共団体情報システム標準化基本方針では、各システムにおけるデータ連携が円滑になることを目的に、項目を連携するための要件を規定。こうした動きも、こどもの杜によるデータ連携プラットフォームの構築には追い風になるという。

ダッシュボードで、支援が必要な家庭や子どものリスク情報を把握

 こどもの杜では、接続した情報をもとにアプローチが必要だと思われる家庭やこどもに関するリスク情報を表示。関係者が情報を共有し、速やかに関係者間での合意形成を行うとともに、ダッシュボードを通じて、状況や変化を確認できる。

こどもの杜 運用イメージ

 たとえば、福祉課では、家庭訪問前に乳幼児健診の受診歴や状況を確認し、予備情報をもとにしたフォローを実施したり、引きこもりのこどもに関する相談に対しては、学校での様子や出欠状況などを確認し、適切な対応をとることができたりする。

 また、こどもの杜で連携する情報は、機微な情報であるため、閲覧に関する柔軟な権限設定機能を実装。さらに、提供するダッシュボードは、ビジュアルを多用し、児童や家庭の状況を直感的に把握できるようにする。

こどもの杜 ダッシュボードのシステム画面イメージ

 「現在は、関係機関ごとに情報を管理しているため、データが連携できず、結果として、支援が必要であるこどもや家庭に、積極的な働きかけや、支援を届けることができていないという実態がある。こうした課題を解決するためにデータを連携することが求められている。『こどもの杜』を通じてデータ連携を円滑にすることで、貧困、虐待、不登校、いじめといった課題において支援を求めているこどもに対して、制度や組織による縦割りの壁を克服した切れ目のない包括的な支援や、プッシュ型の支援も可能になる。こどもたちの未来を守り、社会へ貢献できる取り組みになる」とした。

各種データの連携によって、期待される効果

支援相談を一本化する「こども家庭庁」、データ連携の実証事業が進む

 政府は、2023年4月1日に、こども家庭庁を新設し、こども政策に関する司令塔機能を一本化。内閣府や厚生労働省、文部科学省などの各省庁にまたがる政策をつなぐことで、こどもや子育て当事者の視点に立った政策立案や、各種課題に対する包括的支援を行うことを目指している。

こども政策に関する指令を一本化する「こども家庭庁」

 また、各市町村では、こども家庭庁の設置にあわせる形で、すべての妊産婦、子育て世代、こどもに対する一体的な相談支援を行う「こども家庭センター」の設置を検討している。

「こども家庭センターでは、児童や妊産婦の福祉や母子保健の相談のほか、必要な調査や指導の実施、支援を要するこどもや妊産婦などへのサポートプランの作成などが行われるため、市町村が持つ様々な支援メニューにつなぐ必要があり、ここでもデータ連携が重要になる」と指摘する。

妊産婦・子育て世帯・こどもへの一体的な相談支援

 すでに、2022年度から、こどもに関する各種データの連携を行うための実証事業が開始されており、全国7つの自治体において、教育、保育、福祉、医療などのデータ連携を進めている。その成果は、こども向け施策を実施する団体に向けたガイドラインとして公表されることになる。

こどもに関する各種データの連携による支援実証事業(令和4年度)

 一方、両備システムズは、岡山県に本拠を置く両備グループの情報システム子会社で、官公庁や教育機関、医療機関、民間企業向けのソリューションサービスを提供。独自にデータセンターを運営しているほか、BPOサービス事業も展開している。2030年には500億円の売上高を目指している。

 現在、住民情報や健康福祉、内部情報関連などの公共ソリューションでは全国1086団体に導入。ヘルスケアソリューションとしては、地域連携情報共有システムを463施設に導入している。また、教育ソリューションでは全国1274校に校務支援システムを導入し、民間企業向けにはスポーツジム向け会員管理システムを全国692店舗に導入している実績を持つ。

 同社の主力事業領域のひとつである公共ソリューションにおいては、デジタル庁が推進する自治体システム標準化に対応するため、パブリックセクター戦略室を2022年1月に設置。さらに、パブリックセクター戦略室の配下に、今回のデータ連携プラットフォームを推進する「こどもの杜推進グループ」を設置するとともに、部門横断型の「こどもの杜推進プロジェクト」を発足し、準備を進めてきた。

 同社では、子育て関連ソリューションとしては、住民の出生から生涯に至るまでの情報を蓄積する地域健康活動をサポートする「健康かるて」、児童手当や医療費助成、高齢者福祉などの業務を支援する「R-STAGE福祉情報システム」、児童や世帯の登録、相談受付などに対応した「R-STAGE家庭児童相談システム」、園児の状況確認、出席簿の自動作成などが行える保育園向け業務支援システム「HOICT」、教師向けグループウェアやデータに基づいた学習支援を行う校務支援システム「RYOBI-校支援」の実績がある。

各種ソリューションのノウハウを生かした「こどもの杜」で、プッシュ型の支援を実現

 角氏は「住民のライフステージにあわせて、ソリューションを展開しており、様々な分野で情報を管理するシステムを自社で開発し、全国展開をしている。早い段階から多くの関係機関においてシステムを導入している。業務ノウハウの蓄積とともに、人的なつながりを構築しており、そのノウハウを活用できるのが強みである」と述べ、「各種ソリューションのノウハウを生かし、地域の未来を切り拓くこどもたちが、安心して過ごせる社会の実現に向けた保健、医療、福祉分野の連携における変革を、『こどもの杜』によって創出する」とした。

大河原 克行