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eboard、通信制・定時制高校生徒向け映像授業を制作

経済面・学業面の困難さを抱える生徒の学びを支援

通信制・定時制高校生徒に向けた映像授業を提供

NPO法人eboardは、通信制・定時制高校の生徒を対象に、映像授業の制作を開始した。提供するのは高校課程の数学と英語で、順次、単元を追加する。今回の取り組みは、SMBCグループライジング基金からの寄付を受けて行うもの。同基金は、三井住友フィナンシャルグループの有志役職員による積立募金で、寄付を通じて国内外の社会課題を解決することを目的としている。

映像授業には、学習上の困りごとを抱える生徒に配慮した「やさしい字幕」を付けている。やさしい字幕は、主にろう・難聴の生徒、外国語を母語とする生徒、学びの困りごとを抱えた生徒を対象に、学習のハードルが下がるよう編集された字幕。外国人にもわかるように配慮した「やさしい日本語」の考えを元にしながら、字幕の表示量を調整し、言葉や文章構造を簡素化。学年や教科別の表示を工夫している。

映像授業に「やさしい字幕」を付けて提供する

eboardではこれまで、さまざまな事情を抱える児童生徒を対象にICT教材「eboard」の個人アカウントを無料で発行してきた。同社によると、2022年度および2023年度のアカウント申請理由のうち、47.9%の児童生徒が不登校、38.3%が障害などによる学習困難、20.4%が経済的困難を抱えており、これらが重複する生徒も少なくないことがわかった。

ICT教材「eboard」利用者のうち、約半数が不登校もしくはそれに近い状態にある

また、同社は特に困難な状況が多い事案として、通信制・定時制高校に通う生徒の経済状況と中退率に着目。東京都立大学 子ども・若者貧困研究センターの調査によると、定時制の生徒のうち、約半数が生活困難層だという。また、文部科学省の調査によると、中退率は全日制と比較して通信制が3.8倍、定時制が7.6倍となっており、理由は「学校生活、学業不適応」が最多となっている。

定時制高校に通う生徒の約半数が生活困難層(東京都立大学 子ども・若者貧困研究センターの調査)

同社は、通信制・定時制高校に通う生徒を取りまく、経済面・学業面の困難からの脱却には、高校教育環境の充実が欠かせないとして、小中学生向け教材制作の知見を生かし、「学びをあきらめない社会の実現」に向けた取り組みを継続していく。