ニュース

製品・サービス

カシオ、個別最適な学びとアクティブ・ラーニングを強化する「ClassPad.net」の新機能を発表

2026年までに1,750校への導入をめざす

カシオ計算機、「ClassPad.net」の新機能を紹介

カシオ計算機株式会社は9月11日、教育事業のソフトウエアビジネスにおける事業方針発表会を開催した。同発表会では、今後の教育事業戦略、カシオ教育研究所の設立、ICT学習アプリ「ClassPad.net」の新機能について紹介した。

発表会の冒頭、カシオ計算機 常務執行役員 EdTech BU 事業部長 太田伸司氏は、教育事業の経緯について説明した。同社はこれまで関数電卓と電子辞書を軸に展開してきたが、教育のICT化を受け、2021年ClassPad.net β版をリリース。1人1台端末に最適な学びのプラットフォームを提供してきた。そのなかで、今後はアダプティブ・ラーニング(個別最適な学び)とアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)に、より積極的に対応する方針を表明。狙いとして、2026年度にClassPad.netの導入校を1,750校まで目指すと発表した。

「個別最適な学び」と「主体的・対話的で深い学び」に積極的に取り組む方針を表明

ClassPad.netの新機能「同時編集」で協働学習を支援

ClassPad.netは、電子辞書「EX-word」より厳選した教材をはじめ、デジタルノート、教員と児童生徒間のやりとりをサポートする授業支援機能、数学・英語ツールを1つに統合したICT学習アプリ。従来提供していた高校向けに加え、2022年4月より小中学校への提供も開始している。

板書の手間を省き、思考を可視化する「デジタルノート機能」(公式サイトより)
グラフや図形の変化・特性を視覚的に捉える数学ツール「ClassPad Math」(公式サイトより)

今回発表された新機能は、ClassPad Version5として2023年8月31日にリリース。今回の刷新では、アクティブ・ラーニングを支援する機能を大幅に強化した。そのなかで特長的なのは「同時編集機能」だ。ClassPadでは、これまでも児童生徒が自身で学習内容をまとめる「デジタルノート機能」や互いの意見を共有する「ふせん送受信機能」を提供してきたが、今回の強化によって協働学習が可能となる。

その他にも、デジタルノート機能の新機能として「テンプレート」の追加、Officeファイルへの対応が加わった。さらに、ClassPadで閲覧できる電子書籍の追加や、管理者メニューの改善を行った。

ClassPad Version5で追加された新機能の詳細は、下記の通り。

①同時編集(デジタルノート機能)
複数の児童生徒が同時にデジタルノートを編集することが可能に。グループでの調べ学習や児童生徒同士の教え合いなど、協働学習に役立つ。グループは10個作成可能で、1グループあたり、20人まで。教員はノートの内容をリアルタイムに確認でき、フィードバックを迅速に行うことができる。

同時編集(デジタルノート機能)

②Officeファイル対応(デジタルノート機能)
Officeファイル(Word、Excel、PowerPoint)に対応。自作のプリントや資料をそのままアップロードし、保管・配布・提出が可能になった。教員の授業準備や、課題作成の負担を軽減する。

Officeファイル対応(デジタルノート機能)

③テンプレートの搭載(デジタルノート機能)
デジタルノートで使える16種類のテンプレートを搭載。マス目やピラミッドチャート、座標軸など、情報を整理・分析、思考を可視化する際に活用できる。児童生徒が自ら考える力や、コミュニケーション力を育むために効果的なツール。

テンプレートの搭載(デジタルノート機能)

④電子書籍の追加
新たに30コンテンツを追加。全10社の451コンテンツから、目的やニーズに合わせて、選択できる。試験勉強や語学学習、探究学習で活用可能。

追加コンテンツの一例(公式サイトより)

⑤管理者メニューの改善
管理者メニュー画面を改善。ClassPad.netの利用開始時に必要な登録作業などの手順を示した。初めての教員も安心して使用できる。

管理者メニューの改善(公式サイトより)

説明会の後半には、カシオ社員による模擬授業が披露された。高校生に扮した社員が、英語の授業でグループワークに挑戦。旅行代理店の社員として、7泊8日の旅行プランを企画し、英語でプレゼンテーションする様子を、ClassPad.netの新機能を交えて紹介した。

旅行先の気温や降雨量をグラフにしてノートに貼り付けたり、YouTubeやパワーポイントの資料を貼りながら生徒が自在にClassPad.netを活用し、授業が盛り上がる様子をアピール。また、英語のプレゼン対策として、スピーキング練習アプリ「プロンテストシリーズ」や構文解析アプリ「enHack」もあわせて紹介した。

カシオ社員による模擬授業を披露

説明会終了後には、「ClassPad.net」を体験するコーナーも用意されていた。

授業のサンプルノート
課題の提出ボックス
課題の添削も簡単に
デジタルノートのテンプレートには日本地図も

営業サポートを強化し、学習ログを活用した実証事業を推進

サービス面の刷新に加え、カシオでは教育事業を強化するために大幅な組織改革を行っている。これまでも同社は教育現場の教員を支援し、パートナーシップを築き製品開発へつなげる「GAKUHAN(学販)」体制を構築してきたが、2023年4月に国内学販機能を「EdTech BU」に統合。全国の約4,700校の高校に営業担当を配置し、営業サポート体制を強化した。また、5月には社内組織として、「カシオ教育研究所」を設立。教育カリキュラムと連動したツールとサービスの支援など、さまざまな活動を行っている。

カシオ計算機BU 国内戦略統轄部 国内教育営業部長 内田義之氏は教育現場を支援する取り組みの中で、「ClassPad.net パートナーシップ校」について紹介。パートナーシップ校はClassPad.netの一括導入校が対象で、現在は全国に7校。活用実践事例の共有と情報発信、教員同士のコミュニティ作りを通して、ClassPad.netの製品強化につなげている。

ClassPad.net パートナーシップ校を通して、教育現場との連携を強化

また、ClassPad.netを活用している教員に対し、「CASIO Partner Teacher制度」という認定制度を用意。認定を受けた教員に認定証と認定ロゴのほか、認定「G-SHOCK」を付与し、ノウハウの共有や課題解決の場として、合同ミーティングや交流会を開催している。CASIO Partner Teacherの事例は、公式サイトで紹介されている。

今回発表されたClassPad.netの新機能は、アクティブ・ラーニングを強化する内容だが、カシオの教育事業のもう1つの核となる、アダプティブ・ラーニング(個別最適な学び)を強化する取り組みの1つが、2022年4月より高知県教育委員会と行っている実証事業だ。両者はデジタル学習支援に関する協定を締結、1人1台端末を使った高校生の学習ログを活用し、個別最適学習の支援を行っている。

カシオ計算機 EdTech BU EdTech戦略部長 上嶋 宏氏は、同社の強みとして、「生徒の学習ログを取得するうえで、関数電卓や電子辞書など、授業内で使うツールを提供するカシオならではのアドバンテージがある」と言及。現在の研究段階で、「同じクラスの生徒でも、教科によって行動特性に差があることが既に判明したほか、現場の先生方からは生徒の動向を把握したいという要望が多数寄せられている」と成果を語った。こうした実証事業の成果をもとに、同社では2025年までに学習ログを活用した教員用の情報提供サービスを予定しているという。

学習ログを活用した、アダプティブ・ラーニングの実証事業

カシオの教育事業のコンセプトは「Boost Your Curiosity」、学びの原点は好奇心であり、学びを支援することによって、児童生徒の好奇心を高めることを目指している。ClassPad.netの製品版導入校は、現在245校。2026年の目標値である1,750校は約7倍とチャレンジングな件数だが、発表会の質疑応答の場で太田氏は「高校のICT化のスピードにも大きく関係していく」と語った。小中学校ではNext GIGAに向けた端末選定が視野に入ってきたが、高校GIGAも今以上に「Boost」することを期待している、と同氏は締めくくった。

本多 恵

フリーライター/編集者。コンシューマーやゲームアプリを中心とした雑誌・WEB、育児系メディアでの執筆経験を持つ。プライベートでは2人の男子を育てるママ。幼稚園児&小学校低学年の子どもを持つ母として、親目線&ゲーマー視点で教育ICTやeスポーツの分野に取り組んでいく。