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AI時代だからこそ育みたい、考える楽しさ!「シンクシンクカップ2025」で400人の子供たちが熱中した日

知育アプリ『Think!Think!(シンクシンク)』のユーザーが集う、年に1回の大会「シンクシンクカップ」

子供の「知りたい」「やってみたい」という気持ちに火をつけ、そっと背中を押すような体験を届けたい。そんな思いから、私たち保護者は子供をいろいろな場所へ連れていくのだろう。

2025年9月14日、日本科学未来館で開催された「シンクシンクカップ2025~みんなで、いちばんわくわくする日~」も、まさにそんな1日だった。全国から400名以上の子供たちが集結し、知育アプリ『Think!Think!(以下、シンクシンク)』(ワンダーファイ株式会社)のスコアを競い合った。

『シンクシンク』は、空間認識・論理・数的処理など5分野のミニゲームを通じて思考力を楽しく育むアプリ。年に一度の大会では、親子ミッションや知育ブース、謎解きなど、デジタルとリアルをつなぐ体験が広がっていた。

知育アプリ『シンクシンク』。パズルや迷路、図形などのミニゲームを120種類20,000問収録し、子供たちの算数力や思考力、非認知能力を育む

ウォーミングアップは親子で挑む「思考のビンゴ」

大会は学年ごとに順番に進行。まずはウォーミングアップとして、大型スクリーンを使った「親子ミッション」が実施され、来場者はビンゴ形式で思考問題に挑戦した。問題の答えは数字になっており、ビンゴカードで同じ数字が並べば、子供たちは「ビンゴ!」と元気に声を出した。

思考問題でウォーミングアップ

出題される問題は、子供たちにとってはおなじみの図形やパターン、空間把握を問うものが中心。大人でも思わずうなるような問題もあり、親の方が本気になってしまう場面も見られた。会場のあちこちから「これはどう思う?」「あっちの形と似てるね」など自然な対話が生まれ、子供が親に教える場面も多かった。

いざ、思考バトル!真剣勝負だからこそ得られる達成感

筆者が取材したのは、小学1〜2年生の部。我が子も小1で同じように『シンクシンク』のアプリに取り組んでいるので、つい保護者の視点で子供たちを見守ってしまう。

各席にタブレットがずらりと並ぶ。子供たちの真剣なまなざしが印象的

どの問題が出るかは、ルーレットで1つずつ発表される仕組みだ。得意な問題を願うように祈る子、出題内容に思わず声を上げて喜ぶ子、肩を落とす子。ルーレットに一喜一憂する姿は、真剣そのものだった。

中には、緊張のせいか、始まる前に泣いてしまった女の子も…。しかし、会場では一人で着席し、いざ本番が始まると、涙を拭いて静かに画面へ向かった。スタッフから「問題が始まる前は、頭の上に手を置いて準備してね」と声がかかると、緊張と期待の入り混じった顔で、両手を頭の上にそっと乗せた。

「手は頭」のポーズで待機する子供たち。熱い「思考バトル」が始まる

大会は5問の総合スコアで順位が決まる。中には過去に出場経験のある常連組の姿もあり、「何点取れば上位に入れるか」配分を意識しながら取り組む様子も見られた。

出題の1つは、「モグラレスキュー」。スコップの数だけ穴のマスを掘り、すべてのモグラを助けるとクリア。解くほどにマスやモグラの数が増えて難易度が上がっていく

表彰式前には、子供たちが自然とグループになり「あの子は、たぶん上位だよね」と楽しそうに予想し合う姿も。スコアの集計を待つ間、知育YouTubeチャンネル「ワンダーファイTV」でも公開されている、「かくれんぼクイズ」に挑戦し大いに盛り上がった。

ユーモアたっぷりなキャラの動きに、笑い声が弾む。「子供が夢中になる」コンテンツとしての楽しさも、『シンクシンク』の魅力だろう

デジタルとリアルをつなぎ、学びを継続する仕掛けに

ワンダーファイ株式会社の代表取締役 CCO / ファウンダー 川島慶氏

大会を主催したワンダーファイ株式会社の代表取締役 CCO / ファウンダー 川島慶氏は、「アプリでの学びも大切ですが、子供たちの心を動かすのはリアルな場。まるで友達をつくるように、『考えることの楽しさ』と出会い、縁を結んでほしい。大会の場が、そのきっかけになってくれたら嬉しいですね」と話す。さらに、今回の会場に日本科学未来館を選んだ理由について「保護者にとっても、子供と一緒に訪れたくなる場所にしたかった」と語った。

科学未来館の常設展を巡りながら、親子で謎解きを楽しむ「なぞときワンダーラリー」も実施
小学1~2年生の部で優勝したなかだ きはるさん

小学1~2年生の部で優勝したなかだ きはるさんは「去年は入賞すらできなかったけど、その悔しさがあったから頑張れた」と笑顔を見せた。毎朝『シンクシンク』をプレイすることが習慣で、「頭の目覚ましにちょうどいい」と話す。

惜しくも入賞を逃した参加者からも「自己ベストを目指す過程が楽しい」という声が聞かれ、充実した様子だった。この日、この場所でしか得られなかった達成感や経験が、きっとこれからの学びにもつながっていくはずだ。

パズルに工作・デジタル教材、学びを体験できるブースも充実

会場内にはワンダーファイのSTEAM通信教育「ワンダーボックス」や、協賛企業による知育ブースも展開されていた。工作や、手を使って思考するアクティビティが充実しており、大会を終えた子供たちが熱心に取り組んでいた。

STEAM通信教育「ワンダーボックス」の教材を体験するコーナー

デジタル×リアルを融合した大型スクリーンの新コンテンツや、ボードゲーム・パズルなどの体験コーナーも盛況だった。パズルメーカー・ハナヤマの「ポケットモンスター」とコラボした立体パズル「はずる」や、「小学館の図鑑NEO」シリーズのペーパークラフトも人気で、多様な学びに触れることができた。

大型スクリーンをタッチして楽しむ、デジタルとリアルが融合した新コンテンツ。
パズルやゲームの専門メーカー・株式会社ハナヤマのブースでは、「ポケットモンスター」とコラボした立体パズル「はずる」を展示していた
「小学館の図鑑NEO」のペーパークラフトを体験するコーナーも盛況だった

共通の学びがつなぐ、国を越えた出会い

大会の熱気が冷めやらぬ中、もう一つの印象的な場面があった。それが、カンボジアから来日した子供たちとの国際交流セッションだ。

ワンダーファイは2017年よりJICAの支援を受けて、カンボジアで『シンクシンク』の導入と実証研究を続けている。今回は、現地で開催された大会「シンクシンクカップ in カンボジア」の上位入賞者7名とその家族が来日。言葉や文化の壁を越えて、日本の子供たちと交流した。

「シンクシンクカップ in カンボジア」入賞者らとの交流会

チームでのクイズやARを使ったミッションに挑戦するうち、初めは緊張していた子供たちも、自然と笑い合い、身ぶり手ぶりや簡単な英語でコミュニケーションを取りはじめる。「考えることを共有する」体験が、国を越えて子供たちをつなげていった。

日本とカンボジアの参加者がチームを組み、協力した問題を解いた

カンボジアから参加した9歳の男の子に感想を聞くと、「全部楽しかった。特に、リズムで考えるプログラムがすごく面白かった」と静かに話してくれた。「日本の子はみんなスマートで、一緒に考えるのが楽しかった」という言葉に、短い交流の中でも、確かな手ごたえを感じていた様子がうかがえた。『シンクシンク』という共通の学びを通して、異なる国の友だちとつながる時間は、とても貴重なものとなったに違いない。

大会中、主催者である川島氏が子供たちに贈った言葉がある。「得意で好きな問題ばかりやっていい。無理に苦手に取り組まなくても、自信がつけば、自然と手が伸びるようになるから」。それがいち保護者として、強く胸に響いた。

大人はつい、「苦手を克服してほしい」と願ってしまうものだ。でも実際には、「これ好き!」「もっとやりたい!」という気持ちこそが、学びを前に進めるエンジンになる。目を輝かせて問題に挑む子、思わず声を上げる子。会場にいた子供たちの姿は、「考えることって楽しい」という感覚が、確かに芽生えていることを教えてくれた。

本多 恵

フリーライター/編集者。コンシューマーやアプリを中心としたゲーム雑誌・WEB、育児系メディアでの執筆経験を持つ。プライベートでは小学生兄弟の母。親目線&ゲーマー視点でインクルーシブ教育やエデュテインメントを中心に教育ICTの分野に取り組んでいく。