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「AIに任せていいの?」をマイクラで体験 『CyberSafe: AI Dig Deeper』で学ぶ責任あるAIの使い方
――教育版マインクラフト ワールド紹介その⑭
2025年6月2日 06:30
教育版マインクラフトの膨大なワールドを紹介するこのシリーズ、今回は生成AIの活用とそのリスクについて学べる「 CyberSafe: AI Dig Deeper(さらに深く掘り進みましょう) 」のワールドを取り上げる(以下、CyberSafe: AIとする)。
このワールドでは、プレイヤーは生徒となり、学校のeスポーツ大会に向けて資金集めのイベントを進めていく。3Dプリンターで作った動物フィギュアを販売する中で、より多様なデザインを短時間で仕上げるためにAIの力を借りようと考える――そんなストーリーだ。
いまや子供たちも生成AIに触れる時代。このワールドでは、生成AIとの向き合い方や人間の責任を、実体験を通して掘り下げていく内容になっている。さっそく、ワールドに入り、我々もその学びを探っていこう。
ちなみに、今回のCyber Safe AIは、教育コンテンツの1つとして、 統合版(Bedrock Edition)のマーケットプレイスでも無料で配布されている 。検索バーで「cyber safe ai」と検索すれば、 Switch等でも利用することが可能だ。
仲間たちと進めるのは、eスポーツ大会の準備とAIツールの実習
今回のワールドは、新着情報&特集または、名称が最近変わって「図書館」になったライブラリの中の「デジタル市民権」にある。ここには、他のサイバーセキュリティ関係のワールドも集められている。
ワールドが生成されると、まず4つのキャラクターから1つを選ぶ。ここで選んだスキンでプレイヤーはワールドの中に出現する。物語の最初は、スクールバスの短い動画から。仲間たちと一緒に学校に向かう場面からはじまる。
学校の中では、間もなく行われるeスポーツ大会でもちきりのようだ。もりあがっているところに、eスポーツキャプテンがあらわれ、頼み事をしていく。どうやら主人公であるプレイヤーと仲間たちは学校でも一目おかれる存在らしい。学校を舞台にしたドラマを見ているようである。
話が終わるときらきら光るパーティクルがあらわれ、ついていくように促される。
学校の授業ではモデリングツールを使った実習が
プレイヤーが向かった先はいわゆるSTEMラボらしい。Surface Proと3Dプリンターが用意されているようだ。
椅子にかけると、先生の話がはじまる。プレイヤーたちは、3Dモデルのデザインツールの使い方を学んでいるようだ。モデルを作るだけでなく3Dプリンターにもその場で出力できるらしい。
基本のモデルがつくれたら、AIチャットボットを使った実習へ。象をテーマに作りたいのだが、AIの提案は2種類ある。さてどっちを選ぶべきか。
ここまでで授業は一旦終わり。クリスティーナからeスポーツ大会の資金集めに、作ったフィギュアを販売したらどうかというアイデアがでる。クリスティーナ、できる子である。
宿題が出るのでこれは家に帰ってから片付けよう。宿題として出されたのは、家でAIアシスタントを使って別のアイデアを考えてくること。便利なAIの提案にそのまま頼るのか、それとも自分の視点を加えるのか――。プレイヤーは、AIを活用するうえでのリテラシーを問われることになる。
家では信頼できる大人たちとの振り返りがまっている
家に帰ると、リビングとキッチンに大人の姿が。ゲームの中では「信頼できる大人」という扱いだ。また仲良しの「ジョニーおばさん」が休みをとって遊びに来てくれたようだ。この3人との日常会話もドラマのようで面白い。
宿題は家のパソコンでやれるようだ。ログインすると友人からメッセージが届いていた。ミニゲーム「DIG IT!」を一緒にやらないかというお誘いである。とっとと宿題をすませて遊びたいところだが、どうしよう。AIに丸投げすれば一瞬で終わるけれど、それでいいのかというモヤモヤもある。便利さに頼るか、自分で考えるか、まさに悩みどころだ。
モデルを作りながらアイデア出しや正しい資料の大切さを学ぼう
翌日、宿題の結果をさっそく3Dプリンターで出力すると、なぜか哀しい結果になる。どうやらみんなAIに丸投げしてさっさと終わらせてしまったようだ。先生も呆れている。
実はこの宿題、単に完成させることが目的ではなく、「AIとどう向き合うか」を考えるための問いだったのだ。誰かに考えてもらったものをそのまま使うと、どうなるか。その結果がこの失敗に表れている。
そこで先生からは、反省をもとに、AIを使う際の注意点や人間が果たすべき役割についてノートに書き留めるよう促される。AIを使うときの人間が出す指示の大切さをノートに書き留めておこう。学校での学びは、持っているアイテム本と羽ペンに書き込める。一斉授業でやる場合、あとでPDFとして提出してもらうのもいいだろう。
この失敗を生かして、次の課題が与えられた。今度は、学校のマスコットキャラクターのモデルを作るというものだ。ところが、今度は見事に全員そろって同じ「カメレオン」のモデルを出してしまった。みんな、どうやらマスコットという言葉から「カメレオン」を連想したらしい。実は学校のマスコットがカメレオンで、それが一番最初に浮かぶアイデアだったようだ。
そこで、先生から「アイデアの源はAIに頼るのではなく、人間に聞いてみよう」と提案され、学校にいる人たちからアイデアを集めていく。
中にはドラゴン、レッサーパンダといったアイデアが。さっそくモデルをつくってみよう。
晩ご飯のレシピづくりを手伝おう
家では信頼できる大人から相談が待っている。今夜のご飯のレシピをAIで作りたいようだ。さっそく今日学校で学んだことを生かしていこう。AIに必要な指示をきちんとわたせば美味しい寿司ボウルのレシピができあがる。
ここの手順をさぼってAIに丸投げすると哀しい晩ご飯になってしまうので気をつけよう。
このあとも、日を改めて家で相談がある。マイクラのMODについてや新しいゲームアプリなど身近な相談が多い。学校で習ったことをいかして対応してあげよう。深く掘り下げてちゃんと調べた方がよさそうなものばかりである。
こうもりの正しい情報を集めよう
次の日はこうもりのモデル作りから。さっそくAIチャットボットに画像を提示してもらうと、何かがおかしい。どう見ても、羽がついたネズミのような姿で、どうやらAIが正しく「こうもり」を理解していないようだ。
これは、いわゆる「ハルシネーション」と呼ばれるAIの勘違い。AIの出力をそのまま信じるのではなく、AIが出したものを人間が責任を持ってチェックする必要があることや、一次情報の大切さを学ぶ場面だ。
学校の図書館に行ってこうもりに関する資料を探してみよう。
図書室に行くと司書さんがまっている。コウモリに関する本のお薦めを選び、探してみよう。ところで、この図書室、飲み物と食べ物を配ってくれるロボットがうろうろしているのが面白い。ロボットにあうと、「飲食禁止」と言われる。
学校内で事件発生、いたずらフィギュアを回収せよ
翌朝、学校では仲間たちが集まって何かを見ている様子。なんとそこには、マイクラでお馴染みのニワトリ……ではなく、頭の部分がクリスティーナの顔になっているフィギュアがあった。筆者も吹き出しそうになったが、これは悪ふざけが過ぎている。
可愛そうに、クリスティーナはショックのあまりトイレで泣いていたらしい。校長先生からは、解決しないとeスポーツ大会への参加は見送ると厳しい判断が下る。
これは単なるイタズラでは済まされない。誰かの顔や姿を無断で使うこと、AIで作ったコンテンツが他人を傷つける可能性があること、その責任を考えさせる重要な場面なのだ。
証言によれば、フィギュアは学校のあちこちに5つあるようだ。まずは回収していかなければ。自分たちの手で責任ある行動を取ることが求められている。
5つ集め終わると、校長先生の前で犯人が謝罪する。反省文をだすことで、とりあえずこの一件は解決した。泣いていたクリスティーナはこれをきっかけに「自分の顔はいやだったけど、パーツを混ぜるのはおもしろいかもね!」という前向きな意見を提案をしてくれる。
さっそく今まで作ったモデルのパーツを集めて新しいモデルを作ってみよう。これは売れるかな?
無事にはじまったeスポーツイベント、新設のアリーナ会場も賑やかだ
こうして数週間後、完成したeスポーツアリーナを使った大会が開催。仲間たちと校長先生やキャプテンに感謝され物語は終わる。校長先生からの証明書をありがたく受け取っておこう。
今回紹介したCyber Safe Aiは、近年コンテンツが増えている「Cyber」カテゴリの1つ。図書館(ライブラリ)の中では「デジタル市民権」にまとめられている。以前紹介した初学者向けCyber Safeシリーズ「ホームスイートホーム?」からはじまり、より専門性の高いネットセキュリティ技術について学べる「Cyber Expert」までワールドも充実してきた。特に中高生であれば、情報の教科にも通じる内容なので、興味を持つ生徒も多いはずだ。まずは、どんなワールドがあるのか、気軽に眺めてみてほしい。