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Adobe Fireflyで生成AIを体験!”クリエイティブ”でつながる先生コミュニティ

アドビの教育者コミュニティ「Adobe Education Leader」キックオフミーティングをレポート

2023年度AELのみなさん

マイクロソフトやGoogle、Appleはじめ、教育現場に製品・サービスを提供する企業の中には、自社製品を活用する先生を集めたコミュニティを築いている。そうした場は、先生同士が地域や校種、教科や立場を超えてつながり、互いの実践を共有したり、新しい情報をインプットしたりと、交流しながら学べる機会となっている。

アドビが取り組んでいる認定制教育者コミュニティ「Adobe Education Leader(AEL)」もそのひとつ。同社は2019年からAELをスタートし、教育活動にクリエイティブツールを取り入れる先生たちをサポートしている。

こうした先生コミュニティでは、どのような交流が行われているのか。実際に、AELのキックオフミーティングを見る機会があったので紹介しよう。

教育分野で利用が広がるアドビ製品

Adobe Education Leader(以下、AEL)は、アドビ製品を活用して先進的な教育活動に取り組む先生のためのコミュニティで、1年毎に認定される。2023年度は、さまざまな所属先から28名の先生が認定された。

アドビ製品というとプロ向けでハイスペックマシンでしか動かないイメージが強いかもしれないが、近年では、機能を絞り込んだモバイルアプリやブラウザ版の軽快に動くアプリが次々と発表されている。GIGAスクール端末のスペックやクラウド環境で活用しやすい製品が増えてきているのだ。

特に、ブラウザでもモバイルアプリでも軽快に使えるクリエイティブツール「Adobe Express」は、小中高校の教育機関向けの無料プランがあり導入しやすい。小学校でも「Adobe Express」を使ってグループ学習の発表資料をWebページや動画で仕上げるなどの事例があり、AELの先生には馴染みの深いツールだ。

このキックオフミーティングでも、Adobe Expressの機能や活用ポイントなどについてアドビから説明があり、先生が新しい情報をインプットできる機会を提供。その後は、先生同士の交流を深めるグループワークが行われた。

Adobe Expressは、直感的な操作と豊富なテンプレートでグラフィック、Webページ、動画の作成ができる

先生自ら制作のグループワークで交流を深める

グループワークのテーマは、グループで全員を紹介するプレゼン資料をAdobe Expressで作ること。制作時間は30分。早速グループ毎に自己紹介を交わしてグループ名をつけ、表現方法を決めて制作に入っていった。限られた時間の中で、コンセプトをかためて分担して手際よく進めていく姿は、さすが先生という感じがする。

グループワークがリラックスした雰囲気でスタート

Adobe Expressの使い方は慣れている先生が多い様子で、グループによってウェブページにまとめたり、グラフィックで表現したりとさまざまな紹介資料が仕上がった。制作データはクラウドに保存され、共有リンクを発行するだけで共有できる。データを添付して送るのではなく共有リンクで提出するあたりが、クラウド時代ならではのスタイルだ。

グループ毎に制作するAELのみなさん
iPadでAdobe Expressを利用している先生も。Adobe Expressはブラウザで利用できるがモバイルアプリ版もある

発表時間には、次々に自己紹介プレゼンテーションが行われ、メンバーそれぞれのバックグラウンドが明らかに。和やかな雰囲気でメンバー間の交流が深まった。

いろいろなタイプの紹介資料が完成。遊び心のある表現も

Adobe Expressはプロ向けツールの”いいとこ取り”といった感じのツールで、デザインテンプレートや無料で使用できる画像素材などが豊富にあり、直感的な操作感とクオリティの高い作品をつくることができる。手軽に短時間で完成度を高められることが、完成した自己紹介資料からも感じられた。

最新のAI機能に触れて情報をアップデート、体感できる場も提供

Adobe Expressのような手軽なエントリーツールがある一方で、アドビ製品にはクリエイティブ分野で最先端の機能も搭載されている。

世の中でChatGPTなどの生成AIが大きな注目を集める中、アドビも「Adobe Firefly」という生成AIモデルを2023年3月に発表して話題になった。その機能を試せる登録制のベータ版がイベント当時すでに公開されていた。ベータ版では、文章による指示(プロンプト)で、グラフィックを生成したり、文字にエフェクトを追加したり、ベクターデータの配色をしたりできる(※)。

アドビ Creative Cloud エバンジェリストの仲尾毅氏がベータ版でグラフィックの生成をデモンストレーションして見せると、集まった先生から驚きの声が上がった。Adobe Fireflyでは、プロンプトに加え、写真なのかグラフィックなのかといったタイプや、雰囲気を決めるスタイル、色味などを、ワンクリックで設定できる。各種設定があるおかげで、プロンプトだけで全てを指示するよりも、はるかにイメージに近い画像を生成しやすい。

※記事本文はイベント開催の当時の状況。現在ではAdobe PhotoshopとAdobe Illustratorのベータ版、Adobe Expressのデスクトップ版にAdobe Firefly(ベータ版)が組み込まれている。

「Adobe Firefly」の画像生成デモンストレーション。「横顔と海の二重露光ポートレート」というプロンプトに加え、「Photo」タイプや「Neon」スタイルを指定しているところ

生成AIを使った機能はその後も追加されていて日々変化を続けている。今後はアドビ製品の機能の一部として組み込まれていく予定だ。さすがAELの集まりだけあって、すでにこのベータ版に申し込んで利用してみたことがあるという先生もいたのが印象的だ。

Adobe Fireflyではテキストのエフェクトを生成AIで行うこともできる(筆者作成)

なお、この生成AI「Adobe Firefly」の以前からアドビ製品には「Adobe Sensei」と呼ばれるAIを使った機能が搭載されていて、その機能のデモンストレーションもあった。中でも注目なのが、動画編集ソフトのAdobe Premiere Proの文字起こし機能だ。動画の音声をAIで文字起こしして、そのテキストをもとにキャプションを自動生成することができる。

さらに最近新機能が追加され、文字起こししたテキストを編集するだけで、動画のタイムラインを編集できるようになったのだ。例えば、不要な発言部分のテキストを選んで削除するだけで動画の該当部分を削除することができる。動画編集を授業に取り入れている先生も多く、デモを見つめる会場に驚きが広がった。

アドビ仲尾氏がAdobe Premiere Proの文字起こし機能をデモンストレーション。皆真剣に注目している

こうして技術的に最先端の機能に触れられるのは、認定コミュニティならではのメリットだろう。単に製品情報をアップデートするだけでなく、先生がテクノロジーの動向を体感する時間となった。

情報教育にクリエイティブな視点を

グループワークやデモンストレーションの前には、先生の取り組みや実践を披露する講演も行われ、AELの一員でもある神奈川大学附属中・高等学校副校長の小林道夫先生が登壇した。小林先生は1989年という非常に早い時期から同校で情報教育に取り組み続けてきた長い経歴があり、NHK高校講座「情報I」の講師も務めている。

神奈川大学附属中・高等学校副校長 小林道夫先生

小林先生が語ったのは情報教育とクリエイティビティの関係だ。小林先生は当初、人が学習を反復的に教える代わりにコンピューターを活用するという発想で教材づくりをしていたが、1990年代後半からその発想を転換したという。

「情報教育とかコンピューター教育というのは、クリエイティビティをきちっと発揮させるような授業を展開すべきなんだろう、と考えるようになりました」と小林先生は振り返る。ちょうどAppleが初代iMacを世に出し、「Think different」というコピーを掲げた広告キャンペーンを展開していた頃だ。当時を知るAELの先生方の間には、その時代を懐かしむような空気が流れた。

「自分で作ること、人と違う考えを持ってやっていくとか、人がやっていないことをやってみようということを中学生高校生に教えていきたい、と考えたんです」。そこで、小林先生は、アドビのクリエイティブツールを導入し、ポスターやロゴの制作、動画編集や、ウェブサイト制作などを積極的に取り入れていった。

授業外で生徒がチャレンジする機会も重視し、探究学習の成果とウェブ制作技術が求められる「Think Quest Internet Challenge」(現在は「全国中学高校Webコンテスト」)に、1998年から参加を継続。また、プログラミングによる課題解決が求められる「宇宙エレベーターロボット競技会」には2013年から参加している。

なお、同校での1人1台PCの整備は2018年には完了しており、小林先生がGIGAスクール構想に先駆けてICT活用を推進してきた過程も共有された。現在では、学習での利用はもちろん、教員間や教員から生徒への情報共有のデジタル化も進んでいるということだ。

クリエイティブな活動を通した情報教育のように、他の教科においてもクリエイティビティが学びを促進する可能性を感じる話だった。

神奈川大学附属中・高等学校の1人1台整備の過程(小林先生発表スライドより)

以上のように、アドビに限らず、多くの教育関連企業では先生同士がつながるコミュニティを築き、交流する機会を作っている。こうした場は、先生が横のつながりを作ることで、他の学校の取り組みや実践を知って新たな気づきを得たり、学校の中だけでは得られない刺激を得たりと良い循環を生み出している。先生たち自身がワクワクして学べることは大切であり、それぞれの学校現場に還元して、子供たちに楽しい学びを提供してほしい。

狩野さやか

株式会社Studio947のデザイナー・ライター。ウェブサイトやアプリのデザイン・制作、技術書籍の執筆に携わる。自社で「知りたい!プログラミングツール図鑑」「ICT toolbox」を運営し、子ども向けプログラミングやICT教育について情報発信している。