ナレッジ

「育児書のとおりにしても、子育てがうまくいかない」という悩みは捨てよう

~『かくあげ先生の 発達障害・グレーゾーン 子育て 新ベストテクニック54』より②

広汎性発達障害の息子の症状を改善させ、
私大付属中学校合格まで導いた子育て経験が濃縮


昨今では広く知られるようになった「発達障害」「グレーゾーン」といった言葉。実際に「自分の子供に当てはまる…」といった悩みやモヤモヤを抱えている保護者の方は多いでしょう。本連載では、そうした悩みを持つ保護者の方に向けて、発達障害児教育専門家の撹上雅彦氏、撹上理恵氏の著書『かくあげ先生の 発達障害・グレーゾーン 子育て 新ベストテクニック54』(インプレス)より、抜粋した内容を5回にわたって掲載します。

ここからは私たちの実体験も交えてご紹介していきます。

かつては私も育児書を盲信し、息子の行動が紹介される事例に当てはまらないと歯がゆく感じていました。私たちの息子には特性があるので、子育てに苦労し、悲観する時期もありました。しかし、現在は大学付属の私立中学校に通い、とても頼もしく成長しています。

小学校に入るまでの息子の特性は次のようなものでした。

・抱っこやおんぶを嫌がる。自分の体を大人にあずけられない。そのため親にもフィット感がなく、子どもがたびたび落ちそうに感じる。
・目を合わせようとしない。
・カメラのある方向へ目を向けない。
・言葉を受けとめられない。
・同世代の友達と遊ぶのが苦手。
・食べこぼしがほかの子どもよりも多い。
・ほかの子が好きなキャラクターにまったく興味を示さない。
・おもちゃに興味を示さない。
・運動が苦手。
・人前で言葉を発せられない。集団活動に参加できない。
・歩きたがらない。いつもバギーに乗りたがる。
・「箸を使う」「ボタンを留める」「ひもを結ぶ」「左右を間違わずに靴を履く」などの、基本的な生活動作が苦手。
・個別の指示は理解するが、集団に向けた指示を理解しない。
・極度の偏食。

さらに小学校に入学してからは、次のような特性が目立ちました。

・黒板に書かれた文字をノートに書き写せない。
・テストで点数を取れない。
・漢字が書けない。文章問題が解けない。
・体育が苦手。
・音楽、図工、家庭科などの実技科目が苦手。
・知能検査(WISC)の結果は、70台前半。
・重度に近い中度の広汎性発達障害と診断される。

このような特性がある息子に対して、私たちは「言葉のシャワーを浴びせましょう」という育児書の内容を実践しました。 しかし、息子は多くの情報を処理するのがとても苦手で、言葉が多ければ情報を遮断してしまいます。

たとえば、「いい子だね。ちゃんと座ってね」という言葉には反応しなかったのですが、「すわる!」と短く伝えれば反応するのです。なぜ反応しなかったのかというと、「いい子だね」「ちゃんと」「座ってね」という3つの情報に対応できなかったからです。

このように特性ある子の子育てでは、 その子に合った適切なテクニックを使うことが必要で、上手に使うと「できない」が「できる」に変わることも多いのです。

「育児書の内容を実践しても、うまくできなかった」という場合、子どもの特性を考えながら、その子に合う方法をいろいろと試して探すことが大切です。

ちなみに、その後の小学校高学年から現在の中学生までの息子は、次のようになりました。

・小5の2月に名古屋へ引っ越した時に、支援学級から普通学級に移籍。
・小6で英語検定3級(中学卒業レベル)に合格。
・大学付属の私立中学に入学し、成績は学年上位に。
・囲碁を習い始め、半年で初段に。1年も経たずに4段に合格。
・中1で数学検定5級(中1レベル)に合格。
・ポッチャリ体型から筋肉質な体型に成長した。
・名古屋市内を地下鉄やバスを使って、1人で移動できる。
・学校で友達ができた。
・3泊4日の囲碁合宿に、1人で参加できた。

さまざまなテクニックを使った結果、ここまでできるようになりました。小学校低学年の時に検査して判明した息子のIQは70台前半で、その事実を知った時は親としてかなりショックでした。しかし、その特性を受け入れ、本人に合った育児を模索したからこそ、息子は大きく成長できたのです。

ですから、みなさんも「育児書のとおりにしても、子育てがうまくいかない」という悩みは捨ててください。ほかの子やきょうだいを特性ある子と比べるのもやめるべきです。

子どもは一人一人違うのが当たり前です。まずは子どもへの負の感情を捨てて、子どもと自分自身の成長を楽しむことが一番です。

まずはここから!
一般的な育児書は捨てましょう。そして、子どもの成長のペースに合わせた子育てをしましょう。

撹上雅彦(かくあげ先生)
特性ある子どもの教育の専門家として、発達障害児の子育ての実体験と教育理論の両面から改善アプローチを研究。自身が持つ発達障害の傾向から、特性ある子の傾向を読み解き、行動改善のために必要な特性に合わせたテクニックを提唱している。
撹上理恵氏
発達障害児のための教育グループ代表。発達障害の子どもの子育てに悩み、食事の栄養面からの改善を図り、行動改善ができたことから栄養アドバイザーとしても活動中。子どもの心と体の改善の第一歩は、お母さんの笑顔と栄養改善が必要と考えている。