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自立をめざしながら、失敗できる環境や依存先を増やすことが大切

~『かくあげ先生の 発達障害・グレーゾーン 子育て 新ベストテクニック54』より④

広汎性発達障害の息子の症状を改善させ、
私大付属中学校合格まで導いた子育て経験が濃縮


昨今では広く知られるようになった「発達障害」「グレーゾーン」といった言葉。実際に「自分の子供に当てはまる…」といった悩みやモヤモヤを抱えている保護者の方は多いでしょう。本連載では、そうした悩みを持つ保護者の方に向けて、発達障害児教育専門家の撹上雅彦氏、撹上理恵氏の著書『かくあげ先生の 発達障害・グレーゾーン 子育て 新ベストテクニック54』(インプレス)より、抜粋した内容を5回にわたって掲載します。

多くの親御さんが心配する「自立」について、もしこの最終目標が「親の亡き後、経済的にも精神面でも生活習慣面でも他人に頼らず生きること」なら、かなりハードルが高い話です。普通の人でも完璧にできる人はあまりいないでしょう。

そこで、わが家では、子どもの自立を手助けするいっぽうで、セーフティネットを維持しようと考えています。理想としては「住む家を残す」「就職しなくても親が残した会社を継承できるようにする」「親が死んだ後も生活を助けてくれるパートナーを探す」などがあります。

もちろん、実際にどこまでできるかは別ですが、 特性ある子の子育てでは、子どもの自立をめざしながらも、失敗できるような環境を整え、依存先を増やすことも大切だと思います。

ここで注意すべきこともあります。特性ある子を持つ親は、子どもにとって、よくない「甘やかし」をする傾向があります。たとえば以下のようなことです。

・何歳になっても可愛いので、つい手伝ってしまう。
・1人でやらせると子どもがいら立ち、かんしゃくを起こすので、つい手伝ってしまう。
・1人でやらせると時間がかかるので、つい手伝ってしまう。
・どうせできないと思い、1 人でやらせずに手伝ってしまう。

このように、なんでもかんでも手伝ってしまうと、それこそ自分1人で何もできない「子ども大人」になってしまいます。

実は、恥ずかしながら、私自身もこうした「子ども大人」の1人です。私は子ども時代に祖父母に甘やかされて育ちました。大学生になっても、家を出るまでは祖母が生活全般を見てくれ、結婚した現在も、妻にすべてを任せきりです。

こういう育ちと性格ですから、いまだに箸がうまく使えません。鉛筆の持ち方もおかしく、自分で身だしなみも整えられません。

今のところ私は妻や周囲の助けもあり、快適な社会生活を送れてはいますが、子どももどうにかなるとはかぎりません。やはりある程度、自立させるようにする必要があります。

私はよくスタッフに「支援者が一番やってはいけないのが『できること』を手伝うこと。くれぐれも成長の機会を奪わないように」という話をしています。子どもの自立に関しては、次のことを特に意識して接してください。

・1人でできることに、手を貸さない。
・1人でできることを増やせるように心がける。

子どもの教育で大切なのは、成功体験をつくること。「できない」という意識を与えないことです。ですから、 根気よく、たとえ失敗しても時間がかかっても絶対に怒らないことが重要です。

まずはここから!
どうしてもできないことがあれば、解決してくれる依存先をつくってあげましょう。

撹上雅彦(かくあげ先生)
特性ある子どもの教育の専門家として、発達障害児の子育ての実体験と教育理論の両面から改善アプローチを研究。自身が持つ発達障害の傾向から、特性ある子の傾向を読み解き、行動改善のために必要な特性に合わせたテクニックを提唱している。
撹上理恵氏
発達障害児のための教育グループ代表。発達障害の子どもの子育てに悩み、食事の栄養面からの改善を図り、行動改善ができたことから栄養アドバイザーとしても活動中。子どもの心と体の改善の第一歩は、お母さんの笑顔と栄養改善が必要と考えている。