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ほかの子と発達の過程やスピードが異なるだけ。罪悪感を持つ必要はない!

~『かくあげ先生の 発達障害・グレーゾーン 子育て 新ベストテクニック54』より③

広汎性発達障害の息子の症状を改善させ、
私大付属中学校合格まで導いた子育て経験が濃縮


昨今では広く知られるようになった「発達障害」「グレーゾーン」といった言葉。実際に「自分の子供に当てはまる…」といった悩みやモヤモヤを抱えている保護者の方は多いでしょう。本連載では、そうした悩みを持つ保護者の方に向けて、発達障害児教育専門家の撹上雅彦氏、撹上理恵氏の著書『かくあげ先生の 発達障害・グレーゾーン 子育て 新ベストテクニック54』(インプレス)より、抜粋した内容を5回にわたって掲載します。

特性ある子を育てていると、知識のない人たちから「どういう子育てをしているのかしら?」と、発達の遅れの原因が子育てにあるかのような指摘をされる場合もあります。そうした言葉に傷つき、責任を感じるかもしれません。

しかし、これは親の責任ではありません。そもそも 特性ある子は、ほかの子と発達の過程やスピードが異なるだけなので、罪悪感を抱く必要もありません。

厚生労働省の保育所保育指針では、子どもの発達の過程には個人差があるいっぽうで、子どもがたどる発達の道筋やその順序には共通点があると考えられています。そして、見通しをもった保育が行えるように、年齢に応じた一般的な発達の過程を具体的に示したものが一人歩きしているのです。

言葉について、育児書で次のような解説を目にした経験はありませんか?

「1歳では、『ママ』『パパ』『バイバイ』を話す」
「2歳では、『まんま、ちょうだい』などの2語文を話す」
「3歳では、『パパ、カイシャ、イッタ』などの3語文を話す。600〜1000単語を理解する」

こうした情報を見て焦ったり、ショックを受けたりする親御さんは多いと思います。

「うちの子は3歳なのに何も話さない。3歳で3語文が話せて、600語から1000語もわかる? あまりに違うし、お医者さんに相談しても様子を見るとしか言われない。困った!どうしよう……」

安心してください。発達には個人差があります。2歳で2語文を話せなくても問題ありません。ほかの子どもと比較して深刻に考えなくてよいのです。

そもそもこのように提示される 発達の目安は、「○歳だから×ができないのはおかしい」と決めるためのものではありません。 年齢はあくまで目安にすぎず、子どもの言葉がどのような順番で発達するのかを示すものなのです。

もちろん、こうした目安が不必要と言いたいのではなく、むしろ、「この子は今、何を苦手としているのか」を把握するためにはとても大切なものなのです。

たとえば、幼稚園で年少クラスの先生が「ロッカーからクレヨンと画用紙を持ってきてください」と指示して、子どもが指示に従えない場合、親は「うちの子は先生に従う気がない」と考えてしまいがちです。

しかし、本当にそうなのでしょうか? もしかすると、まだ先生の話をよく理解できていないのかもしれません。「クレヨンと画用紙」の2つになるとわからない場合もあれば、そもそも「クレヨン」や「画用紙」の意味がわからない場合もあります。「ロッカーから」がわからず、「ロッカーに行って」なら理解できる場合もあるのです。

そこで、まずは発達の段階を理解してから、「この子はどこまで言葉を理解しているのか?」を知り、適切に言葉を伝える手段を考えます。

発達過程をネットで調べて「○歳では×ができると書いてある!」というような誤解をしないようにしましょう。子どもの成長には段階がありますが、その発達の過程を正確に理解してください。多くの情報を気軽に調べられる時代ですが、その分、断片的な情報や判断での混乱も増えていますから、くれぐれも気をつけてください。

まずはここから!
「○歳だから×ができるはず」ではなく、今、子どもに何が必要なのかを考える材料として、発達過程を知りましょう。

撹上雅彦(かくあげ先生)
特性ある子どもの教育の専門家として、発達障害児の子育ての実体験と教育理論の両面から改善アプローチを研究。自身が持つ発達障害の傾向から、特性ある子の傾向を読み解き、行動改善のために必要な特性に合わせたテクニックを提唱している。
撹上理恵氏
発達障害児のための教育グループ代表。発達障害の子どもの子育てに悩み、食事の栄養面からの改善を図り、行動改善ができたことから栄養アドバイザーとしても活動中。子どもの心と体の改善の第一歩は、お母さんの笑顔と栄養改善が必要と考えている。