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子供とIT 集約用

NVIDIAオフィスに女子中高生が集結!革ジャンCEOから最新GPU、AIファクトリーまで

NVIDIAのオフィスに女子中高生が集まった

 エヌビディア合同会社(NVIDIA)は7月31日、東京都と公益財団法人山田進太郎D&I財団が開催する女子中高生向けの「Girls Meet STEM in TOKYO 女子中高生向けオフィスツアー」を同社オフィスで実施した。

 NVIDIAは、1993年創業。もともとゲームなど高性能なコンピュータグラフィックスを表示する半導体を手掛けていて、GPU(グラフィックス プロセッシング ユニット)の企業としてPCユーザー、特にPCゲームユーザーの間ではよく知られていた。画像表示のための計算力が高度な科学技術計算にも活用できることから多方面での活用が進み、今やAIには不可欠な存在となっている。

NVIDIAは幅広い分野に参入、「女性の意見がすごく通る」

 このイベントは、女子中高生がSTEM分野の現場に触れることで興味関心の幅を広げ、将来の進路選択の一助とすることを目的に開催された。AI分野で注目を集めるNVIDIAには多くの応募が寄せられ、前年にも同様のツアーを実施して好評だったことから、今年も開催に至ったという。

 今回、ツアーに参加した女子中高生は、東京都内在住または在学の20名で、ゲームをする参加者が多く、なかにはゲーミングPCを持っている生徒もいた。

NVIDIA日本代表 兼 米国本社副社長 大崎真孝氏

 ツアーの最初はNVIDIA日本代表 兼 米国本社副社長の大崎真孝氏が参加者に向けて「NVIDIAは、ゲーム機からスーパーコンピューター、自動運転、ロボットにも入っている」と同社が関わる分野の広さを紹介。また、社内の女性社員については「従業員200人のうち女性が約2割と少ないものの、営業やマーケティング、エンジニアなど幅広い職種にいて、女性の意見がすごく通る」と重要な役割を果たしていることを強調した。

 さらに「日本の社会として皆さんが活躍できる場がもっと増えていくべきだと思っています。私たちが所属するようなITの現場、AIグラフィックスの場で、皆さんとお会いできることを楽しみにしています」と、将来の活躍に期待を寄せた。

NVIDIAは日本と関わりが深く、CEOも慕われている会社

 続いては、広報シニアマネージャーの吉川香葉子氏による会社紹介。吉川氏は、NVIDIAが本社を構える米シリコンバレーの最新オフィスをバーチャル映像で案内した。建築デザインにCGの基本要素である三角形を取り入れ、光と緑を多く取り入れた開放的な空間は、社員同士が交流し、新しい発想を生み出す場になっていると説明した。

NVIDIAの最新オフィス

 NVIDIAの創業者でCEOのジェンスン・ファン氏についても説明。イベントなどで黒い革ジャンを着ていることがトレードマークで“革ジャンCEO”と呼ばれていること、台湾出身で9歳からアメリカに渡り、スタンフォード大学で電気工学を専攻したエンジニア出身であること、1993年にNVIDIAを仲間とともに創業し、シリコンバレーではめずらしく32年もCEOを勤め続けていることなどを語った。

NVIDIAの創業者でCEOのジェンスン・ファン氏を紹介する広報シニアマネージャーの吉川香葉子氏。ジェンスン・ファンのアバターが散りばめられたシャツを着用中

 さらに、ジェンスン・ファン氏は社員を家族のように大事にし、社員からも慕われていると紹介。吉川氏が着ているシャツにもジェンスン・ファン氏のアバターが散りばめられており、このシャツは社内でも“ダサカワイイ”と評判がよく、多くの社員が着ていることも紹介した。

 NVIDIAと日本の関わりについてはビデオで説明。ゲーム会社のセガと当時の次世代ゲーム機開発で関わり、出資によってNVIDIAの窮地を救ったことなどが紹介された。また、歴代の日本の主要ゲーム機にもNVIDIAの技術が使われていることや、東京工業大学(現・東京科学大学)がGPUを使ったコンピューティングの可能性に着目したことから、NVIDIAがスーパーコンピューターの分野へと進んだことなどが説明された。

AIファクトリーによる産業革命
ソブリンAIを支援する

 吉川氏はさらに、NVIDIAが提唱する「AIファクトリー」というコンセプトを紹介し、大規模なGPUを多く組み合わせたスーパーコンピューターで、データを原料にAIモデルやサービスを生み出す「未来の工場」だと位置づけた。そして現在、独自に生み出すAIのソブリンAIの支援に注力し「日本のNVIDIAでも、日本の企業などと連携してメイドインジャパンのAIが生み出されていくようにお手伝いをさせていただく」とまとめた。

手書きのイメージが空間に配置される!? NVIDIAの技術を体験

 会社紹介の後は、参加者がグループに分かれてNVIDIAの技術を体験した。同社は半導体メーカーという一面もありながら、自社工場を持たないファブレスメーカーのため、工場見学ではなく、オフィス内での技術体験が行われた。

AIスーパーコンピュータ「NVIDIA DGX H200」の中身を解説中

 NVIDIAのGPUの役割を体験するプログラムとして、世代ごとに進化したグラフィックスをゲームで体感したり、AIが手書きイメージをもとに空間へアイテムを配置するデモ、そして、それらを支えるAIファクトリーの一部であるAIスーパーコンピュータの展示が行われた。

並んだPCは入ってるGPUが異なり、性能差を体感できた

 グラフィックスの進化では、ゲームの動きが滑らかに、細かくなっていくことを体感した。

AIの実演では、手書きのイメージをAIが解釈し空間にアイテムを配置した

 AIの実演では、手書きで描いた家具の簡単なイメージをもとに、部屋に家具を配置する様子を実現。ごく簡単な線画のイメージから、ソファーなどの家具が室内空間に配置され、なかには意図と違ったものが生成されて笑いが起きる場面もあり盛り上がった。

AIスーパーコンピュータ「NVIDIA DGX H200」
スーパーコンピュータのGPUを実際に持ってみる。放熱器もあってずっしり重い

 サーバーの展示では、実際のサーバーからマザーボードを取り出し、さらにGPUを取り出して見せた。参加者たちにはサーバーの構造がやや難しく感じられたようだったが、GPUが搭載されるグラフィックボードの重さを感じたり、消費電力の例などが紹介されると、AIを処理するサーバーの仕組みを少しずつ理解し始めた様子だった。

女性社員との交流で、ロールモデルに出会う

 続いて、グループごとにNVIDIAの女性社員と交流した。女性社員は理系職種と文系職種のそれぞれ1名ずつがペアを組み、2グループと交流することで、生徒1グループあたり4人の女性社員と話す機会が設けられた。

NVIDIA女性社員と質問など交流が行なわれた

 内容は自己紹介にはじまり、社員はいずれも転職でNVIDIAに入社していることから、学生時代の経験や前職、NVIDIAへ移った理由、そして現在の仕事、家庭や子育ての話しなど広く語られた。特に女性の仕事というよりは、これまで学んできたことと現在の仕事とのつながりや、職業の選び方などが語られていた。

 また、生徒側からも仕事のことや、これから学ぶこと、人生の先輩として助言を求める質問など、さまざまな問いが投げかけられた。

 主に話題は仕事の話になるが、NVIDIAは技術の会社であっても、技術を考える仕事だけでなく、技術を伝えたり広めたりする仕事もあり、そのために文系の力を活かせる職種があることや、大学で学んだことが数回の転職を経てNVIDIAで活きるようになったことが語られた。生徒たちにとって将来の仕事を考えるうえで何らかのヒントになったのではないだろうか。

貴重なお土産も…

 最後に、集合写真撮影と記念品の配布が行われ、イベントは和やかな雰囲気の中で終了した。

今回のお土産、NVIDIAのバッグにステッカーとジェンスン・ファン氏のデザインのトランプ。手渡すNVIDIA社員はもちろんジェンスン・ファン氏のシャツを着用中
ジェンスン・ファン氏のデザインのトランプ

 参加者にはNVIDIAロゴ入りステッカーや、CEOジェンスン・ファン氏をモチーフにしたトランプなどほかでは手に入りにくいお土産が手渡された。

最後はエンタープライズマーケティング本部長の堀内朗氏が生徒たちに「いつか、仕事か何かでご一緒できる機会を楽しみにしている」と話して終了した

 今回のオフィスツアーは、単なる企業紹介にとどまらず、AIとロボティクスがもたらす未来、そしてその中で女性が活躍できる可能性を、実感をもって知る機会となった。参加した女子中高生たちが、将来ITやAIの世界で自らの道を切り開くきっかけになったことは間違いない。

最後に記念写真、オフィスツアーは終了した
正田拓也