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Canvaに関する35の質問に回答!普段の活用から自治体単位の導入まで

――「こどもとIT」編集部主催オンラインセミナーレポート(後編)

「こどもとIT」編集部が2024年6月29日に開催したセミナー「校務や教材に大活躍!Canva for Education 最新情報オンラインセミナー」では、大幅アップデートされたCanva for Educationの新機能や実践事例などが語られた。その様子は前編の記事で紹介した通りだ。

また同セミナーには、多くの教育関係者が参加し質問や疑問も多数寄せられた。そこで本レポートでは、セミナー中に投げられた質問や事前に寄せられた疑問について1問1答形式で紹介していく。回答するのは、同セミナーに登壇したCanva認定教育アンバサダー/特別支援学校 教員 関口あさか先生とCanva Japan株式会社 Canva Education アジア太平洋地域マーケティング統括マネージャーの坂本良晶氏だ。

Canva認定教育アンバサダー/特別支援学校 教員 関口あさか先生
Canva Japan株式会社 Canva Education アジア太平洋地域マーケティング統括マネージャー 坂本良晶氏

活用事例や実践方法について

Q1:Canvaとロイロノート・スクール、ほかのクラウドサービスとのすみ分けや相乗効果について教えてください。

(坂本氏)個人的には、単元の前半や教員主導の学びでロイロノート・スクールやミライシードを利用し、単元の後半で児童生徒が主体となって表現する活動にCanva for Educationを活用する使うのがベストだと感じています。

Q2:Canva for Educationを授業で活用する事例や実践例、活用のための取り組みを知りたいです。

(坂本氏)Canva for Educationの公式サイトや公式YouTubeで情報発信をしています。今後も随時内容を更新する予定ですので、そちらをご参考にいただければと思います。

Canva for Educationの公式サイトより

Q3:高等教育機関におけるCanva for Educationの活用事例を知りたい。

(関口先生)高校教員のTeacher Canvassador(ティーチャーキャンバサダー)である吉川牧人先生や江藤由布先生を中心に、皆さんがnoteやXで活用事例を発信されています。ぜひ参考にしていただければと思います。

Teacher Canvassador(ティーチャーキャンバサダー)の先生方(※Canva for Educationのウェブサイトより)

Q4:校務での活用方法を教えてください。

(坂本氏)研究授業を実施するとき、指導案や授業動画、振り返りを1つのスライドにまとめると資料共有時に便利です。

(関口先生)更新頻度が多い資料の閲覧リンクを二次元バーコードで配布しています。差し込み印刷で名刺や児童生徒や教員の名札を作るのもオススメです。

Q5:教職員ではなくICT支援員ですが、Canva for Educationの利用は可能ですか?

(坂本氏)不可になります。

AI機能について

Q6:「マジック作文」などのAI機能は、Canva無料版で利用できますか?

(坂本氏)AI機能の「Magic Media」は、Canva無料版でも利用可能です。Canva無料版のユーザーはAI画像生成を50回、AI動画生成は5回まで利用できます。Canva Pro、Canva Team、Canva for NPO、またはCanva for Educationの管理者と教員は、AI画像生成を月に最大500回まで、AI動画生成を月に50回まで利用できます。これらの制限はユーザーごとに設定されており、請求月ごとに更新されます。

Q7:CanvaのAI機能はオリジナルですか? ChatGPTなどを使っているのですか?

(坂本氏)申し訳ございませんが、お答えできません。

Q8:AIが原稿を読む動画をCanva for Educationで作成しましたが、いい感じに作れませんでした。オススメのテクニックがあれば、教えてほしいです。

(坂本氏)原稿作成時に「マジック作文」で編集すると、さまざまな用途に応じた自分好みの文章を作れます。

(関口氏)私もマジック作文で「あなたは小学校の先生です。文化祭で子供たちがお化け屋敷を企画しています。この企画のポスターの魅力的な紹介文を200字程度で考えて」と条件を詳しく設定してAIに書かせ、DI-DなどのAIアプリと組み合わせて架空の人物が話している動画なども作ったりしています。

共同編集について

Q9:作業中にほかの児童生徒のページを消したり、意図せず複製してしまうことがあります。児童生徒にどう指導するといいでしょうか?

(坂本氏)慣れの問題もありますが、1つ前の作業に戻す「command+Z」(iPadやMac)、「Ctrl+Z」(Chromebook)を合言葉にするのがオススメです。消えてしまうのは仕方がないことなので、ルールを作っておくと安心です。

Q10:チームでの共有や共同編集で操作する指導ポイントを教えてください。

(関口氏)ルールと個人の作業の範囲、もしものときの対処法を事前に決めておくようにしています。例えば、編集するスライドのページやページ名に子供の名前や顔写真をつけておいたり、このスライドだけを編集すると決めておいたり。また、他の人のを消さないなどのルールを明確化し、そして万が一消してしまったときは「戻るボタンもしくはcommand+Z」で1つ戻るようにするなど、共同編集をする前に確認するようにしています

Q11:児童生徒が使用するとき、プラグインを制限することは可能でしょうか。YouTubeなどのプラグインを制限できる方法があれば教えてほしいです。

(坂本氏)自治体向けのCanva for Educationであれば、学校ごとで個別に制限を設けることが可能です。

Q12:昨年まではチーム招待時に認証なしで参加できていましたが、今年度からメール認証になったようです。外部からのメールは届かない設定にしていますが、何か対策はありますか?

(坂本氏)大変ご不便をおかけしています。現在、2段階認証の設定などについて、社内のエンジニアと解決策を探っている状況です。

Q13:共同作成時に「個人が実行する1つ前に戻す操作」と「全体で1つ前に戻す操作」のすみわけ方法はありますか?

(坂本氏)機能としてのすみ分け方法は、今のところありません。操作する本人がわかっていればいいのですが、基本的には共同作成者全員への呼びかけが有効です。あらかじめルール決めをしておくのがベターです。

Q14:Canvaで同時編集が可能なユーザー数はどれぐらいですか?

(坂本氏)Canvaでは、1つのファイルを同時に50名で編集できます。ただし、校内ネットワークの速度や接続状況によって、少人数でしか同時編集できないケースがあります。

Q15:コメントモードや編集モードは、児童生徒が自分で選べますか?

(坂本氏)コメントモードと編集モードの切り替えは、児童生徒自身が操作できます。

Q16:共同編集のために、[共有]-[リンクを知る人誰でも]-[編集可]でリンクを共有しました。リンクをクリックするとアカウント登録の画面が表示されてしまうのですが、アカウントを登録しなくても共同編集できますか?

(坂本氏)はい、できます。

機能面について

Q17:児童生徒をクラスに招待し、テンプレートを送ったり、課題を提出させるやり方を知りたいです。

(坂本氏)自分の学校の生徒や教員をクラスに招待するには、メールアドレスを指定するか、招待リンクを共有します。また、Google Classroomのクラスをインポートする方法もあります。課題やテンプレートを配布するとき、児童生徒にお知らせメールが届き、リンクを開くと使用可能になります。提出時は、エディターのメニューバーから[共有]をクリックします。

Q18:デザインのテンプレートがA4でないとき、A4に変える方法を知りたいです。また、カラーデータをモノクロ印刷する際、明瞭に印刷できる方法はありますか?

(坂本氏)サイズの変更は、「リサイズ」と「マジック変換」で可能です。カラーデータのモノクロ印刷は、プリンターのプロパティで個別に設定してください。

Q19:Canvaで作成したスライドをGoogleスライドに変換すると、デザインが崩れます。今はPDFに変換していますが、何か手立てはありますか?

(坂本氏)スライドを変換すると、仕様上どうしても多少のズレが発生します。いずれは解決したい点ですが、現時点では有効な対策方法がありません。

Q20:クラスの人数分デザインを作った後で変更が発生した場合、例えばテキストを追加するときに一括変更(挿入)する機能はありますか?

(坂本氏)テキストを一括で挿入する機能はありません。しかし「コピー&ペースト」で、複数のスライドの同じ位置にテキストを入力することは可能です。

Q21:自宅のパソコンで作ったデータを学校で使っている50インチのディスプレイを接続した端末で編集するとズレが生じます。

(坂本氏)ディスプレイサイズが異なると、仕様上、どうしてもズレが生じます。自宅では大まかにデザインを進めておき、学校の環境で仕上げや微調整をするのがオススメです。

Q22:オンライン授業やチラシ作成にCanva for Educationを活用しています。スライドアニメーションの操作の仕方(順序)、スライド音声の順序の変え方・流し方の方法が知りたいです。

(坂本氏)Canva教育者グループのWebサイトやYouTubeで操作方法をわかりやすく紹介しています。ぜひご覧ください。

Q23:ページを追加すると音がずれてしまいます。

(坂本氏)動画作成専用アプリではないため、細かい部分までできておらず申し訳ありません。アップデートにより改善するよう務めます。

Q24:背景がピンク色の作品をモノクロで印刷すると、全体的に暗い色になってしまいます。

(坂本氏)淡い色を利用した場合でも、モノクロ印刷では色が濃く出力される場合があります。モノクロ印刷を前提とした作品では、色を多用せずになるべく単色にする方がベターです。

Q25:音楽の授業で使いたいのですが、PowerPointのように画面に音を固定することは可能でしょうか?

(関口先生)特定の素材をタップして音が鳴るようにする使い方はできないですが、音自体を出すことは可能です。あらかじめ音が鳴るタイミングを決めておいて、音素材をタイムラインに配置することはできます。

自治体や学校への導入や申し込みについて

Q26:教員個人で申し込む場合と、自治体単位で申し込む場合の違いを教えてください

(坂本氏)自治体向けのCanva for Educationでは、管理者権限の譲渡・アプリの制御・共有機能の制御が可能になります。管理者権限の譲渡が可能になるため、年度末の異動や退職時にアカウントの管理がしやすくなるのが大きな違いです。

※2024年6月29日に開催されたセミナーの坂本氏のスライドより

Q27:Canvaの学校法人版を導入したいと思っています。法人内に複数の学校があるのですが、1つの学校単独で申し込みできますか?

(坂本氏)ドメイン単位での申請となるため、学校単体での申し込みはできません。

※2024年6月29日に開催されたセミナーの坂本氏のスライドより

Q28:導入に際し、教育委員会を説得できる効果的な事例を紹介してほしい。

(坂本氏)Canva教育者グループ運営サイトでは、Canva Educationの申請方法や自治体・学校向けの設定ガイドも紹介しています。そちらの事例を参照いただき、ぜひ導入の後押しにお役立てください。

Q29:子供たちがメールアドレスを使えないので、SSO(シングルサインオン)ができず、悔しいです。自治体向けならクリアとなるようですが、自治体がOKを出してくれません。坂本先生!!どうにかなりませんか?

(坂本氏)教育委員会の方とつないでいただければ導入のプレゼンをさせていただきます。

Q30:個人でCanva for Educationを登録申請しました。校内の教員が同僚を招待した場合、招待された先生は紹介者の異動後も継続して使えますか?

(坂本氏)基本的には使えません。

Q31:自治体にCanvaが導入され、使える機能が増えてありがたいです。しかし、アプリ連携に制限がかかることがあります。良い方法はありませんか?

(坂本氏)アプリの設定は学校ごとに可能です。まずは教育委員会に申請・相談するのがベターです。現場の先生方から「授業でこういうふうに使いたい」と提案していただくことが、すごく大切なのではないかと考えています。

Q32:生徒と共同作業するには、自治体単位での登録が必要ですか? 生徒を招待しようとすると「アカウント入力」が必要になります。生徒にはメールアドレスがないので、登録メールが届きません。どうすれば生徒を招待できますか?

(坂本氏)共同編集はログインなしでも可能です。なお、メールアドレスがないとアカウントは作れません。

Q33:私の自治体では、先週から児童がCanvaを使うことが禁止となりました。良い点はわかりましたが、懸念される問題と解決策はありますか。私自身は、子供たちの使い方に感心して、問題を感じたことはありませんでした。

(関口先生)Canvaはさまざまなものを作成でき、多くの機能があることがメリットだと感じていますが、一方でそれがデメリットとなることもあります。具体的には、子供たちはCanvaに慣れ始めの頃は「こんな機能も使えるよ!」と今授業で使用してほしくない機能を探索してしまうこともあります。ただ、さらに慣れていくとこのような行動は減少する印象で、逆に「Canva機能探索」の時間を確保してあげたり、今日の授業の目的や使う機能、時間を事前に明確に示すことも大事だと感じています。

(坂本氏)Canva教育版であれば、リーガル面、セキュリティ面において、これまで抵触した自治体は1つもありません。教育委員会の方を坂本につないでいただければご説明します。

Canva導入自治体(※2024年6月29日に開催されたセミナーの坂本氏のスライドより)

その他について

Q34:Affinityを使用するために、新規で申し込む必要がありますか? また、Canva for EducationだけでなくCanva Proでも使えますか?

(坂本氏)Affinityは、Canva for EducationまたはCanva for NPOのユーザーのみが無料で利用できます。登録は不要ですが、ウェイティングリストに登録していただくと、提供開始の通知をいち早く受け取ることができます。

Q35:大学生はCanva for Educationを無償で利用できないようですが、教員養成大学の学生は無償で利用できますか?

(坂本氏)大学生向けには「Canva for Campus」があります。利用の際は、まず大学の教職員の方に「Canva for Teams」(年間使用料:1人あたり9,000円(税込))を購入いただきます。その後、一定のライセンス数に達した時点で、学生全員が使用できるようにプレミアム教育チームに移行します。Canva for Campusの価格については、ぜひ個別にお問い合わせください。

Q&Aのコーナーでは、Canva for Educationを活用したい教員やすでに利用している教員の課題や困りごとが多く寄せられた。その中には、自治体向け、学校法人向けのCanva for Educationを導入することで解消される課題も複数あり、組織として採用するかどうかが今後の活用推進には欠かせないといえる。

セミナーの終盤、関口先生は「Canvaは粘土のように自由なツール」であるとして、「児童生徒の学び・教材作り・公務など、ステキなアイデアを具現化するツールの1つとして活用してほしい」とメッセージを送った。また、元教員の経歴を生かしてCanva for Educationの普及に取り組む坂本氏は、「日本の先生のスキルは、世界の中でもトップレベル。教員の皆さんの実践にCanvaのソリューションを上乗せして、その魅力を伝えていきたい」と意欲を見せた。

なお、公式サイトのサポートページでCanvaのプランやアカウント設定、編集やデザインなどに関する問い合わせや確認が可能だ。利用にはCanvaアカウントが必要となるが、教育現場での疑問点解消にぜひ役立てていただきたい。

本多 恵

フリーライター/編集者。コンシューマーやアプリを中心としたゲーム雑誌・WEB、育児系メディアでの執筆経験を持つ。プライベートでは幼稚園児&小学生の母。親目線&ゲーマー視点でインクルーシブ教育やエデュテインメントを中心に教育ICTの分野に取り組んでいく。