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立命館とマイクロソフト、スタートアップ創成などに向けた連携協定

オリジナル生成AI「R-AI(仮称)」も開発する

連携を発表した立命館 総長の仲谷善雄氏(左)と日本マイクロソフト 執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長の中井陽子氏(右)

 立命館大学を運営する学校法人立命館と日本マイクロソフト株式会社は8月2日、「連携・協力に関する協定書」を締結した。立命館の大阪いばらきキャンパスに「Microsoft Base Ritsumeikan(MBR)」を設置、クラウドサービスやツールの無償提供などを組み合わせて立命館のスタートアップ支援を拡充する。さらに立命館オリジナル生成AIの「R-AI(仮称)」を開発する。

大阪いばらきキャンパスはTRY FIELDとしてさまざまな挑戦を行う

 立命館の大阪いばらきキャンパス(OIC)で行われた連携の発表では、立命館、日本マイクロソフトから関係者が出席し、Microsoft Base Ritsumeikan(MBR)がOIC内に設置される目的や、今後の活用などが説明された。

 MBRは、立命館のOICに2024年4月に竣工する新棟内に開設する。主な取り組みとしては「人材育成」「スタートアップ創成支援」「新たな学びの創造」とし、学生、教職員だけでなく、地域、自治体、企業の人たちが集うことのできるオープンな場として活用されることを目指す。

2030年に向けた中期計画「学園ビジョン R2030」の「挑戦をもっと自由に」ということから大阪いばらきキャンパスをTRY FILELDとする

 これは立命館が2030年に向けた中期計画「学園ビジョン R2030」「挑戦をもっと自由に」の具体的な取り組み。2024年度は同時に、OICに立命館大学の情報理工学部と映像学部が移転し、それをきっかけに新たな展開に取り組み、大阪いばらきキャンパスはR2030を実現する構想の先駆けとして「TRY FILELD」と位置づけている。

TRY FILEDの概要
立命館と日本マイクロソフトの連携・協力協定の内容

 TRY FILELDでは、新たな学びの創造、クリエイティブな発想の育み、多様なプレーヤーとの協働といったことを日本マイクロソフトとの連携で加速させる。それらが融合し、化学反応を生み出す創造力とイノベーションが生まれるとしているほか、日本マイクロソフトとの連携と協力により、OICの新展開におけるDXを推進するという。

Microsoft Base Ritsumeikanはオープンな場として活用

 今回、OICに「Microsoft Base」の国内初の大学内設置、MBRが開設される理由は、MBRはDX人材育成拠点でもあるが、MBRの設置されるOICは塀がなく地域に開かれたキャンパス。学生や教員だけでなく市民、企業の人たちが一緒に何かを進めることに適した場所だということから。

Microsoft Base Ritsumeikanの設置について

 OICの中にMBRを作ることによって、今まで社会実装まで進めることが難しいとされた、大学内にある教育の素材や、研究の成果を社会に示すことができるとしたほか、社会実装のため、地域社会と多様な接点を持ちながら展開をすることもできるという。そして、オープンな場所だからこそ、できることにも期待している。

Microsoft Base Ritsumeikanだからできること
スタートアップ創生支援もある

 また、OICはこれまで文系の学部しかなかったが、はじめて情報理工学部と映像学部といった理系の学部が来る。学生数も約1万人に増えることで、学生同士のコラボレーションや社会課題に対応するような展開も期待される。さらに、研究の成果を社会実装につなげていくと、スタートアップにもつながるので、その挑戦も後押ししていくという。

新たな学びの創造、立命館オリジナル生成AI「R-AI(仮称)」開発

 生成AIについては、一般的に大学ではレポートに使ってはいけないなど、使い方に迷いが見られる。そこで、立命館は、積極的にAIを開発して進めていく方針を掲げ、日本マイクロソフトとの連携で、生成AIを利活用するDX人材育成を目的とした立命館独自の生成AI「R-AI(仮称)」の開発に取り組む。

立命館オリジナル生成AI「R-AI(仮称)」

 独自に取り組む理由としては、これまでの一般的な生成AIでは、情報漏えいなどの安全性が担保されない、情報が正確ではないといった問題があり、それを解決するため。一般公開していない情報を含む学園内の最新情報を活用し、規定や内部資料を学習させることで精度が高いだけでなく、閉鎖環境で運用するため、内部情報や質問事項などが外部に流出しないなどの特徴がある。

 今回Microsoft BaseがOIC内にあることで、最新のAI技術のサポートを受けるだけでなく、エンジニアと技術的なディスカッションができる場にもすることができ、開発を進められる。なお、R-AIの開発スケージュールは、これから協議をしていくか、開発ができ次第、段階的に公開するとしており、2023年度内にできる部分は公開し、その後はさらにファインチューニングをしていく見込みとした。

社会のあらゆるプレーヤーと手を携えたトライを、このキャンパスで

 説明会では立命館 総長の仲谷善雄氏は「社会のあらゆるプレーヤーと手を携えたトライを、このキャンパスで、そしてキャンパスを飛び出して、社会で、世界で続けていくことを目指している」とOICにMBRを設置することの期待を語った。

立命館 総長の仲谷善雄氏

 今回の連携について「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」という日本マイクロソフトの企業ミッションと、立命館の建学の精神「自由と清新」を紹介し、「ともに新しい時代における課題解決を追及し、社会に向けて積極的に発信していく決意を固めている」と語った。

 また、日本マイクロソフト 執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長の中井陽子氏は「企業ミッションのもと、さまざまなテクノロジーの提供を通して、地域に根付いたDXの推進に取り組む」と語り、今回の連携における日本マイクロソフトの役割として「DX人材育成の拠点創造」「スタートアップ創生支援」「新たな学びの創造」を挙げてグローバルで展開してるマイクロソフトの支援プログラムや、クラウドサービスやツールの無償提供を通して支援していく考えを示した。

日本マイクロソフト 執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長の中井陽子氏
今回の連携における日本マイクロソフトの役割
発表は立命館の大阪いばらきキャンパス。詳細については立命館 常務理事(企画担当)の山下範久氏(右から1番目)と、総合企画室 副室長の三宅雅人氏(左から1番目)が説明した