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旺文社、高校の「ICT活用実態調査2023年版」の結果を公開

1人1台の端末は76.4%に、運用やメンテナンスが課題

株式会社旺文社は、高等学校におけるICT機器・サービスの導入状況および活用の実態について、アンケート調査を実施。ICTの教育利用に関する近年の傾向と課題について、過去の調査データとの比較を交えた分析結果を公開した。今年で7回目となり、全国計786の高等学校から回答を集計した。

【調査実施要領】

  • 調査テーマ:全国の高等学校におけるICT活用状況についての調査
  • 調査目的:高等学校現場におけるICT機器の導入ならびにICT関連サービスの活用状況の実態を調べ、導入拡大・継続運用のための課題や、今後必要とされるサービス内容を把握する
  • 調査対象:旺文社独自リストに基づく全国の国公私立高等学校 計5,068校
    *中等教育学校を含む/高等専門学校・高等専修学校を除く
  • 調査方法:対象校に対してアンケートDMを送付し、FAXおよびWebページにて回答を受け付け
  • 調査規模:全786校からのアンケート回答結果を分析
  • 調査時期:2022年12月上旬~2023年1月上旬
  • 調査発表日:2023年2月28日

■生徒用のモバイルICT端末を導入している高等学校は88.6%、うち「1人1台」配備の割合は76.4%

全国の高等学校で導入・使用されているICT機器についての調査では、「生徒用のPC端末(タブレット型)」が68.5%、「生徒用のPC端末(ノート型)」が36.9%と、モバイル使用可能な生徒用ICT端末の回答が、いずれも前年調査に引き続き高い割合となった。両者回答を合わせて重複を除いたモバイルICT端末の導入率合計は88.6%に上る(図1)。

ICT機器の導入・使用状況(共用のケース含む)

また、生徒の私物端末を教育利用する「BYOD」や、学校が推奨した機種を個人が私費購入して利用する「BYAD」の割合も、41.0%に達して伸び続けている。これら生徒用モバイルICT端末の導入校に対して配備状況の内訳を調べたところ、「生徒1人1台配備」と答えた高等学校の割合は76.4%となった(図2)。

生徒用モバイルICT端末導入校における配備状況

■端末数を課題とする声は大幅に減るが、運用やメンテナンスが課題に

端末配備が進んだことは教員の意識調査にも表れている。ICT端末活用における課題を聞いた調査では、「十分な端末数の配備」の回答割合が12.9%と、直近3年間で大幅に減った(図3)。

一方で、端末台数の増加に伴う運用やメンテナンスに対する負担についての課題や、教員用端末の不足を指摘する声も上がった。

生徒用モバイルICT端末の活用における課題

■校内の無線ネットワークは8割以上で授業化、通信品質への課題も

高等学校におけるネットワーク環境の整備状況についての調査では、「校内のどこでも無線でのネットワークを使用できる」(38.5%)と「校内の通常教室で無線でのネットワークを使用できる」(43.4%)の割合がさらに増え、合計すると、校内の無線ネットワークは8割以上(81.9%)の高等学校で授業利用が可能となった(図4)。モバイルICT端末の配備と同時に、端末をオンラインで日常的に授業利用できる環境の整備が進んでいる。

校内ネットワーク環境の整備状況

一方で、端末活用における意識調査では、「ネットワーク環境の整備」を課題に挙げる割合が48.9%と一定数を占める(図3)。ネットワーク自体には繋がるものの、生徒が一斉に通信利用できないなど、ネットワークの「質」についても課題に上がっている。

■ICT活用による「校内DX」への期待と授業への貢献

ICTの必要性を感じるポイントについての調査では、「校務負担の軽減」(75.7%)、「教材のペーパーレス化」(69.4%)が昨年に引き続き高い割合となり、ICT活用による「校務DX」への期待がうかがえる(図5)。

コロナ禍の影響で休校措置が取られた2020年と比較しても、「リモートでの課題配信」(63.1%)、「生徒や保護者との連絡」(60.4%)などは回答割合が減っておらず、高等学校で恒常的なICT利用が定着していることが裏付けられている。

このほかICT活用に期待を寄せるポイントとして、授業展開の幅を広げて学びを深めることの意義や、2022年4月から共通必修科目となった「情報I」をはじめとする「情報科」授業での活用を挙げる意見も見られた。

ICT活用の必要性を感じるポイント

■ICT活用への手応えと効果的な利用場面の見きわめ

生徒用モバイルICT端末を導入している高等学校では、12.7%が「十分活用できている」、62.1%が「まあまあ活用できている」と答えており、全体の7割以上が利用状況に肯定的となっている(図6)。

生徒用モバイルICT端末の活用状況

一方で、端末活用における課題としては、「教員の活用スキルの引き上げ」(84.3%)が例年調査と変わらず最多で、同時に「活用に適した場面の見きわめ」(54.3%)の回答割合が昨年から増えている(図3)。「学校での活動を盲目的にデジタルへ置き換えるべきではない」と指摘する声も上がっている。

■高等学校におけるMEXCBTの利用率は4.5%

2021年12月より小・中・高等学校での稼働がスタートしたCBTシステム(MEXCBT:メクビット)の利用は、高等学校においてはまだ少数(4.5%)で、公的プラットフォームの普及も今後の課題といえる。

文部科学省CBTシステム(MEXCBT)の利用状況