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旺文社、「高校のICT活用実態調査 2022年度版」の結果を公開

生徒用モバイル端末の配備率は8割超に、BYODも拡大

株式会社旺文社は、高等学校におけるICT機器・サービスの導入状況および活用の実態について、アンケート調査を実施し、過去の調査データとの比較を交えた分析結果を公開した。

調査は2017年から毎年1回実施しており、今年で6回目。全国計805の高等学校から回答を集計した。

調査結果では、生徒用のモバイルICT端末を導入している高等学校が85.8%にのぼることや、生徒の私物端末を教育で利用するBYODを導入する高等学校が38.5%に拡大していることなどが報告された。

・モバイル端末と無線ネットワークの導入が進む
全国の高等学校で導入・使用されているICT機器については、「生徒用のPC端末(タブレット型)」が69.8%と昨年調査から増えた。「生徒用のPC端末(ノート型)」の割合も38.8%と昨年から増え、「タブレット型」と「ノート型」を合わせたモバイル端末の導入率(両者回答の重複を除く)は85.8%に上る(図1)。

図1)ICT機器の導入・使用状況(共用のケース含む)

ネットワーク環境の整備状況については、「校内のどこでも無線でのネットワークを使用できる」(37.5%)と「校内の通常教室で無線でのネットワークを使用できる」(39.1%)の割合が増えた(図2)。

旺文社では2つの結果を合わせて、校内のエリアを限定せずモバイル端末を日常的に授業利用できる環境の整備が進んでいると分析している。

図2)校内ネットワーク環境の整備状況

・BYODが拡大するが課題も
再び図1を見ると、「生徒の私物端末(スマートフォン・PC等)」が38.5%と伸びた。同じモバイルICT端末の「生徒用のPC端末(ノート型)」と同等の割合となっている。

旺文社では、感染症対策による休校措置が取られた2020年以来、生徒に対するリモートでの指導や連絡手段を確保しておきたいとする学校側の意識が、BYODを支持する数字の伸びに表れていると分析している。

一方、校内における生徒の私物端末(スマートフォン等)の使用制限状況について調べたところ、「校内で自由に使用できる」(17.0%)、「学習などの目的であれば校内で自由に使用できる」(28.6%)の回答割合は昨年から微増したものの、全体的な使用制限に係る方針に大きな傾向変化は見られなかった(図3)。

旺文社ではこれについて、ハードウェアの管理面に関する懸念に加え、生徒の情報モラルやコミュニケーションにおける課題意識も反映されていると分析している。

図3)校内での生徒の私物モバイル端末使用について

・生徒1人1台が半数を超える
生徒用モバイル端末の導入校での配備状況としては、「生徒1人1台配備」と答えた高等学校の割合が50.1%となった(図4)。調査開始以来、初めて半数を超えた。

図4)生徒用モバイルICT端末導入校における配備状況

今後に端末の導入予定がある高校では、回答校の82.0%が「生徒1人1台配備」を見込んでいると答えている(図5)。

図5)生徒用モバイルICT端末導入予定校における配備の見通し

教員が利用するICT端末および教務支援サービスについては、「1人1台専用端末があり、個人の判断でどのようなサービスでも利用できる」(19.7%)と「1人1台専用端末があり、決められた範囲のサービスを利用できる」(66.1%)を合わせると、「1人1台専用端末を利用できる」という回答の合計が全体の8割を超えている(図6)。

なお、「1人1台専用端末があり、個人の判断でどのようなサービスでも利用できる」の回答割合を学校種別ごとに分けてみると、国公立高等学校が12.2%、私立高等学校が32.8%と差がある。

図6)教員用ICT端末・教務支援サービスについての運用について

・校務負担の軽減やペーパレス化に期待、教員のスキル引き上げや生徒の情報モラル向上が課題
ICTの必要性を感じるポイントについては、「校務負担の軽減」(82.0%)、「教材のペーパーレス化」(70.7%)の回答割合が昨年から大幅に増えた(図7)。

「リモートでの課題配信」(64.0%)、「オンライン遠隔授業」(54.2%)などの項目は依然として回答割合が高いものの、登校・通常授業のペースが戻って、対面指導における教務面での効率改善や教員の負担軽減に注目が集まったと旺文社では分析している。

ICT活用の必要性を感じるポイント

導入した生徒用モバイル端末の活用状況では、「活用できている」という回答割合の合計が端末導入校全体の7割を超えた(図8)。

ただし、「十分活用できている」(10.2%)の割合が昨年調査時から減少し、「まあまあ活用できている」(60.2%)の割合が増えたことに、ICT活用へのさらなる期待や課題意識が表れていると旺文社では分析している。

なお、活用における課題については、「教員の活用スキルの引き上げ」(85.7%)が過去調査に引き続き最多の回答割合となっている。これについて旺文社では、高等学校内でICT運用が必要となるシーンの増加や、それに伴って求められる知見や技術、サポート体制についての問題が顕在化していることを裏付けていると分析している。

生徒用モバイルICT端末の活用状況

生徒用モバイル端末の活用における課題としては、「生徒の情報モラルの向上」(67.8%)の回答割合が昨年から10ポイント以上増加した(図9)。

そのほか、回答コメントでは、生徒個人の情報リテラシー課題に加え、SNSやチャット機能などを通して生まれがちなトラブルに対し、懸念や危惧を抱く声が多く上がった。

生徒用モバイルICT端末の活用における課題

【調査査実概要】

  • 調査テーマ:全国の高等学校におけるICT活用状況についての調査
  • 調査目的:高等学校現場におけるICT機器の導入ならびにICT関連サービスの活用状況の実態を調べ、導入拡大・継続運用のための課題や、今後必要とされるサービス内容を把握する
  • 調査対象:旺文社独自リストに基づく全国の国公私立高等学校 計5,062校(中等教育学校を含む/高等専門学校・高等専修学校を除く)
  • 調査方法:対象校に対してアンケートDMを送付し、FAXおよびWebページにて回答を受け付け
  • 調査規模:全805校からのアンケート回答結果を分析
  • 調査時期:2021年12月上旬~2022年1月上旬