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知育菓子が授業で使える!五感を使った体験が子供の学びを深める

――「知育菓子授業カンファレンス」レポート

「知育菓子授業カンファレンス」(主催:クラシエ株式会社)では、先生が知育菓子を使って授業アイデアを考案

子供たちに親しまれている「ねるねるねるね」や「ねりキャンワールド」は、作って食べるのが楽しい人気のお菓子だ。数年前からは、その作る過程において、子供たちが楽しみながら成長できる要素があると「知育菓子」としてシリーズ化された。現在は、子供向けに「知育菓子教室」が開催されるなど、食べるだけに留まらない、遊びと学びを兼ね備えたお菓子として新たな境地を開いている。

そんな知育菓子を学校の授業や特別活動に取り入れたり、やってみたいという教育者が増えているようだ。どのような授業が行われているのか、同商品を扱うクラシエ株式会社が2023年10月15日に開催した、教育者向けの「知育菓子授業カンファレンス」をレポートしよう。

知育菓子は「自分で作って」「食べられる」のが魅力

「ねるねるねるね」に代表される知育菓子の魅力は、なんといっても、子供たちが簡単に「自分で自由に作って食べられる」ところにある。粉末を混ぜてカラフルな色の変化を楽しんだり、粘土のようにこねて形をつくったりと幾通りもの遊びが可能。おまけに、お菓子として美味しく食べられるというハッピーエンドな結末が子供心をくすぐっている。

粉末をまぜたり、こねたりしながら遊ぶことができる知育菓子シリーズ

この作って食べる過程において教育的な価値があることに知育菓子と呼ばれる所以がある。見た目や匂いなど五感や好奇心を刺激できること、失敗を恐れずに挑戦できること、コミュニケーションの活性化につながることなど、知育菓子を通して子供の知的好奇心や創造性を育むことができるというのだ。

クラシエ株式会社では、1986年に「ねるねるねるね」を発売し、2007年に「知育菓子」として商標登録した。知育菓子教室などを開催し、子供との関わりを継続していく中で教育的価値に注目し、2021年からは「自信を育む」というコンセプトを掲げて知育菓子を展開。そこから教育関係者の問い合わせが増えたという。現在は24種類のラインナップをそろえており、学校の授業でも活用が広がっていることから、教育機関向けの専用のサイトを立ち上げるなどサポートを充実させている。

カンファレンス会場に並べられた知育菓子

理科、SDGs、特別支援など学びが楽しくなるきっかけづくりに!

ここからは、知育菓子授業カンファレンスに登壇した先生たちの実践内容を紹介しよう。どの先生たちからも、知育菓子を通して学びを楽しくしたい、子供たちの興味を持たせるきっかけにしたいという想いがあふれていて、知育菓子の活用が広がる可能性を感じさせてくれた。

小6理科:アントシアニンで水溶液の性質による色の変化を学ぼう

愛知県江南市立古知野小学校 岩田智文先生

理科専科教員の岩田智文先生は、「水溶液の性質」という小6の単元で「ねるねるねるね ブドウ味」を使った実験のデモを披露した。岩田先生は「ねるねるねるね」について、化学反応満載で理科的な要素が多いと話す。

実験デモでは、アントシアニンを使った「ねるねるねるね」の1番粉に水を入れ、紫から青く変化する様子を解説した。授業のポイントとなるのは、その次に登場する2番粉を混ぜるところで、この単元における学習のねらい「pHによって変化する水溶液の性質」を学ぶ場面となる。岩田先生はここで、子供たちにクエン酸が含まれる2番粉を舐めさせて、酸っぱい体験させた後、混ぜると何色に変化するか、体積はどのように変わるかを予想させるという。

岩田先生による「ねるねるねるね」を使った実験デモ。青くなった状態に2番粉を入れて色や体積の変化を観察

結果、「ねるねるねるね」は酸性で赤く変化すると同時に、ふわふわに膨らみ体積も変化した。岩田先生はこの様子を見せながら「理科教員から見て、『ねるねるねるね』は口に入れても安全な薬品と言ってもよく、子供たちが”舐める”という五感を使って学べることに価値がある」と語った。

さらに、岩田先生は「ねるねるねるね」が個包装になっている点もメリットだと強調。「1人1実験が可能であることは理科において濃い活動につながる。しかも、安全に扱えて、最後は食べて美味しく終わることができるのも良い学習体験になる」と評価した。

小5理科・総合:SDGsの「海の豊かさを守ろう」について学ぼう

聖ドミニコ学園小学校理科主任 松本芳將先生

松本芳將先生は、SDGsの「海の豊かさを守ろう」とプラスチックゴミによる海洋汚染について学ぶ授業に知育菓子を活用した。コロナ禍の学校生活の中でさまざまな制約を強いられていた子供たちに、「何か楽しい体験を与えることができないか」と思ったことが知育菓子を活用するきっかけだったという。

松本先生が使ったのは、海藻由来の素材でできた、手でつかめる水ができる知育菓子「つかめる実感! ふしぎ玉」だ。授業では、海洋プラスチックのゴミ問題などについて学習した後、イギリスの学生が開発した海藻由来の食べられる容器「OoHo(オ-ホ)」を紹介。実際に、ロンドンマラソンで水分補給のための容器として使われたエピソードを取り上げながら、子供たちに「OoHoと似たようなものを、お菓子で作れるよ」と投げかけた。

「つかめる実感! ふしぎ玉」を使って、海洋汚染問題を学ぶ

子供たちは、「つかめる実感! ふしぎ玉」を使って、水を覆うことができる膜の素材を体験。そこから発展して、自然に還元できるプラスチック素材があることを知り、海の豊かさを守るために自分ができることを考えた。授業後のアンケートには「お菓子だと楽しく学習できるからまたやりたい」という声が上がり、大好評だったと松本先生。一方で、学習に食品を扱うハードルは高く、事前にアレルギーの有無について保護者の確認を行うなどの準備が必要だと語った。

未就学児や小学校低学年・特別支援:物語と知育菓子で言語活動

埼玉県立本庄特別支援学校 関口あさか先生

特別支援教育に携わる一方で、絵本・教材作家としても活動する関口先生は、「ねるねるねるね」をモチーフにした絵本を制作した。「ねるねるねるね」の作る過程にストーリーを持たせることで、「子供たちが絵本の世界と同じ体験をし、五感を使って言葉の発達を促せるのではないかと考えた」というのだ。

関口先生が制作した絵本は、妖精が作った魔法の粉と水を使って困った動物たちを助けるストーリー。オノマトペを取り入れた魔法の呪文やふわふわの雲から雨を降らす場面を楽しんだ後、「ねるねるねるね」を使って、触覚・味覚・嗅覚などの五感を使いながら、子供たちが絵本の世界に浸りながら見立て遊びができる活動になっている。関口先生は「離席が多いADHD傾向のある児童が60分間集中を保つことができたほか、普段は積極的ではない児童が率先して参加する姿が見られた」と手応えを語った。

関口先生が制作した絵本と知育菓子を使った活動

また関口先生は「ねりキャンワールド」を使ったコマ撮りアニメの制作も授業で実施した。書くことが苦手な子供たちであったが、専用のワークシートを使ってオリジナルストーリーを創作し、一番見てほしい場面を「ねりキャンワールド」で再現した。「知育菓子を使うことで、子供たちから“もっとやりたい”という声があがったり、ワクワク感を刺激できたことがよかった」と関口先生。自分でできたという達成感が自己肯定感にもつながると学習の成果を語った。

ほかにも授業実践の発表では、上記3名の先生に加えて、高崎健康福祉大学 村田美和先生、静岡サレジオ高校 吉川牧人先生、佐賀県多久市立東原庠舎中央校 福島学氏も実践を発表した。

村田美和先生(高崎健康福祉大学 人間発達学部 子ども教育学科 講師)。読み書きの学習障害を抱える子供たちを対象に、「つかめる実験! ふしぎ玉」を使ったワークショップを実施。勉強に対して強い拒否反応が見られる子供たちだったが、「理科xお菓子」には興味を示した。「知育菓子は学習に対して強力な動機付けになる」と村田先生
吉川牧人先生(静岡サレジオ高校 世界史教諭)。世界史で「ねりキャンワールド」と「おえかきグミランド」を活用。風刺画や史実を立体的に表現し、動画にまとめて発表した。「五感を使って立体的に表現することが、こんなにも楽しいと思わなかった」という生徒の感想を紹介し、歴史を3次元で捉えることで学びの視点を広げると語った
福島学 氏(佐賀県多久市立東原庠舎中央校 教諭 ICT支援員)。約200組の親子を対象に「ねりキャンワールド」を使ったワークショップを実施。作品づくりを通して、親子が対等に会話できる点が知育菓子の魅力であり、子供もしっかり意思表示をするという。最後は美味しく食べられて、失敗がないことも知育菓子を使うメリットだと福島先生

図工や数学、先生たちが考える知育菓子を使った授業のアイディアソン

後半は、カンファレンスに来場した先生たちがグループを作り、実際に手を動かしながら知育菓子を活用した授業を考えた。使ってみたい知育菓子を自由に選び、作り方や遊び方を試しながら、授業で使える場面を考えていく。先生たちは真剣そのもの。知育菓子を混ぜたり、食べたり、組み合わせたりしながら、子供たちの学びがどうすれば楽しくなるか、教材研究として取り組んでいた。

知育菓子を真剣に選ぶ先生たち
パッケージ裏に書かれた作り方・遊び方を確認
混ぜたり、食べたりしながら、授業のアイデアをワークシートに書き込んでいく

参加者のひとり、新宿区立落合第二小学校 図工専科 関口友美先生は、小4図工の「元気のおまもり」という単元で、「ねりキャンワールド」を使った制作を考案。「今までは紙粘土を使っていたが、知育菓子を使うことで、自分が作った元気のおまもりを食べて、元気のパワーを取り込めるという体験を加えられるのがメリット」と話す。また、気軽にスーパー等で手に入る知育菓子を使えば、自宅でもくり返し制作を楽しめる良さがあると語った。

新宿区立落合第二小学校 図工専科教諭 関口友美氏は、小4図工「元気のおまもり」の単元で「ねりキャンワールド」を使う授業を発表

サレジオ学院中学校・高等学校 数学科 山田邦彦先生は、中3数学の「標本調査」や「統計的推測」の学習において、スポイトで大量の粒ゼリーを作れる知育菓子「どどっとつぶぴょん」を活用した授業案を発表した。出来上がった大量の粒ゼリーを見て、何粒あるのかを数学的に推測するという学習で、定量の水と粉、付属のスプーンに入る量などから数値を求めていく。「教科書通りに統計を学ぶだけでは面白くない」と山田先生。数学を使って導き出そうとする意欲を刺激したいと述べ、知育菓子なら生徒たちも白熱しそうだと語った。

サレジオ学院中学校・高等学校 数学科 山田邦彦先生は、「どどっとつぶぴょん」を活用した中3数学の「標本調査」や「統計的推測」の授業を発表

授業で「お菓子」を扱うのはむずかしい。保護者への説明は?管理職の許可は?

このように授業でさまざまな活用ができる知育菓子であるが、お菓子である以上、学校の授業で扱うのはむずかしいのも事実としてある。来場者からは、食べ物のアレルギー反応を持つ子供やその保護者への対応、また管理職への説明など質問も飛び出した。

関口先生は食べ物のアレルギー対策として「年度当初に提出してもらうアレルギー申請書で確認したり、アレルギーのある子には個別に保護者に成分表などを示して問題がないか確認した」と話す。一方で、岩田先生はアレルギーのある子供が学年に1人だったので、直接保護者に電話をかけて許可をもらったと述べた。

また、乳製品のアレルギー物質を含む「ねりキャンワールド」とアレルギー物質のない「おえかきグミランド」の2種類を用意したと話すのは吉川先生だ。アレルギーのある生徒は「おえかきグミランド」を使用して創作を行った。さらに授業では衛生面にも配慮し、机の上には白い紙を敷き、手は洗って消毒をしてから手袋とマスクをつけて作業を行ったという。

ほかにも、管理職へどのように説明したのかという質問もあがった。岩田先生は「理科の水溶液の単元で、発展的な学習として使用したい。知育菓子なら舐めるという体験ができる」と正攻法で説明し許可をもらったと語った。吉川先生も同様に、教科や単元のねらいに合わせて説明。関口先生は、学校内に知育菓子を使いたい仲間を増やしてハードルを下げていったと語り、知育菓子という新しいものを学校に取り入れる知見を共有した。

会場からは具体的な活用に向けた質問も飛び出した

子供たちの自己肯定感や自信を育めるお菓子でいたい

クラシエ株式会社 執行役員 フーズカンパニープレジテンド 橋本光央氏

先生の実践発表を受けて、クラシエ株式会社 執行役員 フーズカンパニープレジテンド 橋本光央氏はそれぞれの取り組みの素晴らしさに触れ、「知育菓子は失敗を楽しむお菓子であり、小さな挑戦と小さな失敗を繰り返すことで、次の成功につながる学びが生まれている」と語った。また、カンファレンスを通して多くの先生たちと意見を交わし、知育菓子に関する新しい課題やアイデアがたくさん生まれたと今後につながる発言も残した。

クラシエ株式会社 フーズカンパニー マーケティング室 菓子部長の菊池光倫氏

カンファレンスの進行を務めたクラシエ株式会社 フーズカンパニー マーケティング室 菓子部長の菊池光倫氏は、「知育菓子が子供の個性を伸ばしたり、失敗を楽しめたりするきっかけとなり、子供たちの自己肯定感や自信を育めるお菓子でいたい」と想いを語った。正解がひとつとは限らず、予測困難な時代に突入したが、子供たちが自ら課題を見つけ、学び、考えて行動する「生きる力」をお菓子でも育めるよう実現していきたい、そんな想いが知育菓子に込められていると述べた。

カンファレンスに登壇した先生とクラシエ社員

知育菓子を前にした子供たちが、わくわくしながら学習に向かう様子は容易に想像がつく。また、子供たちの学びを楽しくしようと知育菓子に真剣に向かう先生の姿も新鮮で、見ていてわくわくする。さまざまな授業の中で、”食べる”という五感を刺激する場面が生まれたり、知育菓子で失敗を楽しめたりすることも、子供たちの学びを豊かにするのは間違いない。「知育菓子の授業が楽しかった!」と話してくれる子供たちの姿に、教材としての可能性を感じる。

「知育菓子」はクラシエ株式会社の登録商標です。

知育菓子 授業教材 ONLINE SHOP
今回紹介した知育菓子先生たちの授業の指導案や絵本、ワークシートなどは、「知育菓子 授業教材 ONLINE SHOP」のサイトで購入者特典として公開されています。授業ですぐに活用したい先生にはお勧めのコンテンツとなっていますので、ぜひこの機会にご覧ください。

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