【連載】EducAItion Times

ハーバード式思考ルーティンをGeminiで体験!新年度の一歩を言葉にしよう

EducAItion Timesは、「大人のきぼう こどもの未来」をテーマに、生成AIの活用情報をお届けします。本連載は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」のメンバー8名が運営するもので、子供たちの好奇心を刺激する、新たな学びの提供をめざしています。

「うちの子、将来の夢を聞いてもぼんやりしちゃって……」

そんな経験、ありませんか。新年度が近づくと、子供の「これからどうしたい?」について改めて向き合いたくなる保護者の方は多いと思います。でも実は、夢を答えられないのは、やる気がないからでも、考えていないからでもありません。

自分をどう言語化したらいいかわからない、それだけなのです。言葉を持てば、思考が動きます。思考が動けば、探究が始まります。探究が始まれば、一歩踏み出す力が生まれます。

今回は、ハーバード大学教育大学院が60年かけて研究してきた「思考ルーティン(Thinking Routines)」に着想を得て、 生成AI「Gemini」を組み合わせた考え方の習得法 をお届けします。特別な準備は不要。スマートフォンかパソコンがあれば、今日からでも始められます。

Harvard Project Zero「思考ルーティン」とは

Harvard Project Zero(プロジェクト・ゼロ) は、1967年にハーバード教育大学院が設立した教育研究機関です。「どうすれば人はより深く、よりよく考えられるか」を探求し続けており、現在は80種類以上の「思考ルーティン」を無料公開しています。

思考ルーティンとは、「学習者の思考を助け、思考プロセスを外に出すための、短い問いの連続」です。「何が見える?」「それを見て何を考える?」「何が不思議?」。たったこれだけの問いが、子供の内側に眠っていた言葉を引き出す鍵になります。

世界中の学校で実践されており、研究によって「 批判的思考力の向上 」「 好奇心の促進 」「 メタ認知の発達 」「 長期的な思考習慣の定着 」などの効果が実証されています。

今回は、この80種類の中から、親子の新年度にぴったりの3つを厳選しました。そしてそれぞれに、Geminiを使ったハンズオン実践をセットにします。

思考ルーティン① See-Think-Wonder (見る・考える・不思議に思う)

最初は、「See-Think-Wonder」と呼ばれる思考ルーティンです。この思考が育むものは、 観察力・解釈力・好奇心 の3つ。方法は、絵でも写真でも、何かを「じっくり見る」ところから思考が始まり、子供が「なんで?」と自然に口にする瞬間を作り出します。

入門として最も使いやすい思考ルーティンで、以下のような、声がけを行います。

問い子供への声がけ例
👁️ See「何が見える?」「この写真の中に何があるか、思いつくだけ全部言ってみて」
💭 Think「それを見て何を考える?」「それを見て、どんなことを思う?なんでそう思ったの?」
✨ Wonder「何が不思議?何を知りたい?「これについて、もっと知りたいことや気になることはある?」

ポイントは「正解を求めない」こと 。 親は評価者ではなく、一緒に驚く「 共同探索者 」になってください。

この3つの問いかけ、実はGeminiに手伝ってもらうと、ぐっとやりやすくなります。 子供の年齢に合った問いを自動で作ってくれるので、「何を聞けばいいかわからない」という親の不安も解消できます。さっそく試してみましょう。

Geminiハンズオン①:写真から「自分の気になること」を発見する

写真から「自分の気になること」を発見する(画像:筆者提供)

準備するもの:
・スマートフォンまたはパソコン
・Gemini(Googleアカウントがあれば無料で使用可)
・子供が「好きなもの」「気になるもの」の写真1〜3枚

STEP 1:写真をGeminiに送る
Geminiのチャット画面を開き、写真をアップロードします。そして、以下のプロンプトを入力してください。

プロンプト例①(子供向け See-Think-Wonder)
この写真を使って、小学生の子供と一緒に「See-Think-Wonder(見る・考える・不思議に思う)」というワークをやります。

子供が答えやすい質問を3段階で作ってください。
・見える(See):写真の中にあるものを観察する問い
・考える(Think):感想や解釈を引き出す問い
・不思議(Wonder):「もっと知りたい!」を引き出す問い

子供の年齢は( )歳です。答えは1つではなく、どんな答えも正解になるようなオープンな問いにしてください。

STEP 2:子供と一緒に答えを出す
Geminiが出してくれた問いを親が読み上げ、子供が答えます。このとき親も一緒に答えると、対話がぐっと深まります。「お父さんはこれが気になった!」という一言が、子供の発言を引き出すきっかけになります。

STEP 3:「Wonder(不思議)」をGeminiに深掘りしてもらう
子供が「なんで○○なんだろう?」と言ったら、それをそのままGeminiに聞いてみましょう。

プロンプト例②(Wonder の深掘り)
私の子供(○歳)が「なぜ○○なの?」と疑問を持ちました。
この疑問をさらに面白くする、関連する問いを3つ作ってください。
子供がもっと探究したくなるように、すぐに答えが出ない「深い問い」でお願いします。

「なぜ?」が連鎖する体験が、探究テーマの種になっていきます。

思考ルーティン②I Used to Think… Now I Think… (以前の自分と今の自分)

この思考ルーティンは、 振り返り力・変容の自覚・自己理解 を育み、新年度の切り替わりに最適なルーティンです。「I Used to Think… Now I Think…(以前はこう思っていた、でも今はこう考える)」というシンプルな思考のフレームを使って、自分の変化を言葉にするものです。

以下のように、「以前の自分」と「今の自分」を比べることで、成長を可視化し、自己認識が深まります。

📝 「以前は______だと思っていた」
📝 「でも今は______だと思う」
📝 「なぜ変わったかというと______」

たとえば、「お母さんも昔は料理が苦手だと思ってたんだけど、今は得意なものが少しできるよ」という具合に、親が先にやってみせることが重要です。 親の自己開示が、子供の心を開く鍵になるでしょう。

Geminiハンズオン②:1年間の振り返りを「成長の言葉」に変える

1年間の振り返りを「成長の言葉」に変える(画像:筆者提供)

準備するもの:
・ 子供の今年1年の出来事・思い出(箇条書きでOK)

STEP 1:1年間の出来事をメモする
子供と一緒に「今年起きたこと」を思いつくまま付箋や紙に書き出します。うれしいこと、もやもやしたこと、初めてできたこと、なんでもOK。

STEP 2:Geminiに「変容」を引き出してもらう

プロンプト例③(振り返りインタビュー)
私の子供(○歳)の今年1年間の出来事を伝えます。

【今年起きたこと】
・(ここに箇条書きで記入)

これをもとに、子供が「自分はこう変わった」と気づけるような振り返りの問いを5つ作ってください。

「以前はこう思っていたけど、今はこう思う」という変化に気づくための問いにしてください。
子供が自分の言葉で答えられるよう、優しく聞いてあげるような質問でお願いします。

STEP 3:「以前の自分→今の自分」を1枚の言葉にまとめる
子供の答えをもとに、Geminiに以下を依頼します。

プロンプト例④(成長の言葉カード)
子供が以下のように答えてくれました。

【子供の言葉】
「以前は○○だと思っていた。でも今は△△だと思う。
なぜなら□□があったから」

これを子供への「成長メッセージ」として短くまとめてください(3〜4文)。
「あなたはこんなに成長したんだよ」という温かいトーンでお願いします。

このメッセージを印刷して渡すだけで、子供の表情が変わります。Nano Banana Proを活用して、画像として出力し、親から見た「成長の証明書」を手渡す体験をすれば、さらに次の一歩への勇気になります(NanoBanana Proの使用方法は、こちらの記事を参照)。

思考ルーティン③ Compass Points (東西南北で考える)

Compass Pointsとは、コンパスのように東西南北の4つの視点から物事を整理し、考えを深める方法です。この思考ルーティンは、 多角的思考・意思決定力・新年度の目標設定 に有効です。「やりたいこと」をただ書くのではなく、ワクワク・不安・疑問・行動を4方向で整理することで、より現実的で自分らしい目標が見えてきます。

以下のような、4つの問いを考えます。

・E(East=Excited) 何にワクワクする?
・W(West=Worrisome) 何が心配・不安?
・N(North=Need to know)もっと知りたいことは?
・S(South=Step/Stance)最初に踏み出す一歩は?

Geminiハンズオン③:新年度の「自分だけのコンパス」を作る

新年度の「自分だけのコンパス」を作る(画像:筆者提供)

準備するもの:
・子供が「やってみたい」と言ったこと、または「気になること」

STEP 1:子供に「やってみたいこと」を1つ選んでもらう
See-Think-Wonderで出てきた「Wonder(不思議に思ったこと)」がそのまま材料にもなります。なければ「来年やってみたいことって何かある?」と気軽に聞いてみてください。

STEP 2:GeminiでCompass Pointsの問いを展開する

プロンプト例⑤(Compass Points ワーク)
私の子供(○歳)が「○○をやってみたい」と言っています。

Harvard Project Zeroの「Compass Points」という思考ルーティンを使って、この興味を深掘りします。

以下の4つの問いを子供に聞いてあげてください。答えやすい言葉で、子供に語りかけるように書いてください。

・E(Excited):何がワクワクする?
・W(Worrisome):何が心配や不安?
・N(Need to know):もっと知りたいことは?
・S(Step):明日1つだけできることは何?

〇歳の子供でも答えやすい、具体的でやさしい問いにしてください。

STEP 3:「S(Step)= 明日できる最小の一歩」を決める
Geminiが提案した行動候補の中から、子供自身が1つ選ぶことが大切です。親が選んでしまうと、「やらされ感」が生まれてしまいます。選択の主導権を子供に渡してください。決まったら、親も「私も明日○○やってみる!」と宣言してみましょう。親子で約束カードを交換するだけで、それは立派な「新年度の第一歩」になります。

まとめ:AIは「親子の思考を橋渡しする道具」

今回ご紹介した3つの思考ルーティン×Geminiのセットは、どれも難しいツール操作は必要ありません。

ルーティン育てる力AIの役割
See-Think-Wonder観察力・好奇心問いの生成・Wonder の深掘り
I Used to Think…振り返り力・自己理解変容の可視化・成長メッセージ生成
Compass Points多角的思考・行動力選択肢の展開・最小ステップ設計

大切なのは、AIに答えを出させるのではなく、AIを「 間に挟む翻訳者 」として使うこと。Geminiがいることで、「どんな答えも正解」という雰囲気が自然に生まれます。そしてその安心感が、 子供の本音を引き出す鍵になります

新年度は、子供に「夢を決めさせる」ことよりも、「 自分の言葉を持たせること 」から始めてみませんか。その言葉の積み重ねが、やがて子供だけの探究テーマになり、一歩踏み出す勇気に育っていきます。ぜひ今夜の夕食後、スマートフォンを一つ持って、「これ何が見える?」と子供に聞いてみてください。それだけで十分です。

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IKIGAI lab.

140名のメンバーが所属する生成AIコミュニティ。監修:髙橋和馬・田中悠介。編集:新谷信敬。

金海 俊

3児の父として子育てと学びの現場からAI時代の教育を創造中。化学メーカー研究者。生成AIを活用した教育・キャリア支援から新規事業伴走まで幅広く取り組む。