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Google、無料で使える小学校向けプログラミング教育カリキュラム「CS First」を公開

小学3年~小学6年向けに授業で使えるコースも用意

Googleは3月1日、小学校のプログラミング教育を支援する、コンピュータ サイエンス教育のカリキュラム「CS First」を公開したと発表した。

2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されたが、特定非営利活動法人みんなのコードが Google.orgの支援のもと調査した、国内の学校教育における「プログラミング教育実態調査」によると、7割を超える子どもたちが、プログラミングを楽しんでいるという好意的な結果が出ている一方で、教員の専門性の不足、指導・授業展開の難しさなどが課題としてあがっている。

そのためGoogleでは、小学校におけるプログラミング教育実践のさらなる支援に向けて、Scratchを活用したコンピュータ サイエンス教育のカリキュラム「CS First」を日本向けに公開した。

今回公開したCS Firstのベースとなっているのは、2014年に北米で開始したカリキュラム。100か国以上、200万人以上の子どもたち、7万人以上の教員が利用している。日本で公開するにあたり、日本のプログラミング教育に即した内容を新たに開発した。

授業で使えるコースを用意

CS First は、小学校3年生から6年生向けに設計された、使いやすい無料のコンピュータ サイエンス教育カリキュラム。教員は同カリキュラムで、CS Firstウェブサイト内の、Scratchコードエディタの特別バージョン「Scratch for CS First」を使って子どもたちにプログラミングの基礎を教えることができる。

CS Firstの画面

ブラウザ上から誰でも無料で利用することが可能なうえ、教員向け機能として、Google Workspace for EducationもしくはCS FirstのアカウントからログインしてCS Firstのクラスを作ることで、児童生徒の進捗状況やプログラムを確認することもできる。CS First上で作ったScratchプロジェクトは、児童生徒と教員間でのみ共有も可能。

児童生徒の進捗状況やプログラムも確認できる

また、Google Workspace for Education のアカウントを持っている場合は、Google Classroom からのクラスの取り込みもできる。「実際の画面を見てもらうと、画面中央に、説明やカリキュラムなどを表示する部分が設けられ、通常のScratchでプログラムをする画面とは異なっている」(Google合同会社 コンピュータサイエンス教育プログラム マネージャ・鵜飼佑氏)

CS Firstの画面上で説明やカリキュラムを表示。画面を行ったり来たりする操作は不要

さらに、日本版開発にあたっては文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引き 第三版」を参考に、日本のプログラミング教育にあった2つのコースを用意している。

Scratch for CS Firstでプログラミングをはじめよう」は、主に3年生以上のScratchを触ったことがない小学生を対象にしたコース。プロジェクトを作りながら、Scratchの基礎やプログラミング的思考のベースとなるようなプログラミングの基礎(順次・繰り返し・条件分岐・イベント等)が学べる。

プログラミングによって動かす「順次」、クリックすると何かが起きるプログラムを作る「イベント」、アニメーションのカードを作りながら学ぶ「繰り返し」、町を探検しながら学ぶ「条件分岐」という4つのステージが用意されている。

「Scratch for CS Firstでプログラミングをはじめよう」のコース

私たちのまちのよさをプログラミングで広めよう」は小学校5年生、6年生を対象に、総合的な学習の時間における探究的な学びとして、自分のまちの魅力を紹介するプログラミングに挑戦するコース。課題設定からまとめまで、学習全体は12時間程度を想定しており、プログラミングは3時間から6時間程度で、アニメーション、クイズ、地図アプリのいずれかを選び、自分のまちの魅力を紹介するプログラムを開発する(詳細は指導案を参照)。

「私たちのまちのよさをプログラミングで広めよう」のコース

Googleでは、CS Firstに関するサポートページも用意。操作方法や授業で使えるデジタル教材など、さまざまなサポートを取りまとめている。さらに、「CS Firstを活用した、プログラミング教育実践」と題したオンライントレーニング講座も用意。プログラミング教育に不慣れな教員をサポートしていく。

体験した教員の声は?

GoogleではCS Firstの公開に先立ち、小学校での実践に取り組んだ。その体験者として、山梨県甲府市立大国小学校の和地勲教諭、早川薫教諭が説明会で登壇した。

和地教諭は「物事を筋道立てて考えるのに、プログラミング教育は有効」と考え、以前からプログラミング教育に取り組んできたと話す。一方、早川教諭は、プログラミング教育の経験がない中、CS Firstで初めてプログラミング教育に取り組むこととなった。

早川教諭は、「和地先生のクラスでCS Firstを利用しているのを見て、子どもとたちがとても楽しそうで、自分も使ってみたいと考えました」と語る。「私自身、プログラミング教育に詳しいわけではなく、教えることに自信がなかったのですが、CS Firstは事前にカリキュラムが組み込まれているので、私でも問題なく利用することができました。子どもたちも、手順通りに進めていくことができるので、サクサクと利用していました」(早川教諭)。

和地教諭は「私たちのまちのよさをプログラミングで広めよう」のコースを利用。「甲府の良さを広めるというゴールに向け調べ始めたのですが、クイズや地図アプリで表現するためにはどんな情報が必要かを念頭に置いて調べることが自然にできました。工夫次第で、レベルアップしていくことを体感しながら学習していったので、こちらが指示を出さなくても試行錯誤を続けている様子がとても印象的でした」と和地教諭は語った。

プログラミング教育では、プログラムを作ることが目的になってしまい、本来の目的から離れてしまうことが問題だと感じていたという和地教諭。CS Firstは本来の目的に向けて、自然にプログラミングを行なる点が良いと述べた。