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全国自治体初、高知県が独自の学習eポータル開発をスタート

Google Workspace for Education Plusを導入して基盤構築

Googleは3月17日、高知県が構築した学習支援プラットフォームと、スタディログを活用する個別最適な学びを実現するための取り組みを紹介した。

高知県では、令和2年度にGIGAスクール端末としてChromebookを採用し、小・中学校に1人1台環境を整備した。令和3年度には、県費で県立高校の1人1台環境も実現し、合計6万6000台の端末が稼働している。

またGoogle Workspace導入し、全市町村、全県立学校で同一ドメインIDの発行と運用を開始した。さらには、小学校から高校までの学習データの連続性を確保し、途切れのない学びをめざして、Google Workspace for Education Plusを導入。Google Cloudを利用した高度なデータ分析基盤を構築し、そのデータを分析することで、個別最適化した学びの実現をめざす。

高知県教育委員会事務局 教育政策課 チーフ 情報政策担当 武市正人氏

高知県教育委員会事務局 教育政策課 チーフ 情報政策担当の武市正人氏は、「高知県が目指す学びとは、ICTを使うことで多様性を実現すること。さらに、スタディログを活用することで様々な効果を期待している。特に期待しているのは、子どもの伸びを実現すること」と説明する。

しかし、この目標を実現していくためには課題もある。蓄積したデータの管理や、小学校から中学校、高校と異なる学校間で行なうデータ共有、ほかにも、データ分析結果をどのように授業と結びつけるのかといったことも課題だ。

さらに、同じ高知県内であっても自治体によって財政状況が異なるほか、地域や学校によってICT活用に対する意識も違う。こうした課題を解決しながら、県内で同じようにデータ活用できる学習環境をどのように提供していくのか。

課題を乗り越える施策のひとつとして誕生したのが、高知県が独自に開発した学習eポータル「高知家まなびばこ」だ。通常、学習eポータルは民間事業者が開発したものを活用し、ここから文部科学省が開発したCBTシステム「MEXCBT(メクビット)」にアクセスして利用する。

しかし、高知県では各種デジタル教材のハブになる学習eポータルが高知県が目指す学びを実現する鍵となると考え、独自の学習eポータルを開発した。

開発は高知県教育委員会が主体となり、外部のシステム委託事業者と共に行なった。今後、学校現場へのフィードバックを行なう計画だ。

高知家まなびばこは、児童生徒が自分で学ぶことを支援する機能、教員が教材を選び、活用していくための機能、児童生徒が配布した教材への回答を自動集計して学習の履歴などを記録する機能、児童生徒が登校時の気持ちを送信することで教員が気持ちに気づくための機能などを持つ。

「高知家まなびばこ」に設けられた機能

高知家まなびばこに収録された県が作った教材については、令和3年4月から運用を開始している。学習eポータルについては、令和4年中に開発を完了する予定となっている。

高知県がもう一つ重視しているのが学習実績を蓄積するスタディログだ。高知家まなびばこを中心に置いて、デジタルツール、デジタルドリル、校務支援システム、ダッシュボードを活用して学校での学びを可視化して連携することを模索する。

高知県がめざすスタディログの活用

「スタディログの活用によって、児童生徒がつまずいている部分を確認できるほか、学年を遡っての検証も可能となる。さらに学年全体でつまずいている児童生徒が多いことが明らかになった場合には、その学年全体を底上げするような指導ができる」と武市氏。児童生徒の状況を的確に把握し、デジタル教材の強みを活かした学習ができるというのだ。

その一方で、スタディログの活用には、個人情報の漏洩や、児童生徒の同意なくデータが活用されないこと、校種間のデータ引継ぎで不利益にならないようにするなど留意すべき点も多々ある。

「スタディログ活用にあたっては、必ず本人に確認を取り、利益につながるような活用を進めていかなければならない」と武市氏は指摘する。

将来的にはデジタル教材の特性を活かし、教員が児童生徒のスタディログをもとにした指導を行なう体制の実現を目指していく。「教員が児童生徒、一人一人に適した学びを提供していくことを目指したい。AI活用の前に、ビッグデータを活かしていかに学びに反映させるかなど、色々な方の意見を聞きながら取り組んでいきたい」と武市氏は述べた。