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三菱グループが支援する教育改革、社会が求めているのは“心のエンジン”を動かし探究するチカラ

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高校生の心のエンジンを駆動する、三菱みらい育成財団が探究学習を支援

2022年4月から、全国の高校で新科目「総合的な探究の時間」がスタートした。高校に限らず、昨今は小中学校でも「探究学習」に取り組んでいる学校や教員も増えているが、保護者の中には、“具体的に何をやっているのかよくわからない”という人も多いだろう。

そうした中、一般財団法人三菱みらい育成財団(以下、三菱みらい育成財団)は、三菱創業150周年記念事業として三菱グループ各社が総事業費100億円を拠出し、高校の探究学習にフォーカスした助成事業を2020年から実施。同財団が支援する、高校生の「心のエンジンを駆動させる」探究学習とは、どのようなものなのか紹介しよう。

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『教育が変われば、社会が変わる 三菱グループの教育財団が本気で教育に取り組んで見えてきたこと』(構成・執筆:崎谷 実穂、取材協力:一般財団法人三菱みらい育成財団)
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高校の探究学習、課題は資金不足と専門家との交流の創出

今の高校生が活躍する将来の世の中は、先行き不透明で予測が困難なVUCA時代(※)と呼ばれている。そんな時代を生き抜くためには、学力だけでなく、自ら課題を発見し、主体的に考え、周囲を巻き込みながら対話的に解決に向かう力が求められている。そうした能力を育むことを目的としたのが「総合的な探究の時間」で、教科や科目の枠を越えて、生徒自身が課題を設定し、解決しながら学んでいく。

※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つのキーワードの頭文字を取った言葉

そんな高校の探究学習であるが、2つの課題があると言われている。

1つは資金面。教科書に沿って行なわれる教科学習に対して、探究学習には決められた枠組みがない。探究活動の過程では、フィールドワークや外部との交流、必要な機材やツール、教材や資料の購入など、学びを深めれば深めるほど費用が必要になる場面が増える。「探究学習は、本格的にやろうとするとお金がかかる」と語る学校関係者も少なくない。

三菱みらい育成財団の助成先に選ばれた埼玉県立浦和第一女子高等学校、探究学習の様子

2つ目は、外部の専門家との交流やつながり。生徒が取り組みたい課題やテーマに対して、さらに学びを深めていけるよう、その領域の専門家とつながる機会などが求められている。

また、それ以前に、生徒の興味・関心を広げるという意味においても、学校外の専門家や企業との交流は、外の世界を知る貴重な経験だ。探究学習といっても、「そもそも何が課題かよくわからない」という生徒も多い。それが外部との交流を通して学校の中だけでは得られない刺激を受けながら、自分の興味・関心を広げ、“課題の種”を見つける。そんな機会を与えていくことも必要だろう。

東京から講師を招き、ゼミ形式のセッションを行う宮城県仙台第二高等学校

三菱グループがめざす教育システムの変革、未来のリーダーを育てる

こうした高校の探究学習が抱える課題、ひいてはこれからの日本を支える人材の育成と社会課題に着目したのが、三菱みらい育成財団だ。

同財団は、三菱グループ創業150周年記念事業として2019年に創設された。その目的は、創業以来の経営理念である「所期奉公(期するところは社会への貢献)」に沿った社会貢献にある。

同事業を進めるにあたり、三菱グループ各企業のトップが集結し、現代社会の課題を洗い出したところ、「少子高齢化とそれに伴う国力の低下」「社会的格差の広がり」「地方の衰退」が挙げられ、それらを解決するためには、次世代の若者を育てる必要性を認識。「型にはまったキャリアを歩もうとするのではなく、もっと自由な発想で革新をもたらす人材が必要」という想いから、教育事業に焦点を定めたという。

財団事務局は、効果的な助成とは何かを探るために教育関係者へのヒアリングを実施。そこで、高校から大学にかけての時期の教育に課題があると実感し、助成の対象を15歳から20歳に決定した。

その中で重視されたのが、生徒たちの内面に働きかけ、「心のエンジンを駆動する」ということ。単に教育プログラムを提供するのではなく、生徒たちが学びを通して「心のエンジン」を動かし、自身の求める未来やありたい姿に向けて、自ら学びの機会を作り、学ぶことによって変化し続ける。そんな教育事業の提供をめざして、高校の探究学習に着目した。

三菱みらい育成財団が教育事業で重視した「心のエンジンの駆動」

ゆえに、三菱みらい育成財団の活動は、ただ助成金を支給するのではなく、教育を変えることを目的としている。活動期間を10年と定め、助成金を渡して終了ではなく、助成先である学校・事業者が自走できる仕組みを作ることで、教育システムそのものを改善することに全力を投じている。

具体的には、下記5つのカテゴリーでプログラムを募集し、支援している。

  • カテゴリー1
    高等学校などが学校現場で実施する「心のエンジンを駆動させるプログラム」
  • カテゴリー2
    教育事業者等が行うより先進的、特徴的、効果的な「心のエンジンを駆動させるプログラム」
  • カテゴリー3
    卓越した能力を持つ人材を早期に発掘育成する「先端・異能発掘・育成プログラム」
  • カテゴリー4
    大学・NPO等で行う、「21世紀型 教養教育プログラム」
  • カテゴリー5
    「主体的・協働的な学習(心のエンジンを駆動させる学習)を実践できる教員養成・指導者育成プログラム」

高校生だけでなく、教育事業者や大学、教員への助成、さらに突出した能力を持つゆえに“浮きこぼれて”しまう学生の活動を支援するという重層的なカテゴリー構成から、日本の教育システムを変革する財団の本気度が伝わってくる。

全国の高校で広がる、心のエンジンを駆動させるプログラム

ここからは実際に、三菱みらい育成財団の助成を受けた高校の事例として、2020年に採択された、徳島県立池田高等学校(以下、池田高校)の取り組み「対話による阿波池田シビックプライド探究プロジェクト」を紹介しよう。

池田高校がある徳島県三好市は、高齢化率が50%を超え、人口減少も深刻化した地域。一方で、吉野川の大歩危・小歩危をはじめとする観光資源があり、観光庁から認定を受けた「観光圏」の1エリアである「にし阿波」に含まれる、自然と文化背景に恵まれた土地だ。

そんな環境で学ぶ生徒たちに対して、同校の教員たちが望んでいたのは、「恥ずかしがり屋が多い生徒たちのために、外部の人と対話できる機会や経験を与えてあげたい」というもの。池田高校は、公共交通機関がほとんどない場所にあることから、生徒たちが学校の外で学習するのも、また、外部から講師を呼ぶのも、交通費がかかるというネックがあり、外とのつながりを作るのがむずかしかったという。

そこで、三菱みらい育成財団に応募し、交通費などの探究学習にかかる費用を獲得。生徒たちは将来の地域創生の担い手になることから、地域住民との対話や協働を通して「にし阿波」の魅力に気づくプロジェクトに取り組んだ。

徳島県立池田高等学校「対話による阿波池田シビックプライド探究プロジェクト」(対象者:483名、助成額:200万円)

具体的には、同校の普通科と探究科、それぞれでプロジェクトを実施。普通科では、早稲田大学の学生による地域創生プロジェクトのワークショップに参加したことをきっかけに、三好市の「音」を新しい観光資源としてSNS等で配信するという「ASMRみよしの音」のプロジェクトに取り組んだ。また、もうひとつの「酒粕プロジェクト」では、多数の地元企業の協力を得て、廃棄される酒粕を使ったお菓子を開発。その成果を市役所職員や企業の社員に向けてプレゼンし、発表に対する指導・助言を受けた。

探究科では、1年次に「RESAS(地域経済分析システム)講演」を聴講し、人口減少の地域で自分たちは何ができるのかを考えた。2年次は、大学の「にし阿波の傾斜地農耕システム」調査活動に参加し、論文の執筆にも挑戦。農業体験を通して調査した結果をまとめた生徒の論文が学術的に高い評価を受けたという。

これら取り組みを通して、探究活動推進担当主任 辻岡みどり教諭は「探究活動を通じて『にし阿波って素敵なんだ』と気づいて、地域のことをもっと広めていきたいという生徒がたくさん出てきています。知らなかったことに気づけただけでなく、気づいたものを先につなげていきたいという想いや成長を感じられたのが、すごくうれしかった」と述べている。

池田高校の成果報告。三菱みらい育成財団のサイトでは採択したすべてのプログラムに対して成果報告動画を公開している

池田高校のほかにも、全国には三菱みらい育成財団の助成事業に応募し、今までできなかった探究学習に取り組んでいる高校や大学、あるいは、教員に対して探究学習に関するプログラムなどを提供する組織や企業が多数広がっている。数としては、過去3年間で158のプログラムが生まれており、地域課題やSDGs、国際交流や宇宙・サイエンスなど多様なプログラムが実施され、高校生の心のエンジンを刺激し、貴重な学習機会を創出している。

宮崎県立宮崎東高等学校 定時制夜間部では「生徒が生きがいを感じるための探究活動」に挑戦。定時制高校のパイロット校を目指し、生徒の好きな物・得意な物を見つけて進路へつなげる時間を創出した
福島県立葵高等学校。「生徒の主体的に生きる力の育成~課題探究活動「葵ゼミ」をとおして~」。助成金で大型ディスプレイを増やし、効果的なプレゼンテーションを実施。生徒のICT活用スキルも高まった
京都市立堀川高等学校「「よって、」と書けばいいわけじゃない。~論理的言語能力と将来の学びに向かう心に火をつける~」。生徒の論文執筆のスキルを高めるべく、外部から論文執筆経験者をTAとして招いた
認定特定非営利活動法人 育て上げネット 若者の孤立無業化予防のためのキャリア教育プログラム「Life Connection ライフコネクション」想定外の出来事が起きたときに、つながる場所を知り、ひとりではない心強さを知る
国立大学法人 山形大学 「山形大学発IT人材育成~シリコンバレー版スーパーエンジニアプログラミングスクール~」シリコンバレー在住のエンジニアが直接指導するプログラミング講座を実施
株式会社a.school 探究ファシリテーター講座「探究PLAYers!」。探究学習とはどのようなものなのか、どのように授業を設計するのか、専門家から理論を学んだりしながら、教育関係者に探究を学ぶ機会を実施

こうした三菱みらい育成財団の取り組みや成果をまとめた書籍『 教育が変われば、社会が変わる 三菱グループの教育財団が本気で教育に取り組んで見えてきたこと 』(著:崎谷 実穂、著:一般財団法人三菱みらい育成財団)が3月に発売された。同書では、探究学習の事例や成果が掲載されており、これからの社会を生徒たちが生き抜くためには、どのような学習が必要なのかを知ることができる。自ら課題を発見し、社会とつながりながら主体的に学ぶことができれば、生徒たちは走り始める。その姿を本書で触れてみてほしい。

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三菱みらい育成財団が助成した高校の探究学習の事例をまとめた書籍『教育が変われば、社会が変わる 三菱グループの教育財団が本気で教育に取り組んで見えてきたこと』(構成・執筆:崎谷 実穂、取材協力:一般財団法人三菱みらい育成財団)を抽選で50名様にプレゼントします。

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