トピック
学校広報も紙からデジタルへ、受験者数1.35倍に伸びたDXの中身は?
聖徳学園中学・高等学校とPLANEdが取り組んだ学校広報DX
- 提供:
- 株式会社PLANEd
2022年6月30日 12:00
「受験生や保護者に学校の魅力を伝えたい」「学校説明会に来てくれる生徒や受験者数を増やしたい」といった課題は、どこの学校も抱えている。こと私立学校では学校経営にも関わることから、入試広報・学校広報は重要な校務の一つだ。
一方で学校の情報収集も、生徒や保護者のスマートフォン所持率も上がり、ネット検索やSNSの利用が主流になるなど、ここ数年で明らかに変わった。学校のホームページや進学情報誌に情報を載せておけば見てもらえる時代は終わり、入試広報・学校広報のやり方を見直す時期に来ている。
伝えたい情報をいかに見て欲しい人の元へ届けるか――これは今、多くの企業が戦略的に取り組んでいる課題であり、令和の学校も例外ではない。入試広報のDX(デジタルトランスフォーメーション)で受験者数は1.35倍に増加、学校のビジョンに共感する新入生を多数迎え入れることができたという、聖徳学園中学・高等学校の事例を紹介する。
学校のさまざまな魅力を生徒募集で届けたい
聖徳学園中学・高等学校(東京都武蔵野市 / 以下、聖徳学園)は、「考える力の育成」を教育理念に掲げ、特色ある教育を実践している学校だ。STEAM教育に早くから取り組み、校内には最新設備を備えたSTEAM棟を併設。1人1台iPadによるICT教育は取り組みが評価され、昨年度Appleが選ぶ「Apple Distinguished School」にも認定された。さらにはプログラミング入試や、2024年度からは新たに高校課程にデータサイエンスコースを設けるなど、生徒の可能性を広げる学校づくりに取り組んでいる。
「こうした本校の魅力を受験生や保護者の方にもっと伝えていきたい」、そう語るのは、聖徳学園中学・高等学校 情報システム部長 鶴岡裕一郎氏だ。現場では生徒たちが、同校独自の教育プログラムや学習環境のもとで充実した学校生活を送っているが、受験生や保護者にはその魅力が伝わっていない、そんなジレンマを抱えていたという。
「今までの生徒募集は、紙の情報誌に学校や入試の情報を掲載し、聖徳学園を“知ってもらう”ことに重視していました。これは、ひとつの方法として有効だと考えていますが、本当に学校の魅力が伝わっているかどうかわかりません。情報誌を手にする生徒や保護者は限られていますし、今の時代であれば、スマートフォンやSNSを活用すればもっと広範囲に学校の魅力を伝えられるのではないか、と考えていました」(鶴岡氏)。
そこで、聖徳学園はデジタルを活用した情報発信で生徒募集の効果を高めるべく、2020年度より教育機関の広報DXを手掛ける株式会社PLANEd(プランド/以下、PLANEd)に依頼。専門知識を持つ企業と連携することで、教員の負担を増やすことなく新たな入試広報に取り組んだ。
鶴岡氏は「デジタルを活用した広報活動は、一般企業も人材を投じている部分であり、多忙な教員が授業を抱えながら新たに取り組めるものではありません。1人1台端末の管理をICT支援員が担うのと同じように、学校広報も専門的な知識を持つ人の力を借りることがベストだと考えました」と語る。
情報の見せ方は「動機からゴールまで」の流れが大事LINEの活用でメッセージが届く確率をあげる
聖徳学園が連携したPLANEdは、デジタルの広報やマーケティングを強みとする企業で、学校広報に特化したサービスや支援を提供している。
PLANEd 取締役の棚橋広明氏は、デジタルを活用した生徒募集について「ウェブで学校を検索したときに、検索結果に学校名がきちんと表示され、学校を知るところから、学校説明会に来てもらえるまで、一連の流れになっていることが大事です」と語る。
これは何も特別な話ではなく、我々が普段、ネットで物を購入するときも同じような動線だ。たとえば、京都旅行を計画するとき。京都へ行きたいという「動機」から始まり、ネットで“京都・観光”といったキーワードを入れて「検索」する。その後、多くの人は検索結果の上位に「表示」された情報にアクセスして「情報収集」を行ない、最終的にはホテルの予約といった「ゴール」を達成する。このように、ネットを活用した情報収集は、動機からゴールまで一連の流れに基づいて設計されている。
棚橋氏は、生徒募集についても、基本的にはこの流れと全く同じだと語る。“学校を調べる”という「動機」から始まり、“A市・私立・グローバル教育”など興味のあるキーワードを入れて「検索」、その後、検索結果で上位に「表示」された学校のページから見られていき、学校や入試関連の「情報」をチェック。最終的に学校説明会やオープンスクールへの予約が「ゴール」となる。
ところが、「生徒募集に関しては、このような流れになっていない」と棚橋氏は指摘する。多くの学校のホームページは検索にひっかかるものの、検索結果を上位に表示させるような工夫や、学校説明会までの動線をわかりやすくする工夫がなされていないという。
「学校のホームページは、在校生や保護者、受験生向けの情報が混在しているほか、役割も緊急時の連絡から学校の魅力を伝える情報発信まで多様化しています。そのため、受験者はどれが自分にとって必要な情報なのか、また学校の魅力は何なのか、情報が多すぎてわからないという傾向にあります」(棚橋氏)。
これに関しては、2人の子どもの受験を経験した筆者もよく分かる。昨今の私立学校はどの学校もさまざまな特色を打ち出しており、学校のホームページは情報が盛り沢山だ。一方で、気になっていた学校説明会の情報は、いつの間にか募集定員に達していたり、肝心の申し込みフォームがわからなかったりとタイミングよく情報が得られないこともある。
聖徳学園ではこうした流れを改善するために、学校のホームページとは別に、入試専用のランディングページ(以下、LP)を作成。検索結果で上位に表示させるデジタル広告も利用し、デジタル広告からLPにジャンプする動線を作った。
ちなみにLPとは、認知拡大や購入など、とある目的に特化したウェブページのことで、企業のマーケティングにおいてもよく使われる手法のひとつ。縦長のページでレイアウトされるLPは順序よく読み進められるように構成されており、伝えたい情報をわかりやすく配置でき、離脱率が防げると言われている。
棚橋氏はさらに、「聖徳学園においては、単にLPを作って入試情報を発信するだけに終わらず、LPの中に受験生とその保護者を対象にしたLINE公式アカウントへの誘導を設け、友だち登録をしてもらうことをゴールとしました」と語る。これにより、少しでも聖徳学園に興味を持った受験生や保護者と学校がつながり、定期的に学校が情報を届けられる環境を構築した。
「今は、受験生や保護者のほとんどがLINEアカウントを持っており、LINEに届く情報なら見てもらえる確率がとても高いです。学校説明会やオープンスクールの情報はもちろん、学校の魅力や伝えたいメッセージをダイレクトに届け、学校と家庭の接点を増やしていけるのがメリットです」と棚橋氏は語る。聖徳学園では1年を通して時期的な変動はあるものの、LINE公式アカウントには1500~2000人くらいの受験生や保護者が登録しており、学校の情報発信に役立てているという。
出願数が1.35倍に伸びた学校を好きになって入学してもらえるのが一番のメリット
聖徳学園がこうした学校広報DXを進めてから、2年が過ぎた。効果は、学校説明会やオープンスクールへの参加者は1.2倍にアップ。2021年度の出願数は1.35倍伸びたとともに、入学者数は1.25倍に増えた。
鶴岡氏はこれについて、「出願数や入学者数が増えたことは嬉しいことですが、それよりも注目したいことは、聖徳学園を好きになって入学してくれる生徒が増えたこと、また第一志望にしてくれる生徒が増えたことです」と語る。LINEの公式アカウントを通して、入試情報やメッセージを確実に届けられるようになったことで、興味を持ってくれた生徒や保護者に対してさらに学校を知ってもらう情報を投げかけ、好きになってもらうチャンスが増えたと鶴岡氏は分析している。
「たとえばプログラミング入試については、本当に興味を持っている生徒たちに情報を届けられたことで、一定の生徒数を集められています。入学前に複数回のプログラミング体験会に参加してもらうのですが、もともとプログラミングに興味ある生徒や保護者が来てくれるので、皆さん積極的に参加してくださいます。これが学校を好きになってもらうことにつながり、プログラミング入試で入学した生徒が、生徒会に入って活躍してくれるなど頼もしい姿を見られるようになりました」(鶴岡氏)。
鶴岡氏は学校広報DXのもうひとつの効果として、「効果測定をきちんとできるようになったことも学校の大きなメリットです」と語る。紙の情報誌はどれだけ学校説明会やオープンスクールの参加につながったのか結果が見えづらかったと指摘。それに対し、デジタルではGoogleのアプリ内計測ツール「Google Analytics 4」を用いて効果測定ができるようになり、LPを見た人数やそこからLINE公式アカウントへジャンプした人数など、数字ではっきりわかるようになった。これが学校広報における課題発見や改善につながっているという。
一方で、学校広報DXを企業と協力してやっていくことに抵抗感を持つ関係者もいると思うが、鶴岡氏は「専門知識を持った方に運営やデータの分析をお願いする方が予算効率も良いのではないかと思うようになりました」と話す。学校広報は多くの学校で大きな予算がついている部分であり、だからこそコストパフォーマンスにもこだわりたいものだ。
生徒募集・学校広報DXの前に、学校のホームページの安全性に課題あり
学校広報DXを進めた結果、受験生にも学校にも良い結果をもたらした聖徳学園の事例からもわかるように、今のアナログな学校広報にデジタルを生かすことで、生徒募集の改善が期待できる。一方でPLANEdの棚橋氏は、多くの私立学校のホームページが抱える課題を指摘する。
「デジタルを使って学校広報をどのように変えていくか、という話をする前に、多くの私立学校においてはホームページの管理が行き届いていない実態が見られます。そのひとつとして、企業ではもうかなり対策が進んでいるSSL化も、学校のホームページはいまだに未対応のところが多く、セキリュティの視点でも通信が暗号化されていないので危険です」と指摘する。
SSLとは、インターネット上の通信を暗号化する技術。近年、セキュリティへの意識の高まりや、Google Chromeの対応を受け、多くの企業がSSL化に対応済みであるが、学校現場はこの対応が遅れているという。この対応ができていない場合、学校ホームページのアドレスバーには、「この通信は安全ではありません」とメッセージが表示されてしまう。
棚橋氏曰く、「SSL化していない学校のホームページは、保護者や生徒からセキュリティ対策を怠っていると思われてしまいます。また、そもそもGoogleの検索でSSL化されていないサイトは検索結果に表示されなくなるという流れもあるので、そうなると、学校広報DXどころか、ホームページすら見に来てもらえないという事態も発生します」と語る。
ちなみに、学校のホームページがSSL化されていない私立学校は、どれくらい存在するのか。PLANEdが全国の私立学校2,350校に対して独自で一斉調査を実施したところ、6割超の学校がSSLに対応していないという調査結果が明らかになっている。
また棚橋氏は、Google Analytics 4(以下、GA4)への移行が未実施であることも多くの私立学校が抱える課題だと指摘している。Google社は2022年3月、「Universal Analytics(UA)」計測終了を発表したが、無償版の計測終了日は2023年7月1日まで。継続して学校のホームページなどのアクセス解析を実施したい場合には、新バージョンであるGA4への移行手続きが必要となる。一方、移行手続きを実施しない場合、サイトへの訪問数が確認できなくなるほか、過去のデータを遡って参照することもできなくなる。
棚橋氏は、こうした状況においても調査を実施しており、私立学校の約6割にあたる1339校がまだGA4への移行が未実施だという結果も指摘した。「過去のデータにアクセスできなくなるのは、生徒募集の効果検証にも影響しますし、これから学校広報DXを進めていくうえでも影響が出てきます。あと1年の猶予はあるものの、前年比較するためのデータが取れなくなってしまうので、今のうちに対応されることをお勧めしたいですね」と同氏は語る。
とはいえ、学校の教員は日々多忙であり、学校のホームページの管理やセキュリティ対策まで手が回らないのが現実だ。また、こうしたウェブ関係の知識やノウハウは、テクノロジーの進化によってどんどんアップデートするものであり、忙しい教員がそれについていくのはむずかしい。聖徳学園がPLANEdと協力したように、そろそろ学校広報の在り方も令和の時代に合わせて見直す時期に来ているのではないだろうか。
受験生にとって、自分の希望する学校に入学するのが理想的なのは言うまでもない。しかし、結果として併願校に入学することになったり、塾の先生に勧められたからという理由で入学する生徒も多いのが現実だ。そうした学校と受験生のミスマッチに、学校も生徒も主体性を伸ばせないジレンマを抱えることになる。
学校は特色と魅力を理解してくれる生徒を迎え入れ、保護者と受験生は自分に合った校風や学びを受けられる学校を選ぶ。両者のミスマッチを生まないためにも、まず学校から広報をDXしてほしい。
・GA4設定代行プラン49,500円→3,300円(税込)
※SSL証明書取得費用は別途実費となります。
特別価格のお申し込み方法(※キャンペーン期間はページにてご確認ください)
https://planed.co.jp/contactにアクセスし、お問い合わせ内容に「設定代行プラン希望」とご記入ください。
※このほかにも、広報に関するお悩みのご相談、生徒募集のDX推進にご興味のある学校様はこちらまでお気軽にご連絡ください。
TEL:03-6823-4641(担当:鈴木)
MAIL:contact@planed.co.jp