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小学生最後の夏休み、親子で組み立てたパソコンが「思い出」と「未来」をつなぐ

—マウスコンピューター親子パソコン組み立て教室 in 飯山

小学6年生の夏休みは、親子にとってかけがえのない時間だ。中学生になると部活や塾で忙しくなり、一緒に過ごす時間はぐっと減ってしまう。そんな大切な時期に「何か家族の思い出を作りたい」と考える保護者も多いだろう。

そんな思いに応えてくれるのが、 株式会社マウスコンピューターが毎年開催する「親子パソコン組み立て教室」 だ。親子で力を合わせて、世界に1つだけのパソコンを組み立てる。中学生という”少し大人”に近づく我が子に向けて、これから本格的に使うパソコンの贈り物ができて、かつ親子の体験も思い出に残る。これは親にとっても良いイベントになるのではと思い、8月15日、開催場所の飯山工場に行ってきた。

親子の思い出も倍増、パソコン組み立てx花火大会 in 飯山

株式会社マウスコンピューター飯山工場(長野県飯山市)

マウスコンピューターが開催する「親子パソコン組み立て教室」は、小学6年生を対象とした夏の恒例イベントだ。今年で13回目を迎え、同社の国内工場がある長野県飯山市で開催された。参加する家庭は、事前に組み立てるパソコンを選んで購入しており、工場内で部品を選び、親子で力を合わせて組み立てていく。

今年は例年と異なり、飯山市と連携して、お盆期間の8月14日・15日の2日間にわたって実施された。初日はデスクトップPC、2日目は午前・午後でノートパソコンの組み立てが行われ、各回20~26組、合計67組の親子が参加した。また、このパソコン組み立て教室は、地元の「千曲川河畔納涼花火大会」の観覧席もプログラムに含まれており、子供たちの小学校生活最後の夏休みをさらに盛り上げてくれた。

当日の流れ。部品集めや親子トライアルなど楽しそうな内容

開校式では、株式会社マウスコンピューター代表取締役社長の軣 秀樹氏が挨拶。「日本のものづくりは減少傾向にありますが、ここ飯山工場ではものづくりを続けています。ここでの体験が将来の選択肢を広げるようなきっかけになってほしい」と語った。

また、飯山市役所経済部 経済部長の田中良則氏は「自分で使うパソコンを自分でつくるのは、とても貴重な経験。1人で挑戦したり、親子で協力したりしながら楽しんでほしい」と語った。

株式会社マウスコンピューター 代表取締役社長 軣 秀樹氏
飯山市役所経済部 経済部長 田中良則氏

パソコンの部品を学んで「宝探し」へ!親子で楽しむピッキング体験

開校式の後は、部品説明の時間だ。子供たちは普段、学校でタブレット端末を使っているものの、その中身を知る機会はほとんどない。ここでは、マザーボードやCPU、メモリ、ストレージ、電源ユニットなど、実物を子供たちに見せながら、それぞれの部品を人間の体にたとえて分かりやすく説明された。

部品説明の時間。パソコンに必要な部品や扱い方について学ぶ

「マザーボードは神経伝達の役割をします。ごつごつした小さいパーツがついていますが、1つでも欠けると動きません。扱うときは注意が必要です」。「CPUは人間で言うと脳の役割です。指令を送ったり、計算や文字入力を行います。マザーボードと接触する金属部分が大切なので、角を持つようにしてください」、そんな風に講師が説明するのを、みんなとても真剣に聞いていた。

目の前で部品を見せてくれる
ドライバーの使い方も説明

続いては、自分が組み立てるパソコンの部品を工場内で探す「ピッキング」の時間。ただの部品集めではなく、”宝探し”に見立てて演出されているのが面白い。子供たちには地図が渡され、部品が置かれた場所には「★」マークが記されている。その地図を見ながら、広い工場の中を親子でワゴンを引きながら探検し、部品を探していく。子供たちは部品を見つけた瞬間に「あった!」「ここだ!」と声をあげて笑顔を見せていた。

なお、親子1組ごとにスタッフが一人付き添ってくれるので部品を間違える心配はない。スタッフはこの後、パソコンが完成するまで親子をサポートしてくれるのでとても心強い。

部品の場所を記した地図。これを見ながら工場内を歩き、部品を探す
スタートは、地図に書かれた番号のスキャンから
自分のパソコンに必要な説明書や保証書をピックアップ
ワゴンを押しながら工場内を歩き、部品を探していく。ここでしか味わえない経験だ
スタッフがついてくれるので安心
集めた部品。これを組み立てていく

アンテナの取り付けに悪戦苦闘!親子で挑戦するトライアル課題

部品を集めた後は、いきなり本番の組み立てに入るのではなく、「親子トライアル」という時間が設けられた。精密機械の扱いに慣れていない子もいれば、中にはドライバーを使うのも初めてという子もいる。トライアルの課題は、メモリの取り付けやキーボードの組み立て、無線LANアンテナの装着など。親子で1つずつ課題をクリアし、その出来栄えが評価されて、表彰も行われる。

トライアルに出された課題。指示通りに部品を組み立てていく
慣れない手つきで、慎重にメモリを取り付ける
1人でやってみる子、親と一緒にがんばる子、進め方はそれぞれ

トライアルの課題で子供たちが苦労していたのは、無線LANアンテナの取り付けだ。小さなコネクタをカードに押し込む作業は、「針に糸を通す」ような繊細さが求められ、きちんと装着できたかどうかもわかりづらい。子供たちは体を丸めて挑戦しているが、なかなかうまくできない。

しかし、親子で取り組んでいるせいか、この難しさもどこか楽しげだ。親子で順番に挑戦したり、最後は親が手を貸して成功させたりと、苦労の中にも笑顔があって、見ている方も微笑ましい光景だ。

最も難しかったのは、無線LANアンテナの取り付け
集中して何度も挑戦
子供たちの頑張りを温かく見守る軣社長

組み立て本番!世界にひとつだけのパソコンづくりがスタート!

ここからは、いよいよパソコンの組み立て本番だ。トライアルで部品やツールの扱いに慣れたところで、先ほど集めてきた部品を実際に組み立てていく。デスク前のモニターには自分が組み立てるパソコンに必要な部品や手順が表示されており、親子はそれを確認しながら作業を進める。

ノートパソコンを箱から取り出すと、スタッフから「傷がないか確認して」「附属の部品を確認してください」といった声が掛けられた。部品を組み立てるだけでなく、品質を確認するもの重要な視点。一つひとつの工程を通して、作業を丁寧に進める大切さを学んでいく。

パソコンに傷がないかをチェック
ドライバーで裏板を外す

続いて、裏板のネジを外してマザーボードにメモリやSSDを取り付ける。ヘラを使って裏板を外すのは力加減が難しく、失敗が不安で手を止める子もいる。トライアルのときと違って、本物のパソコンとなると一層慎重になってしまうようだ。

マザーボードにメモリを取り付けるのは、先ほどのトライアルと同じ要領だ。SSDの取り付けはトライアルでは扱っていないため、子供たちは差し込む位置を慎重に確認していた。ネジで固定してもすぐに外れてしまったり、メモリの向きを間違えそうになったりと、親も思わず手を出しそうになる瞬間があるが、そこをじっと見守っているのが伝わってくる。

本番は慎重に作業を進める子供たち

組み立てが終わると、最後はWindowsを起動して動作確認を行う。電源が入り、画面が立ち上がった瞬間、子供たちは「やった!」「よかった~!」と声を出して喜んでいた。

最後は、Windowsが起動するかどうかの動作確認

仕上げにステッカーを貼って完成。子供たちは自分だけのパソコンを前に、とても満足そうな表情を浮かべていた。この後、家に持ち帰って、すぐにパソコンを起動している姿が目に浮かぶ。

世界にひとつだけ、自分だけのパソコンが完成

最後にはマウスコンピューターから表彰状が贈られ、親子で組み立てたパソコンを囲んで記念撮影。完成したパソコンはその日のうちに箱に入れて持ち帰ることも、配送してもらうことも可能だ。

表彰式
記念撮影

子供のころの根っこの体験が、未来を拓く鍵になる

参加した子供たちに感想を聞くと、「部品探しや組み立てが楽しかった」「(無線LANアンテナの)線をつなぐのがとても難しかった」「今日はうまくできて嬉しかった」と笑顔で答えてくれた。「普段できない体験ができてよかった」と話す子もいて、子供のたちにとっても印象に残るイベントになったようだ。

また保護者に参加理由を聞いたところ、「子供にパソコンに興味を持ってほしい」という声や、兄妹や親せき、友達が過去に参加して楽しかったと聞き申し込んだという声も少なくない。なかには、マウスコンピューターが制作した小学生向け学習まんが書籍『ゲーム&クリエイターパソコンのひみつ』をきっかけに応募した親子もいた。父親によれば「図書館でひみつシリーズの漫画を3年前に借りてから子供がパソコンに興味を持ち、6年生になるのを待って応募しました」という。いずれの家庭も、それぞれに子供への想いや願いを込めて参加しているのが伝わってきた。

記念撮影

株式会社マウスコンピューター 代表取締役社長 軣 秀樹氏は、今回の教室を振り返って、「これまでは7月末に開催してきましたが、”毎年同じことを繰り返すだけで良いのか”という思いがありました。私たちのビジネスも環境も変わっている中で、もっと地域に根ざした形にしたいと考え、飯山市で長く続いている花火大会と組み合わせることにしました。実際には”お盆では参加者が減るのでは?”と心配していましたが、逆に花火を目的に来られる方も多く、結果的に盛り上がったことにホッとしています」と語ってくれた。

また、子供たちに対しても、「私自身も小さい頃につくったものの記憶は今も鮮明に残っています。その経験が理系に進み、開発の仕事を選んだ大きなきっかけになりました。新しい製品を開発するときには常に新しいものを求めますが、その根っこは子供の頃の体験があると思います。ですから、この教室で得た経験が、子供たちにとって将来の選択肢を広げるきっかけになればうれしいですね」と語った。

デジタルネイティブの子供たちといえど、自分のパソコンが与えられるのは特別な瞬間。ましてや、それを親子で組み立てるなんて、この先もずっと語り続けられる思い出になる。「あの時、親と一緒につくったパソコン」がこれから子供の相棒になり、未来を拓いてくれるだろう。

なお、マウスコンピューター飯山工場がある飯山市は、野沢温泉が近く、自然を生かしたアクティビティーが楽しめる場所でもある。パソコン組み立て教室と合わせて家族旅行も楽しめそうだ。来年の夏の旅行に企画してみるのもおすすめだ。

信州いいやま観光局」のサイト。飯山市は特にサイクリングが充実しており、JR飯山線は自転車を持ち込んで乗ることができる
神谷加代

こどもとIT編集長。フリーの教育ITライターとして8年間ほど活動し、教育現場のICT活用やプログラミング教育、GIGAスクール構想など多数取材・執筆。2020年からインプレス「こどもとIT」の編集記者へ。教育xテクノロジーを中心にさまざまなコンテンツを手掛ける。長年NBAのファンで、好きなチームはゴールデン・ステート・ウォリアーズ。