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「峠の釜めし」の釜がタイルに! 埼玉工大が再利用技術を開発
2025年6月20日 09:30
埼玉工業大学は、株式会社荻野屋が販売している駅弁「峠の釜めし」に使用されている陶器製弁当容器を再利用し、内装用タイルに変換する環境配慮型の新技術を開発したと発表した。開発は、同大学工学部生命環境化学科環境物質化学研究室、兼クリーンエネルギー技術開発センター長の本郷照久教授が率いる研究チームによって行われた。
同技術では陶器容器を粉砕し、粉体材料に機械的エネルギーを加えることで化学変化や構造変化を誘発する処理(メカノケミカル処理)と、使用済みの釜を粉砕・処理した粉末にアルカリ活性剤を加え、60℃で反応を進行させることで、タイル状の硬化体を作製した(ジオポリマー化反応の技術を適用)。
メカノケミカル処理とジオポリマー化反応を組み合わせることで、高温焼成や特殊な化学薬品などを使用する複雑な処理工程が不要となり、環境に優しいタイル製造が可能となった。得られたタイルは、JIS規格で規定されている屋内用タイルの要求を満たす。
峠の釜めしは、荻野屋が1958年2月1日に信越線横川駅で発売を開始し、これまでに約1億8000万個が販売された名物弁当である。荻野屋によると、使用済みの釜は年間回収率が約30%にとどまり、使用経路不明の釜は回収後に粉砕処分しているという。
本郷教授の研究室は、「廃棄物問題」などに着目し、廃棄物の有効活用を目指した問題解決に取り組んでいる。上記の背景から使用済みの釜の再利用と環境負荷の低減を両立する技術を開発。研究成果は、「使用済み陶器製弁当容器からのジオポリマータイルの作製」というタイトルで、環境資源工学会が発行する学術雑誌「環境資源工学」(2025年第72巻第1号)に掲載された。
今回開発した技術は、さまざまな材料に応用が可能で、廃棄される陶器類、耐火レンガ、瓦などにも広く適用ができる可能性があるという。また、タイルだけでなく、レンガ状の建材、ブロック、パネルなど、多様な製品の製造にも応用が期待されるとしている。