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AI時代、子どもの「感性」をどう育む? JUNOPARKで見えた、心が動く体験

AIが身近になった今、改めて「感性」の大切さが語られるようになった。さまざまな作業や仕事をAIが担うようになる中で、「自分はどう感じるのか」「何を面白いと思うのか」「何を大切にしたいのか」といった、一人ひとりの内面がこれまで以上に意味を持つようになってきている。こうした時代に、子どもたちの感性をどのように育んでいけばいいのだろうか。

積水ハウス株式会社が京都府木津川市に開設した、小学生を中心に楽しめる屋内体験型施設「 JUNOPARK(ジュノパーク) 」は、感性を育むことを大切にした施設だ。開館から1年を迎え、来場者は約7万人を突破。多くの子どもや家族が訪れている。

今回は、東京学芸大学副学長の堀田龍也氏とともに、JUNOPARKを訪れた。教育工学やICT活用を専門とし、デジタルと教育の関係を長年見つめてきた堀田氏は今、感性をどのように捉えているのか。同氏の話とJUNOPARKが提供する体験をひも解きながら、AI時代における感性の育み方を探る。


AI時代こそ、「自分のやりたいこと」を見つける感性を育みたい

東京学芸大学 副学長・教職大学院 教授 堀田龍也氏。専門は教育工学、ICT活用授業、情報教育に関する教育実践研究。文部科学省 中央教育審議会はじめ多数の委員を歴任

「感性を育む」ことは、長年、教育現場でも大切にされてきました。学校では自然体験や芸術鑑賞などさまざまな体験の機会が設けられ、そこから何かに気づき、考え、自分なりに表現する学習も多く行われています。子どもたちのこうした活動は人間形成や成長に欠かせず、学校だけでなく、家庭でも大切にされてきたことだと思います。

では、なぜAI時代になって改めて感性が重視されているのでしょうか。それは、感性が人間ならではの強みだからです。AIに何を任せ、人間は何をするのか。そんな問いがAIの普及とともに語られるようになり、 「自分のやりたいこと」を持っているかどうかがこれまで以上に大切 になってきました。次期学習指導要領においても感性が重視されていますが、AIに振り回されず、自分で人生を舵取りするためには、やりたいことをしっかり持てるかどうかが問われます。それを見つけるために欠かせないのが、感性なのだと思います。

感性を育むためには、体験が重要だとはよく言われますが、体験すれば感性が育まれるかというと、そう単純な話ではありません。たとえば、法隆寺を見ても何も知らなければ「すごく大きい」「古い」で終わるかもしれない。しかし、そこに知識が加わることで「どうやって作ったんだろう」「なぜ、この建物が今も残っているんだろう」と疑問や興味が生まれ、物事を見る目が変わっていく。

つまり、感性を豊かにするためには、 体験だけじゃなく、知性も大事 だということです。そして、もう1つ、 自分が感じたことを誰かに語ったり、表現したりすることも大切 です。アウトプットしなければ、何を感じたのかを自覚しないまま終わってしまいますから。


知ることで感じ直す、堀田氏が見たJUNOPARKで育まれる感性

体験アクティビティ「マイルーム大改造」にて。「このタイルを使っていろんなことができそうだね」と堀田氏

今回JUNOPARKを見て、ここで育まれているのは、知的な感性だと思いました。 何かを知ることによって、今まで感じていたことはそういうことだったのかと、感じ直す。 たとえば、廃材の中からプラスチックを探すアクティビティがあります。子どもにとって探すのはすごく大変ですが、こういうのもプラスチックなんだとわかると、家の中にもあるかもしれないから今度見つけてみよう、と思う。知ったからこそ面白がれる。表出するとは、そういうことだと思うんですね。

そんな子どもの気づきを生むために、クルーの方の語りや体験の順番がデザインされているのがいいですね。クルーの語りは、最近で言えば、子どもたちに科学をわかりやすく伝える「サイエンスコミュニケーター」のような役割をもたれていて、子どもに語りかける話術や手順に技術を感じます。初めて会った人と話す緊張を和らげながら、子どもの表出を引っ張り出してくれる。その関わり方は見ていて絶妙でした。

ほかにも、JUNOPARKでは実物の素材を多く展示したり、デジタルと組み合わせたり、子どもが体験の意味を感じ取りやすいようデザインされているのも良さだと思います。

私はこれまで、メディアやデジタルを教員や子どもたちがどう使えばいい教育になるかを考えてきました。当然のことながら、単に新しいツールやデジタルを使えば、教育がよくなるわけではありません。大切なのは、どういう設計思想で、どのくらいの教育力を持ってデザインされているか。そこに関わる人間の思いや知性が、結局は人を育てるのだと思っています。

JUNOPARKには、子どもたちの感性を育みたいというビジョンがあり、その狙いが一つ一つの展示やアクティビティとしてカタチになっています。訪れるたびに、子どもたちが新しい気づきを得て、感じ直すことができる。そんな施設だと思います。

ライブラリーにある「感性の樹」の前で


「住」で心が動く。JUNOPARKが考える感性とは

JUNOPARKは、2025年8月にオープンした積水ハウスの「住育エデュテイメント施設」だ。エデュケーション(学び)とエンターテインメント(楽しさ)を融合させた体験型施設で、子どもの感性を育むことをめざして設立した。メインターゲットは小学校高学年。積水ハウスが考える「暮らしの中で育まれる6つの感性」をテーマにしたアクティビティや展示を楽しむことができる。

JUNOPARK(京都府木津川市)。地上4階建て、延べ床面積約7,500㎡、サッカーコート約1面分に相当する敷地内に建てられている

館内は、「感性の樹」と呼ばれるシンボルツリーを囲んで、1階がライブラリーやカフェなど落ち着いたパブリックスペースとなっている。2階から4階が体験アクティビティと体験ギャラリーのフロアとなっており、ここで、「デザイン」「構造」「ユニバーサルデザイン」「住環境」「資源循環」「自然環境」という、住まいや暮らしと結びついた感性を育むアクティビティやギャラリーを体験できる。

ライブラリーにあるシンボルツリー「感性の樹」。その周りは読書スペースとなっている

各アクティビティは1回45分ほど。部屋をデザインする「マイルーム大改造」や、ものの形や構造を考える「2メートルタワー建築」など、いずれもクルーの進行に合わせて、子どもたちが手を動かし考えながら取り組める内容となっている。

「マイルーム大改造」(デザイン)
「ゴーストハウス調査隊」(住環境)
「戦略アスレチック」(ユニバーサルデザイン)
「再生モノづくりラボ」(資源循環)
「2メートルタワー建築」(構造)
自然環境 ※体験ギャラリーのみ

積水ハウスは、なぜJUNOPARKをつくったのか。背景にあったのは、日本の子どもたちの精神的幸福度が先進国の中で低いという調査結果だったという。キッズ・ファーストを経営の柱のひとつにする積水ハウスにとって、これは見過ごせない課題だったというのだ。

積水ハウス株式会社 コミュニケーションデザイン部 CXデザイン室 キッズファーストグループ グループリーダー 箕輪憲良氏

JUNOPARKの企画・運営に携わる箕輪憲良氏は、「子どもたちが幸せを感じるためには、何が必要なのか、ということから考え始めました」と話す。

「幸せを自分のものとして感じるためには、まず自分の好きなものや大切なものに気づくことが必要です。心が動く体験を通して、いろいろなことから何かをつかみ取り、得たものを自分の中の価値とつなげて意味を見いだし、それを表現したり、決断したりしていく。つまり、 幸せを感じとる源泉が『感性』 だというところに行き着き、このような施設をつくりました」と語る。


開館1年で約7万人、校外学習など学校利用も広がる

開館から1年、JUNOPARKの累計来場者は約7万人にのぼり、校外学習など学校教育の場としての利用も広がり、これまでに64校が訪れている(※1)。来館者アンケートでは約99%が体験を「楽しい」「やや楽しい」と回答しており、高評価を得ている。

※1 2025年8月5日~2026年7月31日実績

スタートは、JUNOPARKの楽しみ方を紹介する動画から。館内には、学校・団体利用向けのスペースも設けられている

多くの子どもたちを惹きつけているのが、JUNOPARKならではの体験のつくり方だ。「感性が大切」と教えるのではなく、「住」という身近なテーマを入り口に、 子どもたちが楽しみながら自分で考え、試し、気づきを得られるように設計されている。

たとえば、「マイルーム大改造」では、50色以上、200種類以上の素材を組み合わせて理想の部屋をデザインする。ずらりと並んだ色とりどりのタイルや素材を前に、子どもたちはワクワクしながら手に取り、自分の好きな色や素材を探していく。その過程で、「こんな色も好きだった」「こういう素材を使ってみたい」と、自分でも気づいていなかった「好き」に出会うこともある。そうした心の動きを、JUNOPARKでは「自己を表現する感性」へとつなげている。

ほかにも、「再生モノづくりラボ」は、家1棟を建てるときに出る廃材の山がモチーフ。一見ゴミに見えるたくさんのアイテムから目当ての材料を見つけ出し、新たなアイテムに生まれ変わる素材を探し出す。仲間と協力しながらゲーム感覚で取り組むうちに、「これ何だろう」「面白いものを見つけたい」と、身の回りのものに自然に興味が向いていく。廃材に目を向け、新たな価値を発見する体験を通して、「モノの価値を見出す感性」を育んでいる。

JUNOPARKで体験できる6つのテーマと、育まれる6つの感性

こうしたアクティビティについて箕輪氏は、「私たちは『感性って大切ですよ』と伝えたいわけではありません。それでは、子どもたちの心は動かないと思っています」と話す。「大切にしているのは、子どもたちが『今日楽しかったね』『こんなことがあったよ』と、 家に帰って家族に話したくなるような体験 です。そうした心の動きを、一人ひとりに積み重ねてこられたことが、この1年の成果だと思っています」。

子どもたちへのアンケートには、「 自分の好きは自分で決めていいと思った 」という言葉もあった。箕輪氏は「すごくシンプルですが、私たちが伝えたかったことをそのまま表してくれたように感じました」と振り返る。


「心が動く」を、そのままにしない。感性を育むために大切なこと

AIが人間の代わりに多くのことを担う時代、子どもたちに求められるのは、自分は何が好きで、何をしたいのかを持つ力だ。堀田氏が語ったように、その土台となるのが感性だろう。JUNOPARKもまた、子どもたちが自分なりの「好き」や「大切」に気づけるよう、感性を育むことを大切にしており、時代に合った施設だといえる。

感性を育むうえで大切なのは、心が動いた瞬間をそのままにしないことだ。「なぜ面白いと思ったのか」「もっと知りたいことは何か」と一歩先へ進み、感じたことを誰かに語る。そうすることで、体験は子ども自身の「好き」や「やりたい」につながっていく。

このことは、2年目を迎えたJUNOPARKが目指す先でもある。箕輪氏は、「楽しかったという声が99%というのは、ある程度満足してもらえていると考えています。問題は、ここでの一過性で終わらずに、持ち帰って日常生活の中に些細でも楽しいことを見つけられるかどうか。持ち帰ってもらう心の動きをどう深めていくか、今後更に挑戦していきたいと思っています」と語った。

体験をきっかけに生まれた子どもたちの「好き」や「なぜ」を、家庭や学校でも受け止め、表現する経験へとつなげていく。そんな日々の積み重ねが、AI時代を生きる子どもたちの感性を育んでいくといえる。