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忙しい校務をAIで効率化!現場から生まれたGemini活用術【校務・学校DX編】

Gemini for Education 活用事例コンテスト(前編)

学校現場での生成AI活用が急速に広がっている。たとえば東京都教育庁が2026年4月に公表した調査では、調査対象となった都内公立学校102校のうち約85%の学校で、授業準備や研究などで生成AIを活用していることが明らかになった(※)。約30%だった2年前(令和5年度)の調査より、約2.8倍に急伸しており、学校現場でのAI活用が一気に本格化していることがうかがえる。

こうした背景を受け、Googleは2026年5月~7月に「 Gemini for Education 活用事例コンテスト 」を開催。全国から集まった多様な事例の中から、11事例が優秀賞に選ばれ、8月に表彰式が開催された。本記事では前編で「校務・学校DX編」を、後編で「授業・学び編」の2回に分けて、おすすめの事例を紹介する。

※『令和7年度 児童・生徒のインターネット利用状況調査』東京都教育庁(2026年4月公表)

全国から約370件! AIビギナーから熟練者まで、多様な事例が集結

今回の「Gemini for Education 活用事例コンテスト」に集まった事例は、なんと約370件。主催者側も「想定以上」と驚く数だったようだ。GEG(Google Educator Groups)をはじめとしたGoogleアプリの活用に長けた教職員はもちろん、「今年の春から本格的に使い始めた」というAIビギナーまで、幅広い層から多様なアイデアが集まった。

「Gemini for Education 活用事例コンテスト」で優秀賞を受賞した教職員

同コンテストは、先進的な取り組みを広く共有し、全国の教育現場におけるAI活用の手本として役立ててもらうことを目的に開催。募集は「小中高」と「高等教育」の2カテゴリーに分かれている。小中高は「学習・授業」「校務」「課外活動」、大学は「学習・授業」「事務・学務」と、活用シーンごとに部門が設けられた。

また審査基準は、「 先進的である 」「 誰でも使える 」「 日常的に使える 」の3点。なかでも、一歩進んだ使い方ができているかを問う「先進的である」は、評価の4割程度を占める。また、全国のお手本となるよう、高度なITスキルを持つ特定の人でなくても展開できるかどうかも、あえて審査項目に加えたという。

「Gemini for Education 活用事例コンテスト」の審査基準

前編では、17ものスキルを連携させた「自律ループ型AI」で教頭業務を効率化した事例から、音声入力による高校訪問データのカルテ化まで、学校現場の働き方を大きく変える校務DXの4事例をピックアップした。

「面倒くさい」をスキル化! 現場の課題から生まれた自律型AI校務システム

福岡市立草ヶ江小学校 教頭 西畑英彦先生

事例①:小中高部門・校務 
福岡市立草ヶ江小学校 教頭 西畑英彦先生

応募タイトル:
チャット型AIから自律ループ型AIへ

課題と背景:
・保護者対応や危機管理、地域からの問い合わせ、行政文書の作成など、多岐にわたる教頭の業務を効率化したい
・行政指定の書式や学校現場特有のトーン&マナー、個人情報保護といった制約をクリアできる品質で出力したい

実践事例:
実行判断する「Gem」、システム全体の制御盤となる「Google スプレッドシート」、17種類の「スキル(校務ごとの判断基準や作業手順)」を連携させる「自律ループ型AIシステム」を構築。事案が発生した際、概要を入力するだけで全体を統括する「ルーターAI」が自動で最適なスキルを選び、自動生成をしてくれる。

知識・制御・実行判断を分担させた「自律ループ型AIシステム」の仕組み

表彰式の会場でも驚きの声があがったのが、西畑先生が作成した「自律ループ型AIシステム」だ。

たとえば、「児童が近隣の廃墟でガラスを破損した」というトラブルが発生した場合。概要を入力すると、システムに登録されたスキルの中から、今回の事案に必要な「危機管理」「記録作成」「掲示物作成」のスキルが自動選定され、連動して動き出す。具体的には、生徒指導主幹や担任への行動指示の策定から、教育委員会にそのまま提出できる形式の指導事案記録、校内掲示用の立ち入り禁止ポスターまでを、一連の流れで自動生成するという具合だ。なお、入力時に個人名などは入れていない。

トラブルの概要を入力すると、対応計画・行動指示の策定や、指導事案記録を自動生成する
立ち入り禁止ポスターも自動生成

応募時は、Gemini Notebookに12種類のスキルを知識として持たせ、そこから呼び出すシステムだった。その後、Geminiの性能向上にともない、スプレッドシートを制御盤として挟む形に改良。スキルも5種類増えて17種類になり、ルーターAIがスキル同士を組み合わせて作業を進められるようになった。「自分が面倒だと思ったものを、その都度スキルに追加していく」と話す西畑先生。こうした柔軟さも、このシステムの魅力のひとつだ。

現在は、近隣校の教頭や教務主任にも横展開し、「たくさん使ってもらい、スキルを増やしていきたい」としている。表彰式では、Google for Educationメンバーから「高度なコーディングではなく、標準機能を使って効率的かつ効果的な仕組みを構築した点が素晴らしい。特定の個人に依存せず、他でもそのまま使える汎用性の高さが選出の決め手となった」と講評が寄せられた。

ICTが苦手な先生も挫折しない! 記録するだけの「書くだけDX」

市立札幌みなみの杜高等支援学校 岡田尚大先生

事例②:小中高部門・校務 
市立札幌みなみの杜高等支援学校 岡田尚大先生

応募タイトル:
「AIを使える学校」から「AIとともに学習する学校」へ 日々の相談・リフレクションが創る学校の記憶と自己進化

課題と背景:
・学校のDX推進の最大の壁である、教員のICTスキルの差、「新しいシステムを覚える手間」への苦手意識を解消したい
・教員が特別なITスキルを使わずに、使い慣れたシステムで迷わず利用できる環境を整えたい

実践事例:
GAS(Google Apps Script)を組み込んだ「自己進化型学校運営ナレッジOS」を構築 。指導を助ける「校内AIメンター」、厳格な「通知表所見作成エージェント」など、13種類の専門AIエージェントを搭載している。Googleドキュメントに自然言語で自由記述し、ボタンを1クリックするだけで、Geminiが記録を自動で分類・構造化し、データベース(RAG)に蓄積する。教員は、チャット画面から質問や検索をするだけで、AIが自動で質問を振り分け、的確な回答を行う。

自己進化型学校運営ナレッジOSの仕組み

「AIは先生の代替ではなく、学校の記憶と学習を支えるインフラ」と考える岡田先生が構築したのは、教員が日常の指導のことや疑問点などの相談を入力する(記録をつける)だけで、その回答だけでなく、自動的に「学校の記憶」が積み上がり、システム自体が賢くなっていく循環インフラだ。その他の新しいデータベースの追加には、新しい高度なソフト知識を覚える必要はなく、記録をコピー&ペーストしてボタンを押すだけで、データベースが積み上がっていく。

AIやITに抵抗感のある先生でも、「入力する」と「相談する」を繰り返すだけで、過去の類似事例に基づいた個別指導計画や通知表所見などの下書きを作成することも可能。生徒指導の事例や、これまで先輩教員へ相談してきた学校の暗黙知についても、チャットで相談できる。内蔵プロンプトにある「優れた指導事例を登録すると、ポジティブな賞賛を送る」といった、先生のモチベーションを高める工夫は、教育現場にいる現役の教員ならではの視点だ。

表彰式では、Google for Educationメンバーから「先生方のノウハウが、AIによって適切かつ効果的に共有されている。個別最適な学びを進める上で、非常に重要な事例になると感じた」と講評が寄せられた。特別支援学校に限らず、どの学校にも応用できる仕組みである点も評価された。

システム内AIエージェントの一覧表

「人間が判断し、AIが支援する」Geminiを活用した学校HPの内製化

兵庫県立明石南高等学校 森信頼先生

事例③:小中高部門・校務 
兵庫県立明石南高等学校 森 信頼 先生

応募タイトル:
学校ホームページの情報構造整理と魅力ある広報の発信!

課題と背景:
・従来の学校ホームページはスマートフォンでの閲覧に十分対応できておらず、必要な情報に辿り着きにくく、学校の特色が十分に伝わらない
・ページごとの構成や更新方法が統一されておらず、保守・更新が担当者の知識や経験に依存しやすい状態であった

実践事例:
Geminiを共同開発者とし、教員が主体となって学校サイトを全面内製化し、リニューアルを行った 。Geminiには、構成やコード案、エラーの原因分析、改善案などを相談。教員は、学校の課題整理や、掲載情報の選択、構成案の決定などを行い、公開後も改善を続けている。

現状分析から公開後の改善まで、Geminiに相談しながら制作を進めた

昔ながらの学校ホームページに課題を感じていた森先生は、Geminiと二人三脚で、見やすくわかりやすいホームページの内製化を実現した。最初に取り組んだのは、情報の整理だ。「どこに、誰が、何の情報を取りに行くのかがわかりにくかった」ため、掲載情報をGeminiに分析させ、「学校紹介」「在校生向け」といった利用者別の構成に整理した。

制作では、表示崩れや不具合が発生した際も、Geminiにコードや症状を提示し、原因分析と修正案の比較を繰り返した。また、共通のヘッダーやフッターを用意し、変更が必要な部分だけを触ればよい設計にした。その結果、専門知識のない他の教員でも、行事や制度変更に合わせて迅速に修正・更新できる体制が整った。

表彰式では、Google for Educationメンバーから「単にコードを生成させるだけでなく、開発の相談相手・パートナーとしてGeminiを活用されている良い事例。人間が判断し、AIが支援するという役割分担が明確な点も素晴らしい」と講評が寄せられた。

学校のホームページ、改善前と改善後

「話す」と「聞く」だけ!コードなしで実現した入試広報のナレッジ継承

東京工芸大学 入試課 橋本俊之氏

事例④:大学部門・事務・学務 
東京工芸大学 入試課 橋本俊之氏

応募タイトル:
個人の記憶から、大学の資産へ Gemini と Gemini Notebook でつくる高校訪問の「継承ループ」

課題と背景:
・担当者が変わると「前任者が築いた関係性の文脈」が途切れてしまう
・過去には、高校からいただいた提案が、担当者の交代をまたぐなかで記録に埋もれ、対応されないままになっていた

取り組み内容:
高校訪問時のメモを、Googleフォームに音声入力するだけで、スプレッドシートの「高校カルテ」に自動で追記するシステムを構築。 Google Workspace Studio のフローが動き、 Gemini が発話から要点を取り出し、「高校カルテ」に自動追記する。さらに、毎週カルテを自動で読み、果たされていない約束をメールで知らせる。

高校訪問の記録を引き継ぐ「継承ループ」の仕組み

2024年から東京工芸大学の入試課で入試広報を担当している橋本氏は、高校訪問の記録を、担当者が変わっても途切れない「組織の記憶」に変える仕組みを、コードを一行も書かずにつくり上げた。

設計でこだわったのは、訪問先で感じた微妙なニュアンスを残すことだ。たとえば、音声メモに「先生は私大の推薦に慎重らしく、時間がかかりそうな感触」と吹き込んだとする。これをAIが要約すると「慎重である」と断定した記録になりかねないが、橋本氏は「〜らしい」「〜な感触」といった表現は、断定に変えずにそのまま残すよう設計した。「推量は推量のまま残す」ことを、設計の芯にしたという。

また、複数人での利用を見据え、担当者ごとのGoogleフォームから一つのカルテに記録を集める構成で、記録者はフォームの送信者として自動で記録される。担当が変わっても、Gemini Notebookに質問するだけで、出典つきの回答が示されるため、その場で内容をさかのぼることができる。そのうえで、最終的な判断の部分は人間が行う。今後は学内への展開も目指している。

表彰式の講評では、「このフローはどこにでも活用できる。前任者からの引き継ぎを非常にうまく伝えることができて、大学の評判も高校にとって良くなる」と、汎用性の高さと円滑な引き継ぎが評価された。

話した内容が、そのままカルテの1行に。確かめるのは人

プロンプトの次は「使える場面」の共有へ

表彰式後の個別取材で、Google for Educationチームに話をうかがった。今回が初開催となった同コンテストは、多くの先生がAIを使い始めたいま、次のステップとして、プロンプトより一歩踏み込んだ具体的な活用シーンを全国から集め、共有したいという思いから企画されたという。

コンテストの反響については、「想定以上の応募があり驚いた」と話す同チーム。また、「GIGAスクール構想で新しいICT環境が整ったものの、使い慣れたツールからの切り替えに戸惑い、活用が進まなかった学校や先生もいたと思う。生成AIの活用は、そうした方々にとっても、最初の一歩を踏み出すきっかけになるのでは」と、活用事例が広がることへの期待を語った。ほかにも、「教育現場ならではの事例もとても多く寄せられ、Googleとしても大変学ばせていただいた」と、コンテストの成果を実感していた。

続く後編「授業・学び編」では、「Geminiを本格的に使い始めてわずか3カ月」という先生の実践をはじめ、AI初心者の先生でも明日から授業に取り入れられる事例を紹介する。ぜひ、こちらもチェックしてほしい。

相川いずみ

教育ライター/編集者。AIをはじめとした教育におけるデジタル活用を中心に、全国の学校を取材・執筆を行っている。一児の母としてPTAでのICT活用や、親子向けのプログラミング体験教室を開催した他、現在は、シニア向けのスマホサポートを行う渋谷区デジタル活用支援員としても活動中。