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GIGA第2期予算で実現! Googleで教員負担を軽減する校務DXとゼロトラスト
EDIX関西・日本HPブース講演レポート②
- 提供:
- 株式会社 日本HP
2024年11月6日 06:30
GIGA第2期では、端末の更新が注目されがちであるが、教員の働き方改革に欠かせない校務DXの実現も重要な課題である。文部科学省は、GIGA第2期において教育DXで達成すべきKPIを示し、ICT環境の改善を求めているが、現場の担当者は依然としてその具体的な方法を模索しているのではないだろうか。
「EDIX関西」に出展した株式会社 日本HPのブースでは、Googleソリューションを活用した校務DXをテーマとする講演が行われた。登壇者は、奈良市の教育システム基盤を構築した一般社団法人教育ICT政策支援機構の代表理事 谷正友氏。同講演では、GIGA第2期において考慮すべきICT整備について語られた。
日本HP EDIX関西ブース講演 目次(全5回)
- 約1.5倍の駆動時間、LTE5年間容量無制限モデルも登場! GIGA第2期でHPが開発した本気のChromebook
- GIGA2期予算で実現! Googleで教員負担を軽減する校務DXとゼロトラスト
- 3回目(11月20日ごろ公開予定)
- 4回目(12月2日ごろ公開予定)
- 5回目(12月12日ごろ公開予定)
教育DXに必要な整備が後まわしになっている
谷氏は、2014年より奈良市役所に在籍し、教育委員会で学校のICT整備関連の業務に携わってきた。2022年に一般社団法人教育ICT政策支援機構を設立し、現在は自治体等のICT整備に関するコンサルティングを行っている。谷氏はもともと民間企業でのシステム開発の経歴が長く、専門知識と教育委員会内部での経験を生かして支援をしている。
GIGA第1期を経て1人1台端末が子供たちに行き渡り、学校のDXは進んだかに見えるが、谷氏は「見栄えのする取り組みや短期的な成果などに取り組みが集中し過ぎているのではないか」と危惧する。教育委員会や学校はICTを活用した新しい学びの姿の実現には非常に熱心に取り組んでいるが、校務DXは部分的な対処に止まり、それを支える情報システム全体の基盤の見直しや整備にはさらに手が回っていないというのだ。
文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」では、情報システムの基盤整備についての考え方や方向性が示されているが、基盤部分を後まわしにしたまま個別にアプリを導入するなど、部分的に業務のデジタル化が行われているケースが多く、「それでは結局、先生に負担がいってしまう」と谷氏は指摘する。
例えば、出欠連絡のデジタル化ができていたとしても、実際には先生がメールやアプリなど複数のデジタル連絡手段と電話をチェックしているので、全く楽になっていない状況もあるのだという。校務DXの調査で、各業務のデジタル化の点数が高い自治体においても、現実には教員の業務負担が軽減されているとは限らないのだ。
クラウドサービスへの移行と校務DXの鍵となる「ゼロトラスト」
谷氏は、デジタル行財政改革会議の取りまとめの内容を示し、「教員が働きやすい環境を作ったうえで、事務時間を削減して子供と向き合う時間を増やし、外部の力も借りる。その先にあるのが子供たちの学びの質の向上や学習支援の充実であるはずです」と、現状の課題に対処することの重要性を確認した。
教員が働きやすい環境を作る対策になるのが、「クラウドサービスへの移行」と「ネットワークの整備などによる校務DX」だ。そして、これらの実現には「ゼロトラスト」の考え方でシステムを整備することが鍵になる。
そもそもゼロトラストとは何なのか、校務システムの現状と共に説明しておこう。GIGAスクール構想はクラウド利用を前提に進められたため、児童生徒が使う学習系のシステムはインターネットを介してクラウド上で展開されている。一方で、校務支援システムは、自治体ごとの教育委員会で独自にサーバーを持つオンプレミスで管理されていて、ネットワークが分離されているのがまだ一般的だ。
校務システムには、安全のため職員室内の校務用端末からしかアクセスできず、教員は学習用の端末と校務用の端末を使い分けることになる。結局、紙に出力してデジタルと紙を行き来するような業務フローになってしまい、効率化にはほど遠い。もちろんリモートワークもできない。
従来のオンプレミスで管理する方法は、ネットワークを分けて、境界の内側は信頼できて外側は信頼できないという発想でセキュリティが構築されてきた。それに対して、すべての通信を信頼せずに、すべてのアクセスを確認して認可を⾏う発想でセキュリティを構築するのが、ゼロトラストの考え方だ。
ゼロトラストの考え方に基づいて、厳密なアクセス制御によるセキュリティを構築できれば、校務系システムと学習系システムのネットワークを統合してクラウド上で運用することができる。教員はインターネット経由で校務系も学習系も同じ端末でどこからでもアクセスでき、両システムのデータ連携も可能になる。安全性と利便性を両立させることができるというわけだ。
こうしてアクセス制御を前提に新しいネットワークのシステムに移行することは、文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(最新版は令和6年1月改訂)や、「GIGAスクール構想の下での校務DXについて」(令和5年3月)で推奨されている。
GIGA端末の標準的なサービスを最大限に生かす
ゼロトラストのセキュリティを実現するのに必要な要素技術は多岐にわたり、下図の通り、児童生徒端末、教職員端末、校務系システム、学習系システム全体にさまざまな対応が必要となる。
ところが、「今、GIGA第2期を迎えて、児童生徒端末の更新の部分だけを考えている自治体が非常に多い」と谷氏は注意を促す。今回は児童生徒端末の更新だけをして、他の部分は更新時期が来たらまた考える……という対処を繰り返すと、その都度個別のソリューションを導入することになってシステムは複雑になり、コストばかりかかるという状況に陥りやすいのだ。
谷氏によると、実は、児童生徒端末を導入するときに契約する標準的なサービスを利用することで、コストを抑えたシンプルなシステムでゼロトラストを実現できるのだという。その具体例として、谷氏は自身が教育委員会在籍時に構築に携わった奈良市のケースを紹介した。
Googleのソリューションでゼロトラストを実現した奈良市
奈良市では1人1台端末としてChromebookを導入しているので、Googleの標準的なサービスを使うことは必然的に決まっている。そこで、有償のGoogle Workspace for Education Plusを契約して、そのライセンスに含まれる項目を最大限に生かして整備を進めた。
その結果、できるだけ追加コストを抑えながら、ゼロトラストに必要な要素技術のほとんどをGoogleのソリューションで実現することができたのだ。
ゼロトラストの考えでアクセス制御を適切に行えば、同じクラウド上に統合された校務システムと学習システムの中に、どこから誰が入れるのかという制御ができる。自治体の教職員をグループ分けしたり、教員と児童生徒を分けたりして権限を設定できる。アクセスが学校内からか学校外からかに応じて制御することも可能だ。
谷氏は、よく受ける質問についてもいくつか取り上げて説明を加えた。例えば、Googleのソリューションを使用しているからWindows端末を使えないのかというと、そのようなことはない。適切なセキュリティ管理をすることで安全に使用できる。
また、児童生徒用端末と校務系システムでは更新時期が違うことが多く、同じタイミングで入れ替えられないという場合でも諦めることはない。最終的に全てクラウドで管理することを見越して、移行期のシステム構成でオンプレミスの校務システムに安全にアクセスすることも可能だ。
システム整備は教員の働きやすさと子供たちの環境向上のため
クラウド化が実現すると、教育委員会でサーバーを持つ必要がなくなり災害対策にもなる。また、「一番大きいメリットは、クラウドに上げるとインターネットを通じて安全にいつでもどこでもロケーションフリーで仕事ができることです」と谷氏は強調する。教員の働き方改革を支える重要な基盤になるのだ。
「働きやすさと学びやすさはITによって実現できることです。ここをしっかりとゼロトラストでわかりやすいシステムで作った上で、教育の中身の課題を解決していく必要があります」と谷氏は結んだ。
講演後に谷氏に話を聞いてみると、ゼロトラストの考え方でシステムを実現できている自治体は「まだ1割もないのではないか」ということだった。関係する機器やサービスの更新時期がずれているなど進めづらい状況に谷氏は理解を示しつつ、「教育委員会の皆さんは、自分たちのやるべきことを長期的に見て欲しいですね。部分最適で対処するのではなく、全体最適を見て、その先にある学びのために取り組んで欲しいと思います」とエールを送った。
教育委員会の担当者が独自に情報収集するだけでは追いつかないことも多いだろう。文部科学省は「学校DX戦略アドバイザー」制度を設けており、教育委員会や学校は、困りごとに応じて専門性の高いアドバイザーからさまざまな支援を受けることができる。谷氏もアドバイザーのひとりだ。各自治体で、こうした制度も積極的に活用し、ソリューションを持つ企業とも風通し良く話し合うことが大切だろう。教員が働きやすい環境を整備して、その先にいる子供たちの学びやすい環境につながることを期待したい。