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約1.5倍の駆動時間、LTE5年間容量無制限モデルも登場! GIGA第2期でHPが開発した本気のChromebook

日本HPがGIGA第2期で発表したChromebook

児童生徒の端末選びは堅牢性が重視されているが、単に「壊れにくい」だけでは物足りない。GIGA第2期では、タッチペンが必須になり、デジタル教材やCBTの利用もさらに進むことが予測されるうえ、多様な学びや個別最適な学びに対応できる端末であることも重要だ。

そこで注目したいのが、日本HPが「EDIX(教育総合展)関西2024」で発表した新機種のChromebookだ。同社は、十分なスペックと性能を予算内で実現し、活用しやすく壊れにくい工夫を随所に盛り込んだ。HPの本気が詰まったChromebookを紹介しよう。

日本HP EDIX関西ブース講演 目次(全5回)

  • 約1.5倍の駆動時間、LTE5年間容量無制限モデルも登場! GIGA第2期でHPが開発した本気のChromebook
  • 2回目(11月6日ごろ公開予定)
  • 3回目(11月20日ごろ公開予定)
  • 4回目(12月2日ごろ公開予定)
  • 5回目(12月12日ごろ公開予定)

日常使いを徹底的に想定したChromebook

HPがGIGA第2期に提供するChromebookは、「より堅牢に、より活用しやすく、サステナブルに」という3つのキーワードが特長だ。端末は、基本パッケージが堅牢性と省電力化を実現した「 HP Fortis Flip G1m 11 Chromebook 」で、応用パッケージがLTE対応5年間容量無制限の「 HP Fortis x360 G5 Chromebook 」となる。

基本パッケージの「HP Fortis Flip G1m 11 Chromebook」
応用パッケージの「HP Fortis x360 G5 Chromebook」

いずれも画面とキーボード部分が360度ぐるりと回転するコンバーチブルタイプで、高い堅牢性に加え、高性能のタッチペンやオートフォーカスのカメラが備えられるなど、小中学校での日常使いを徹底的に想定した設計となっている。

コンバーチブルタイプの本体
付属のタッチペン
内蔵のアウトカメラ。撮影時にはライトが点滅する

特に基本パッケージの「HP Fortis Flip G1m 11 Chromebook」は、このEDIX関西の会期中に発表となり、初めて実機に触れられる機会となった。ブースでは新機種を紹介するセッションも連日行われ、多くの教育関係者が詰めかけた。

EDIX関西2024における日本HPのブース

とにかく頑丈に! 小中学生の使用に耐えられる設計

児童生徒が利用する端末に求められるのは、まず本体の頑丈さだ。学校現場では机上での使用時や持ち運び時の落下が起きやすく、GIGA第1期において故障の対応は大きな課題となった。HPのChromebookがコンバーチブルタイプなのは、堅牢性を実現するためでもある。

株式会社日本HP エンタープライズ営業統括 パブリックセクターDX推進営業部 本部長 松本英樹氏

株式会社日本HP エンタープライズ営業統括 パブリックセクターDX推進営業部 本部長 松本英樹氏は、「キーボードが外せるデタッチャブルタイプは、どうしてもヒンジが経年劣化に耐えられません。HPでもかつては作っていましたが、デタッチャブルは故障によるサポートコストが年ごとに上がってしまう。特にGIGA端末は5〜6年使いますからそれに耐えられるようコンバーチブルタイプにしました」と説明する。

本体には壊れにくい設計が行き届く。回転の負荷を支えるヒンジは強化され、各方向からの衝撃に耐えられるよう各所に金属板での補強が行われている。

十分に強化されたヒンジ
液晶が入る背面は金属板で補強。外周はクッション性の高い構造を十分に設けて液晶割れを防ぐ
ゆがむトラブルが多いUSBポートは金属で補強。ケーブルを差した状態の加圧試験も行っている

また、意外と多いキーボードからキートップを外すいたずらを防ぐため、表面から外せないようにキーの外周全体にスカート状にアンカーが施されている。いずれもビジネス向けのPCでは行わない設計で、子供たちの思いがけない動作や日常使いに対応する。

キートップの外周はフルスカートでアンカーが施され、表面から外せない
キーボードの下にも金属板を入れ、キーボード面からの破損からバッテリーなどの内部構造を守る

これらの構造により、米国国防総省調達基準「MIL-STD-810H」試験を業界最多の19項目クリアしているのに加えて、独自の1000回のランダム落下試験を実施済みという堅牢性の高さを実現している。

回転する装置の中にPCを入れて行われるランダム落下試験を紹介

堅牢性と軽さを両立し、圧倒的なバッテリーの持ちを実現

堅牢性を実現するためには、その分本体が重たくなってしまうのがこれまでの常識だ。ところがこの「HP Fortis Flip G1m 11 Chromebook」は、1.3kgという軽量化を実現した。確かに手に取ってみるとがっちりした安心感はありつつ軽く、曲線を描くデザインもスマートな印象だ。

曲線を感じられるやわらかいデザイン

現場で求められる堅牢性と軽さを両立できたのはなぜなのか。製品構造に詳しい同社のパーソナルシステムズ事業本部 クライアントビジネス本部CMIT製品部長の岡宣明氏は、この軽量化にはMediaTekのSoC(※)「Kompanio 520」が大きく貢献していると説明する。

※SoC(システムオンチップ):CPUを含む複数の機能を1つの半導体チップに組み込んで構成されたチップのこと

株式会社日本HPパーソナルシステムズ事業本部 クライアントビジネス本部CMIT製品部長 岡宣明氏

「Kompanio 520は消費電力が低いのでバッテリーを積む量を抑えることができました。また熱くなりにくいので、ファンレスにできるうえ、ヒートシンク(※)にもあまり多くのスペースを割く必要がありません」と岡氏。Kompanio 520に合わせてゼロから設計を行ってGIGA端末として必須の条件を整えたため、効率よく軽量化を実現できたというのだ。

※CPUの熱を排熱するための構造のこと。ファンがないタイプではヒートシンクが必須

さらにKompanio 520の消費電力の低さは、バッテリーの持ちを大きく改善した。文部科学省の「GIGAスクール構想の実現 学習者用コンピュータ最低スペック基準」(令和6年4月17日)で示されたCPUは「Intel Celeron Processor N4500と同等以上」(以下Intel N4500)だが、Kompanio 520は性能のみならずバッテリー駆動時間でも基準のCPUを大きく上回る。例えばYouTubeを視聴し続けた場合、基準となるIntel N4500が9時間のところ、Kompanio 520は15.5時間も持つということだ。

Kompanio 520とIntel N4500の比較表

授業や家庭学習で日々使用する端末は、バッテリーの持ちが非常に重要だ。松本氏は、GIGA第1期に導入したHPの端末も、現場からはバッテリーの耐久性が高く劣化しづらいと好評を得ていると話す。「高耐久性のバッテリーを用いることでバッテリー交換をしなくても使い続けられるようにし、自治体の財政負担を軽くしたいという設計思想があります」と松本氏は説明した。

スマートフォン向けSoCの開発経験を生かし子供のニーズに応える

メディアテックジャパン株式会社 社長 栫啓介氏

Kompanio 520の開発元であるMediaTekの日本法人メディアテックジャパン株式会社 社長 栫啓介氏は、「消費電力とパフォーマンスを両立する、大変バランスの良いSoCが出来ました。特に消費電力が低いというのは非常に大きなインパクトになっていると思います」と話す。

同社はもともとスマートフォン向けのSoC開発経験が豊富で、バッテリーの持ちを良くすることやマルチタスクに強いSoCの設計に長けていている。さらに、Googleとの連携も非常に強く、Kompanio 520はChromebookのChrome OSに最適化して設計されている。

消費電力の低さは、バッテリーの持ち、本体重量の軽量化、熱くなりにくいなどの特徴に直結していて、子供たちの日常利用にメリットが大きい。日本の教育分野への参入について栫氏は、「非常に重要な市場だと考えています。子供ほどニーズや求められる基準は厳しいですが、子供たちや現場の先生方の期待に応えていきたい」と語った。

HPの岡氏によると、日本のGIGAスクール構想は海外からもビジネスや教育の視点で注目されているという。HPでも日本のGIGA第2期に向けて設計された製品は、日本で先行発売された後、グローバル市場でも販売される。

なお、メディアテックとして、現在特に力を入れているのがエッジ(機器側)での生成AI処理に対応できるSoCの開発だという。既に世の中に広がるAI活用が、教育ではどのように生かされていくのか、いずれそのニーズに合ったSoCが求められるようになると栫氏は先を見据える。

無くさない!使いやすい!消しゴム機能付きタッチペン

HPのGIGAスクール対応Chromebook共通の注目ポイントのひとつが、GIGA第2期で必須となった付属のペンだ。HPでは「全国学力・学習状況調査」が2025年度以降、中学校の教科の一部から段階的にCBTに以降し、2027年度には小学校も含め全面的にCBT化される計画であることを見通し、書く問題に対応できる性能の良いペンを追求した。

キーボード上部にペンの収納トレイがある。ペンを持ち上げるとペン機能に関わるソフトウェアが起動

一番のこだわりはペンの収納場所だ。本体側面にペンを収納するタイプでは、児童生徒がペンを”入れたつもり”になりがちで紛失しやすいことから、HPでは本体のキーボードのすぐ上に収納できるようにした。たしかに常に目に入る場所で明示的だ。収納トレイに置くと磁石で吸着し、充電も行われる。

充電のピンが中央にあるので、ペンは右向き左向きどちら向きで置いても大丈夫

ペンはChromebookがサポートするUSI(Universal Stylus Initiative)規格に対応しており、4096段階の筆圧感知でスムーズにかけるうえ、ペンを使う際に手が画面に接地しても反応しないようパームリジェクションが効く。また、他のユーザーのUSIペンを使用して操作することも可能なので、先生が児童生徒の端末に書き込むといった指導もできる。なお、ペアリングが必要なく、15秒の充電で45分間使用できるので、小学校低学年など周辺機器の扱いに慣れていない年齢で使う際にも安心だ。

細やかな筆圧感知でとめ・はね・はらいも再現
パームリジェクションにより、手を画面に置いて紙と同じように書くことができる
ペンを逆向きにすると消しゴムに。CBTのときに便利!

カメラ機能については、アウトカメラにオートフォーカス機能がつき、教科書に掲載されている小さなサイズのQRコードも難なく読み取れる。インカメラにはレンズを物理的に隠せるプライバシーシャッターがついていて、不意に映り込むことを防止できるなど細やかな配慮がされている。

応用パッケージは、LTE接続が5年間容量無制限!

さらに注目したいのは、HPがGIGA第2期で提案している応用パッケージだ。応用パッケージの「HP Fortis x360 G5 Chromebook」は、eSIM内蔵でLTE接続に対応しており、しかも、同機を導入すると、LTE接続が5年間容量無制限で使用できるというのだ。通常通信キャリアと契約する接続料金とは比較にならない好条件で、HPが通信キャリアとの交渉で実現させた。

応用パッケージの「HP Fortis x360 G5 Chromebook」はeSIM内蔵

HPがLTE接続対応のGIGA端末を提供する背景には、Wi-Fiの整備にいまだに苦慮している自治体が多いことが挙げられる。岡氏によると、特に小規模校の多い自治体などでは、学校の統廃合が控えていることや自然災害の対策という側面から、ネットワーク環境の改善に投資をするよりもLTE接続にメリットを見いだすケースも多いという。接続方法の選択に「5年間容量無制限」という条件は導入の大きなきっかけとなりそうだ。

応用パッケージは、ChromebookとWindowsともにLTE対応している

なお、GIGA第2期においては、第1期で整備した端末の処分が大きな課題となるが、HPでは、現在使用しているGIGA端末をメーカーやOSに関わらず無償で回収する。これはHPのGIGA対応端末を導入した場合に機種を問わず適用されるプログラムで、回収された端末は、適切な整備を経て再生品として発展途上国で販売されリユースされる。無償回収というメリットだけでなく、グローバルに情報機器のサステナビリティを高める企業コンセプトに共感する自治体も多いだろう。

第1期のGIGA端末をメーカーやOSに関わらず無償で回収

GIGA第2期の整備について各自治体では検討が続いているところだろう。岡氏は、「基本パッケージの範囲で、頑丈で非常に軽量で子供たちが好んで持ち運べるような端末になっています。HPとして日本の教育に貢献できることをとても楽しみにしています」と第2期への思いを語った。EDIX関西の会場でも、HPのChromebookに足を止める教育関係者は多く、選択肢のひとつとして非常に有力な端末が出てきたといえる。