トピック
どの学校の、どの先生も使えるICTを目指した教委の実践とは
長野県千曲市教育委員会の電子黒板活用事例
- 提供:
- エプソン販売株式会社
2023年7月18日 06:30
ICTの得意な教員だけではなく、多くの教員が使えるようになってほしい。そう願う教育関係者は多いが、実際は教員間のICTスキルの差は埋まらず、なかなか全体の活用レベルをあげることはむずかしい。
そうした中、どの学校の、どの先生も使えるよう、ICT活用力の底上げを進めてきたのが長野県千曲市だ。同市では、ICTに関する教員研修の参加率も高く、市内の小中学校ではICTを活用した学びが日常になっている。
千曲市では1人1台端末や電子黒板を使って、どのような授業が行われているのか。同市教育委員会の取り組みを綴ったエプソンの「電子黒板活用授業事例集VOL.2」をもとに紹介したい。
1人1台端末を活用するイメージが持てない
長野県千曲市は、同県北信地域に位置する人口約6万人の自治体。山地に囲まれた自然豊かな地域で、市内には小学校9校、中学校4校があり、GIGAスクール構想からICT活用の取り組みを強化してきた。
「千曲市は決して、ICT教育が進んでいた自治体ではありませんでした」と話すのは、同市教育委員会 指導主事 町田祐介氏だ。同市では、GIGAスクール構想が始まる前まで、学校にはコンピューター教室しか整備されておらず、コロナ禍の臨時休校をきっかけに1人1台端末を整備し、本格的なICT活用の取り組みを始めた。教育委員会の組織体制を強化したのも、この頃だという。
ICT活用を進めるにあたり、町田氏が一番懸念していたことは、授業の中でどのように1人1台端末を活用するのか、どのような授業を行えばいいのか、多くの教員がイメージを持てないのではないか、ということ。「私も長年、教員をやってきましたので、その戸惑いや困り感はよく理解できました。そのため、教育委員会が”ICTを使ってください”と声をかけるだけでは活用は広がらないだろう、と感じていました」と町田氏は語る。
そこで千曲市では、どのような授業ができるのかを実際に見てもらうことが一番だと考え、市内の小学校、すべの学年の教室をまわり、1人1台端末を活用した提案授業を1時間実施。また中学校に関しては、社会科の提案授業や全教職員に対して研修を複数回行った。「児童生徒が迷いなくタブレット端末を使って、楽しく学んでいる姿を見てもらい、“自分もやってみよう”と思ってもらえる先生が増えたと思います」と町田氏は語る。
身につけるべきスキルを明確にした教員研修に、9割の教員が参加
このように、どの学校の、どの先生も使えるよう、活用推進に取り組んできた千曲市。1人1台端末の活用をさらに高めるために、電子黒板の活用についても力を入れている。そのひとつとして、同市では、エプソンの電子黒板を2022年度に完備したタイミングで導入研修を実施。この研修が効果を発揮し、後のICT活用の広がりにつながったという。
「一般的にICT機器の導入研修といえば、企業担当者の方から操作や機能を教えてもらうといった内容になりがちですが、現場のニーズとは合いません」と町田氏。そこで千曲市では、電子黒板を通して、何のスキルを身につけるべきか、1人1台端末の活用を進めるためにはどのような使い方をしていくべきか、教員に身につけてもらいたいスキルを明確に示し、それらが学べる教員研修を実施した。
具体的には、電子黒板の活用に必要な10スキルを厳選し、そのうち7つを必修スキルに、あとの3つは上級スキルに分類。ICTが苦手な先生は必修スキルを学び、もうワンランク上を行きたい先生は上級スキルが学べる、レベル別の研修を実施した。
町田氏は「電子黒板は多様な使い方ができますが、現場で本当に必要なスキルを厳選し、まずは先生方にそれを身につけてもらうようにしました。レベル別の研修にしたことで出席率が上がり、ほぼ全員の先生が参加してくれるという、価値ある研修を実施できました」と語っている。
ちなみに、これらの10スキルはむずかしいものではない。どの学校の、どの教員も1人1台端末の活用を進めるために、電子黒板をどのように活用すべきか、簡単なことから示されている。むしろ、これだけはできるようになってほしいと「スキル」という形で示されているのが教員側から見てもわかりやすい。事例集でも公開されているので、その詳細は確認されたい。
電子黒板の活用で授業の質を高める、ICTを効果的に使った学び合いへ
千曲市では、電子黒板や1人1台端末を活用してどのような授業が行われているのか。事例集に紹介されている一部を紹介しよう。
●小学2年国語:それぞれの考えを表示して、多様な意見に触れる
小学2年国語の授業では、「お手紙を書こう」の単元で友だちのすてきなところを考え、言葉で表現する活動に取り組んだ。まずは、友だちのすてきな部分を考えるところからスタート。自分の考えをタブレット端末から入力し、その内容はリアルタイムで電子黒板に共有される。こうすることで、何を書いていいかわからない児童も友だちの意見を参考に、自分の考えを書くことができるという。
その後、先生はデジタル教科書のお手本となる手紙を表示し、全員で音読した。この時も、見せたい手紙の部分だけを電子黒板に大きく表示し、ポイントとなる部分に赤と青の線を引きながらわかりやすく説明した。授業を担当した市川菜穂子先生は、「わかりやすく見せたり、伝えたりしやすく、児童にとっても理解の手助けになるのが電子黒板のメリットです」と語っている。
●中学2年国語:黒板2画面を使ったプレゼンテーションの練習
中学2年国語の授業では、プレゼンテーションの単元を学習。修学旅行のグループに分かれて、それぞれの京都観光プランを発表する活動を行った。授業では、先生が簡単にプレゼンテーションのポイントを振り返ったあと、グループに分かれてスライドの見直しやプレゼンテーションの練習に取り組んだ。プレゼンテーションの練習では、黒板を広く使って2班が同時に発表の練習を進行。先生はそれぞれのグループにアドバイスをしながら、時間を効率的に使っていた。
その後は、プレゼンテーションの本番。生徒たちは写真やアニメーションで効果的に見せたり、クイズを取り入れたりとわかりやすく伝える工夫をしている。最後はGoogle フォームに自己評価を書き込んで終了。授業を担当した遠山恒輝先生は「全体の共有スピードがアップして、生徒が学びに参加しやすくなった」と手応えを語った。
その他にも、さまざまな教科で電子黒板を活用した授業実践事例集PDF冊子が無料でダウンロード可能となっている。ぜひこの機会にご覧いただき、明日からのICT活用に役立てていただきたい。
本記事でもご紹介した千曲市の電子黒板の活用事例をまとめたPDF冊子がこちらのページから無料でダウンロードできます。
小学校・中学校のさまざまな教科の授業を取り上げ、1時間の流れに沿って電子黒板の活用ポイントを紹介。先生のコメントも掲載されており、電子黒板やICTを使うメリットが先生目線で語られています。ぜひご覧いただき、これからの教育活動にお役立てください。
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