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豊中市、子供の支援ニーズを早期把握 「こどもの社」導入
2026年6月16日 07:00
株式会社両備システムズは2026年6月12日、大阪府豊中市で実施した「こどもデータ連携実証事業」の成果を記者説明会で発表した。同事業は、こども家庭庁が地方公共団体を対象に進める「令和7年度こどもデータ連携実証事業」の一環である。
同社は、大阪府豊中市の実証事業に参加し、AIとデータを活用して、虐待リスクがある子供への支援プロセスを確立。支援が必要とされた5人に対して、アプローチと状況の聞き取りを実施し、2人に個別支援を行った。同社では、早期発見や予防的支援の有効性を確認できたとしている。
情報共有とSOSを出せない家庭を把握する課題
両備システムズ 公共ソリューションカンパニー こどもDXグループ グループ長の丸川文彦氏は、実証事業参加の背景について「児童相談所における児童虐待相談対応件数が増加傾向にあり、2024年度には全国で22万3691件の対応が行われている」と語った。
丸川氏は「支援ニーズの拡大に現場の体制が追いつかず、組織内で横断的な情報共有ができていないことや、SOSを出せない家庭を早期に把握できないといった課題がある」と説明。組織内で横断的に情報共有ができ、潜在的に支援が必要な子供や家庭が把握できる仕組みが必要と考えていたという。
一方、豊中市では、これまでの相談や虐待通告を契機とした支援にとどまらず、事象が発生する前にリスクを検知し、事前介入による積極的な予防的支援に改革していく必要があると考えていた。今回の実証実験は、両者の課題感が合致し、実施したものとしている。
連携データの分析で「リスクが想定される子供」を抽出
今回の取り組みは、データ連携とAIを活用したリスク項目の設定支援、システムによる判定、人による判断を組み合わせた支援プロセスを確立したのが特徴だ。
両備システムズでは、同社の公共部門や医療部門、教育部門などが持つ子育て関連のノウハウを集約させた子育て関連データ連携プラットフォーム「こどもの杜」を提供。自治体や医療機関、保育園、幼稚園、学校、児童相談所、そのほかの子育て関連施設から必要な情報を収集し、フォローが必要な家庭や子供を早期発見し、プッシュ型支援の実施につながるサービスの提供を目指してきた。
具体的には、豊中市の住民基本台帳や福祉に関する情報、母子保健や教育分野などの関係部署が保有するデータを連携するとともに、情報セキュリティを担保するために、マイナンバーネットワークを活用。豊中市のデータ共通基盤と、こどもの杜システムを連携したほか、教育センターの保有データや、おやこ保健課やこども安心課、児童相談所の保有データも連携している。
これらの連携データを分析。リスクレベルを1~23まで設定し、数値が大きいほどリスクが高いと判定した。レベル11以上は、「リスクが想定される子供」として抽出し、抽出結果をもとに、児童福祉や母子保健、教育分野の専門職が参加する合同ケース会議を行い、データだけでは判断できない状況を捉えながら、支援の必要性や方針を多角的に検討したという。
データ連携の実証については、2025年7月から2026年3月に、豊中市内の6万4600人の子供に関するデータを日次で連携し、こどもの杜において、リスクレベルを判定。リスクレベルが11以上だった464人に絞り込み、その中から63人をこども家庭センター合同ケース会議で精査する対象者とし、専門職による支援検討を実施した。さらに支援が必要とされた5人に対して、保健師や教員のほか、必要に応じて児童相談所が介入し、状況の聞き取りを実施し、2人の個別支援を行った。
こどもの杜では、リスクレベルによる数値情報だけでなく、詳細な情報についても参照できるようになっており、保健室の利用が多いことや相談履歴があること、家庭内に要介護者がいることなど、リスクレベルの高さにつながった要因から、対応策を検討できる。
今回は実証実験ということもあり、広く抽出した結果、レベル11以上で464人が対象になったという。それにも関わらず実際の支援対象が、わずか2人だったことについては、精度的な問題ではなく、実証試験としての側面が強いと説明した。
個別支援を実施した一人は、ひとり親家庭であり、高校から引きこもりになった子供で、病院への受診を推奨し、退院後の高校への再入学を提案。継続的な見守りを行っているという。
もう一人は、発達に遅れがあり、夜泣き対応での相談履歴があった子供で、自動発達支援サービスを提供するとともに、親に対しては訪問看護の利用を開始する対応を行った。これらのケースでは、統合したデータからの支援方策の検討が行われたことや、状況の早期把握、事案の深刻化を前にした対応が可能になったという成果が生まれたと評価している。
豊中市 はぐくみセンター長兼こども安心課長の後藤良輔氏は、「虐待リスクと考えられるアラート項目をこどもの杜システムに設定することで、リスクが高いものの、支援が届いていない子供や家庭を抽出できる仕組みが整った」としている。
豊中市では、こどもの杜から抽出したデータをもとに、月1回の割合で、合同ケース会議を開催するほか、変化量の推移をもとに、急激にリスク値が上昇している子供については、随時対応を図ることにしているという。
AIは「リスク項目の設定支援」に活用
これまでは、職員の経験に基づいて、支援対象者の抽出を行う項目と「しきい値」を設定していたが、今回の取り組みでは、AIが既存の条件設定の見直しや新たなリスク判定項目としきい値を設定。過去のデータやこども家庭庁のガイドラインをもとに、統計的手法を用いて、項目などの分析や抽出を行っている。
具体的には、学校の欠席数や、母親が母子検診を受信していないといったことを設定した。また、近隣に大型商業施設ができたことでも状況が変化するため、それらも条件設定に反映。設定条件は随時見直しを行う。AIを活用することで、条件設定における職員の業務負荷を軽減するほか、職員が支援対象者と向き合う時間を増やすことができ、支援に注力できるようになったという。
丸川氏は、「連携データをもとに、リスクレベルを計算するための条件を設定し、支援の優先度やリスクレベルの推移を可視化する仕組みの構築を支援できた」としている。また、AIの活用は条件設定やしきい値の設定にとどめているとコメント。
「AIを活用して、直接対象者を抽出するケースもあるが、精度が高まらない課題が生まれている。現時点では、AIによってブラックボックス化した中で判断し、対象者を抽出することにリスクを感じている。必ず人によるスクリーニングが入るという状況の中で利用するようにしている」と述べた。
豊中市では、今回の実証成果をもとに2026年4月からこどもの杜を全国で初めて正式導入した。今後、豊中市では、リスク判定に用いるデータ項目や評価方法の見直し、個人情報の適切な取り扱いに関する整理を進め、実態に即した支援判断につなげていく考えだ。
また、両備システムズでは、今回の成果をもとに、自治体における分野横断的なデータ活用と、現場の判断を支える仕組みづくりを支援するという。
両備システムズは、岡山県に本社を置く両備グループの情報システム企業で、行政や医療機関などの公共分野のほか、流通や物流、交通、製造、アパレルなどの民間企業を対象に、幅広いソリューションを提供。2030年度には売上高500億円を計画し、西日本ナンバーワンのICT企業を目指している。
学校向けソリューションとして、統合型校務支援「RYOBI-校支援」を開発。学籍や成績、出欠、保健管理などを一元管理でき、全国1400校が導入している。また、学校と家庭をデジタルで接続する「保護者連絡システム」や、教育委員会向け相談管理システム「教育相談システム」などを製品化している。
一方で、福祉/保健向けソリューションとして、住民記録や税務、水道、農業などの自治体向け基幹システム群を提供し、これらを全国1086市区町村が導入。児童手当や障害者福祉、子供子育て、学童保育などの福祉領域に拡張した「R-STAGE 福祉情報」、家庭児童相談や児童相談所向けの「R-STAGE 家庭児童相談支援」、母子保健のデジタル化をベースにした子育て支援システム「ネウボラかるて」などを提供している。
また、こども家庭庁によるこどもデータ連携の実証事業では、今回の豊中市のほかに、埼玉県美里町・川島町の実証実験に、分析主体者として参画した経緯がある。こどもの杜は、これらの実績をもとに構築したものであり、こどもデータ連携システムのモデル仕様書に、唯一適合したサービスとして、デジタル庁の「デジタル地方創生サービスカタログ」に登録されている。
同社では、今回の実証実験で、課題解決につながる成果が証明されたことで、こどもの杜が、社会実装フェーズへと移行できると判断。2030年度までに、30団体への導入を計画し、売上高5億円を目指す。


































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