トピック
Copilotが拓く、教員の業務の効率化と教育の新たな可能性
マイクロソフト 教育DX対談企画(後編)
- 提供:
- ダイワボウ情報システム株式会社
2024年12月26日 17:15
教育現場では、STEAM教育や探究学習など教科横断的な学びが広がりを見せている。このような学びを実現するためには、教員が抱える業務負担の軽減が欠かせない。その鍵を握るのが校務DXだ。生成AIなど新しいテクノロジーが普及しつつある今、学校現場に適した校務DXは何か。
前編 では、つくば市で校長や教育委員会を歴任した毛利靖氏とマイクロソフトの青木智寛氏に、STEAM教育や探究学習などの必要性や実践のポイントについて語ってもらった。後編では、AIを活用した校務DXの可能性や教員の働き方改革について深掘りする。
前編:子供たちの未来を切り拓くSTEAM教育の力、成功の鍵と教員の役割
後編:Copilotが拓く、教員の業務の効率化と教育の新たな可能性
まずはGIGA端末の契約の再確認を。校務DXのクラウド化も課題
青木(以下、敬称略) ICT活用や校務DXに対してどのように取り組めばよいのか、課題を抱えている自治体や学校も多くあります。毛利先生がいらしたつくば市立みどりの学園義務教育学校は、先進的な実践事例として視察に来られる方も多かったのではないでしょうか。
毛利 はい、年間2,000人ぐらい視察に来られていました。でも、半分ぐらいの方は「これはみどりの学園だからできるんですよね」と仰るんですよ。それで、「あなたの学校では、どんな活用をされているんですか?」と改めて話を聞くと、GIGAスクール端末の契約状況を正確に把握していない学校が意外に多いです。校務DXの前に、まずはこういう部分を押さえておくことって大切だと思います。
青木 仰る通りですね。
毛利 たとえばね、Microsoft 365 Educationには、先生1人に対して児童生徒40人分のライセンスが付いているタイプもありますよね?
青木 はい、Microsoft 365 Educationの教育機関向け総合契約(EES)ですね。
毛利 そうそう。それを知らない人が多いんですよ。先生が使えても、児童生徒は使えないと思い込んでいる。
青木 たしかに、総合契約をされていても使われていない自治体も多いです。総合契約では、豊富なアプリが使えるだけでなく、基本的なセキュリティ機能についても、児童生徒も使えるので多要素認証やウイルス対策もできます。ほかにも、ラベル付け暗号化で先生用と児童生徒用でデータを暗号化する機能も使えますので、先生用のデータがうっかり児童生徒に流れても、子供は見れないので安心です。
Microsoft 365 Educationは、シングルサインオンに対応していますので、どのOSのGIGAスクール端末でも活用いただけます。ぜひ、先生だけでなく子供たちも使えるよう、うまく生かしてもらいたいですね。
毛利 そうですよね、せっかくあるのに使わないともったいないですよね。あと、校務DXに関しては、文部科学省が推奨しているクラウド化がまだまだ進んでいないと思っています。これがもっと広がっていくといいのですが、1市町村だけでクラウド化に移行するにはコスト的にネックなのでしょう。
セキュリティの面でも、昔はオンプレミスの方が安全という神話がありましたが、今はそうとも言い切れない。クラウドの方が履歴は残りますし、何重にもセキュリティがかけられるので安全です。そういう風に変わってきていることを教育現場も知らなければいけません。先生方は今、異動する度に市町村ごとに異なる校務支援ソフトを使わなければならない状況です。そんなことを繰り返していると事故も起こりますから、せめて都道府県単位でクラウドによって統一されると良いですね。
Copilotで広がる授業や教育、便利さの実感できるTeamsの生かし方
毛利 最近は、生成AIが本当に便利になりましたね。私もよく、Microsoft Copilotを使っています。
青木 ありがとうございます。Microsoftの最新の生成AI、Microsoft 365 Copilot(以下、M365 Copilot)では、他の先生が作ったスライドや指導案を、自分のやりたい授業に生かせるような形で作り変える、といったことも可能になっています。OneDriveを使って学校内でうまく共有していただけるようになると、授業も変わってくると思います。
たとえば、ある先生が「この生徒が持っているこういう興味・関心を伸ばせそうだ」と発見して、それをOneDriveにファイルで共有しておくと、次にその生徒を担当した先生に対して、生成AIが「学校にあるこの道具や教材を与えるとさらに伸びる」と提案が、今すでにできる状況になっています。
毛利 それは、すごいですね。初めて授業する若い先生や、1年生を初めて担当する先生なんかに役立ちそうですね。ちなみに、M365 Copilotでは、教育委員会や学校の中で蓄積したコンテンツを利用して組織内でデータベースとして使うようなこともできるのですか?
青木 はい、それも実現できます。
毛利 おお、いいですね。それなら、みんなで共有したものを安心して使えますね。あと、学校内の情報共有は、Microsoft Teams(以下、Teams)が本当に便利ですね。私がみどりの学園にいたときは、研究部の先生たちが、ICTのノウハウをどんどんTeamsにアップしていました。「便利なショートカットがあります」とか、そんな小さなノウハウでも動画に撮ってTeamsに入れておくと、後から、必要な人が必要なときにスマートフォンでも見られて便利なんです。
青木 たしかに、そうですよね。ただ、学校内でTeamsなどで情報共有をするとき、「Teamsに投稿する先生がいつも同じ」とか、「作ってはみたものの、あまり使われない」といったお悩みもお聞きします。校内で活用が広がるコツを知りたいです。
毛利 そうですね、たぶん、そういう場合は、どこかでやらされている感があるんでしょうね。私たちの場合、動画クリップはやっていて楽しかったし、パソコンで作ったものがスマートフォンで見られると本当に便利だという実感がありました。やっぱり、この便利さを先生方が実感できるかどうかがポイントだと思います。
Copilotに関してもそうです。私は便利さを実感したくてどんどん使ってますし、Copilotの個人向け有料版「Copilot Pro」も使っています。これだと、PowerPointのスライドに合う挿絵を見つけてくれたり、会議の議事録を作るのも、Wordで会話の全文を自動で文字起こしして、それをCopilotで議事録としてほぼ読める状態にしてくれるので、本当に便利ですよ。さらに「この内容を100字に要約して」といったこともできます。
青木 そうですね、先生方の業務でもCopilotはかなり役立つと思います。先にご紹介したM365 Copilotは、Copilot Proと同様にアプリ内で生成AIが使えるライセンスです。こちらは組織向けに作られており、組織でしか使えない機能があることが特徴です。たとえば、TeamsのCopilotでボタン一つで簡単に議事録を作成してもらうこともできますよ。
毛利 そうなんですね。それは、さらに便利に使えそうですね。
Copilotで保護者向けの配布物から遠足の日程、小テストの作成まで実現
青木 毛利先生は、Copilotをかなり活用されていますが、ほかの先生方にもCopilotの活用は広がっていますか?
毛利 そうですね。生成AIを使って職員会議の議事次第をつくる事務の方がいました。ほかにも、先生方からは、社会の授業などで地図を使うときに便利だと聞きました。「○○県の地図を入れて作成して」とCopilotに指定すれば良いので、授業作りが簡単なったと聞きます。保護者向けの文章を作るのにも便利ですよね。
変わった使い方だと、遠足の日程なんかも、Copilotを活用している先生がいました。行く場所を指定するだけで一瞬で日程を作成してくれて、たたき台としては十分なクオリティですし、負担軽減になりました。ほかにも、運動会の落とし物のアナウンスの原稿を作ったところもありましたよ。生成された文章をそのまま使うのは違和感もあるので、少し手直して使っていました。
青木 生成AIで、完璧なものを出すのはまだ難しいので、最終的には人間が手直しして仕上げる形がベストですね。
毛利 条件をうまく指定してやれば、かなり精度も上がる印象です。
青木 私が、先生方によくご紹介しているCopilotの活用法は、テスト作成です。M365 Copilotが使えると、FormsでもCopilotが使えるので、小テストを作るのも一瞬でできます。
たとえば、「文科省の学習指導要領を参考にして、小学校理科の『流れる水のはたらきと土地の変化』の単元の定着度を測るための小テストを10問作ってください」と指定すると、4択式や複数選択式、単文記述式などをうまくちりばめて10問をパッと作ってくれます。問題数や出題形式を変えることも、プロンプトで書けば指示通りのものを作れます。
最近は精度がさらに上がっていて、高校数学の問題も作成できるほどになっています。こうした機能を活用すると、授業中に「ここまで教えた内容をテストしてみたい」と思いついたらその場でテストを作って生徒に出すこともできます。今までになかった指導ができるようになる、という点も大きいのではないでしょうか。
校務のクラウド化によりロケーションフリーを実現し教員の働き方改革を
毛利 校務DXがもっと広がって、先生方の働き方も改善したいですね。
青木 そうですね、ご紹介したTeamsやFormsなどのアプリは単体でも便利に使えますが、そのアプリとアプリをつなぐための自動化アプリ「Power Automate」を使っていただくと、さまざまな操作や業務の自動化が可能になるので、作業効率化や業務時間の削減にお役立ていただけます。
たとえば、誰かがFormsに回答を投稿したら、自動的にその結果をTeamsに投稿したり、その結果を自動的にメールに送ったりすることもできます。簡単なプログラムを組むことで学校独自の仕組みを作ることができるので、先生全員の業務効率化にもつながります。Power Automateは、Microsoft 365 Education A1ライセンスにも含まれていますので、ぜひ活用いただきたいですね。
毛利 なるほど、どんどん自動化できるのは良いですね。特に、子育て中、介護中の先生方は、時間に追われている方が多いので、少しでも楽になるといいですね。
あとは、これから校務がクラウド化されていくと、学校でも、家でも仕事ができるようになるので、先生の働き方自体がもっと多様になってほしいです。家でも仕事をしろ、という意味ではなく、家でも安全に仕事ができる環境になると知ってほしいですね。クラウドならパソコンの中にデータは残りませんし、WindowsのBitLocker機能でドライブが暗号化されていれば、万が一パソコンが盗まれても情報漏えいも防げます。
私は、このまま全国の自治体で校務のクラウド化が進めばね、夏休みなんかは先生も自宅で作業できたり、普段も児童たちが下校したら家で仕事ができるような時代が来るんじゃないかと思っていますよ。
青木 そうですね、コロナ禍前はまだまだ少なかった先生方の在宅勤務も、校務のクラウド化でかなり進みました。これからも、さらにAIやICTを活用していくことで、先生方の教え方・働き方が変わっていくと思いますので、私たちも良い教育環境をつくることに貢献していきたいと思います。
AIの普及が進む中、校務DXはもちろん、授業の進め方や子供たちの学び方なども見直す時期に来ている。AIの活用が広がるからこそ、人間にしかできないことや学校ならではの役割を再発見することが重要だといえる。教員がその価値を追求できる環境を整えることが、これからの質の高い教育につながっていくだろう。
STEAM Lab 実証研究校 活用事例&インタビュー記事
https://sip.dis-ex.jp/article/223