トピック

教育データを個別最適な学びにどう落とし込めば、学力向上につながるのか

大阪府箕面市の「tomoLinks」活用事例

箕面市立豊川北小学校5年生の授業の様子

40人の児童生徒に対して、先生ひとりで個別最適な学びを実践するのはむずかしい。全員の習熟度を把握し、一人ひとりに合った課題を用意して、さらに個別の質問やアドバイスも対応していくと仕事量は今以上に増えていく。

そんな個別最適な学びを教育データの活用で効率的に実践しているのが大阪府箕面市だ。同市では、教育データを収集して分析し、個別学習に落とし込む環境を学習支援サービス「tomoLinks」で整備、さらに教育データ活用の範囲を広げて、教員の授業改善や若手人材の育成にも生かす。同市の取り組みを紹介する。

紙の連絡帳を全小中学校で廃止、日常でのICT活用を加速

大阪府の北西部に位置する箕面市は、人口約13万5千人、「子育て・教育日本一」を掲げ、保育や教育の充実に力を入れる自治体だ。市内には小学校12校、中学校6校、小中一貫校2校があり、約1万3千人の児童生徒が学んでいる。ICT活用についても、GIGAスクール構想前から小学4年~6年生を対象に1人1台端末を導入するなど積極的に進めてきた。

箕面市では、長年にわたって、エビデンスに基づく教育施策にも力を入れているのが特長だ。市独自で2012年から「箕面子どもステップアップ調査」を小学1年生から中学3年生まで実施。小中学校の9年間を通して、学力・体力・生活状況に関するデータを収集し、教員の指導力向上や学校経営の改善、施策の立案に生かしている。その一方で、近年は、ベテラン教員の大量退職と中堅教員の不足、若手教員の育成という課題も抱えている。

1人1台端末の活用も当たり前になっている箕面市

そんな同市が、GIGAスクール構想に合わせて、個別最適な学びと協働的な学びをサポートする学習支援サービスとして導入したのが「tomoLinks」だ。同サービスをメインに、ICTを活用した協働学習や遠隔授業などが日常的に行われているが、なかでも驚くのは、市内の全小中学校で紙の連絡帳を廃止し、tomoLinksのデジタル連絡帳に移行したこと。毎日、紙の連絡帳に書く時間を削減しつつ、保護者との新しい関係構築に役立っているという。

また、教員が自作することが多い動画教材は、動画視聴サイトによる共有をやめ、ある程度クローズドな環境にあるtomoLinks内で共有。教員が安心して利用できる環境を整備した。他にも、tomoLinksの「こころの日記」も活用し、児童生徒のメンタル面もサポートしている。

箕面市教育委員会 学校教育室 指導主事 岩永泰典氏

箕面市教育委員会 学校教育室 指導主事 岩永泰典氏は、tomoLinksの導入について「デジタル連絡帳、オンライン授業システム、動画教材の共有、AIドリルなど、学校で使うICTツールがtomoLinksひとつにまとまっていて、ICTに不慣れな教員も使いやすいと思いました」と評価している。

「先生×AIアシスト」で児童生徒の60%が学力向上

さらに、教育データの活用に力を入れている箕面市では、2020年度から文部科学省の「新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業(先端技術の効果的な活用に関する実証)」にコニカミノルタと取り組んでおり、tomoLinksの「先生xAIアシスト」を先行導入している。

同市が毎年実施する箕面子どもステップアップ調査と、これまで蓄積した過去の膨大な教育データを照らし合わせて分析できる箕面市独自のAI分析モデルをコニカミノルタが作成。箕面市で学んだ児童生徒、一人ひとりの学習状況や、今の学びがどのように推移していくかなど分析しているという。

教育データ活用のメリットは、一人ひとりのつまずきがわかることと岩永氏

ただし、教育データの分析だけができても個別最適な学びにはつながらない。そこで箕面市では、tomoLinksを通して効率的な個別学習の環境を実現。その結果、60%以上の児童生徒の学力が向上したほか、デジタル学習教材に取り組む児童生徒も以前の5.5倍に増えたという。この詳細については冊子をご覧いただきたい。

「授業診断」で若手教員の育成を実現

また近年大きな課題となっている、ベテラン教員の大量退職と中堅教員の不足、若手教員の育成の対策にもtomoLinksを活用。教員や児童生徒の動きをデータ化できる「授業診断」サービスを活用して、ベテラン教員の授業力や指導技術を若手教員に受け継ぐ取り組みも行っている。

具体的な方法としては、教室内にセンサーとマイクを三脚で設置して授業を撮影。録画データからは、児童生徒の視線や挙手率、教員の動線、教員と児童生徒の発話比率の4点が解析され、データで可視化される。そこから教員自身に授業の振り返りや授業改善の気づきを促すことができるほか、ベテラン教員と新人教員の比較も可能だというのだ。

授業診断の準備中。教室内にセンサーとマイクを三脚で設置して授業を撮影する

冊子では、ベテラン教員と新任教員の比較データが見られるほか、個別最適な学びの学習環境も紹介。その他にも、同市が取り組みを進めるうえで注意したポイントなどが書かれており、PDF冊子が無料でダウンロード可能となっている。ぜひこの機会にご覧いただき、次にめざす学びにお役立てていただきたい。

★箕面市の『tomoLinks活用事例冊子』
PDF冊子を無料でダウンロードし、印刷して配布可能

本記事でもご紹介した箕面市の教育データ活用。同市がtomoLinksを通してどのように教育データを実践に落とし込んでいるのか、活用事例をまとめたPDF冊子がこちらのページから無料でダウンロードできます。ぜひご覧いただき、これからの教育活動にお役立てください。

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