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教育現場もゼロトラストへ! 校務支援×ネットワークで教職員の働き方を変えるKDDIの挑戦

教育現場に1人1台端末が整備されても、教職員は校務に追われたまま――GIGAスクール構想で学び方や教え方が変わっていく大事なタイミングに、教職員が身動きが取れないもどかしさは、各方面から聞こえてくる。

こうした声を受けて教育事業の拡大に踏み切ったのが、KDDI株式会社(以下、KDDI)だ。同社は、フルクラウド統合型校務支援システム「BLEND」とビジネス現場で培った、ゼロトラスト(※)を活用した働き方改革ノウハウを掛け合わせ、学校現場の働き方改革支援を2022年8月に発表。

同サービスでは、これからクラウド化が本格化する教育領域にゼロトラスト環境を提案し、BLENDで教職員の働き方改革をめざす。その先にどのような変化を学校現場にもたらしてくれるのか、KDDI ソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部 事業企画部より山田 健人氏と関 崇氏、BLENDの開発元であるモチベーションワークス株式会社(以下、モチベーションワークス)の執行役員副社長 野本 竜哉氏に話を聞いた。

※ユーザー・端末・ネットワークなど、すべてを「信用しない」前提で、重要な情報やシステムへのアクセスの安全性を常に検証して脅威を防ぐ、というセキュリティの考え方

≫フルクラウド統合型校務支援システム「BLEND」の詳細はこちら(外部サイト)


学校現場との関わりの中で実感した、業務改善の重要性

もともとKDDIはこの発表以前から教育事業として、GIGAスクール構想前から私立学校を中心にiPadやChromebookの端末導入、ネットワークの整備や教員研修など学校現場のICT化の支援に取り組んできた。個人向けには、就業体験できる施設「キッザニア」や英会話「AEON」の運営をするほか、最近ではau PAYを使った学園祭をサポートするなど、教育に力を入れている。

教育領域におけるKDDIグループの取り組み

同社では、そうした教育事業において学校との関わりが増える中、児童生徒のICT活用を支援するだけでなく、教職員の業務負担の軽減に取り組んでいきたいと考えるようになったと、KDDI 山田 健人氏は語る。

KDDI株式会社 ソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部 事業企画部 山田 健人氏

「以前から、先生方の校務は膨大な作業量が問題になっていました。さらに、ICT化によって新たな業務が発生し、教職員の方の負担は増えつつあります。そのためKDDIでは、ITを生かした業務改善なら貢献できると考え、校務支援システムに注目するようになりました。教職員の方には効率化によって生まれた時間で、児童生徒との関わりを増やし、本来の教職員の仕事に注力してもらいたいと考えています」(山田氏)。

この学校現場の働き方改革のために、KDDIが提供する校務支援システムとして、数あるEdTechサービスから選択したのが「BLEND」だ。さらに、これからの校務支援システムは、教職員がいつでも、どこからでもアクセスできるクラウド環境や、それに伴うセキュリティも求められる。そこでKDDIでは、BLENDと組み合わせて「KDDIビジネスオンラインサポート」と「KDDI Business ID」をセットで提供できるようにし、教職員の柔軟な働き方を実現できる安心・安全な環境を用意した。

KDDIとモチベーションワークスが提供するサービス

モチベーションワークスとの業務提携について山田氏は、「先進的なクラウドサービスを提供するEdTech企業で、KDDIとの親和性があると共に、学校現場の働き方改革を推進する上で最適なパートナーだと感じました。モチベーションワークスは教員や教育業界出身の社員が多く、学校現場を分かっている人が多いことや、先生の意見を聞いて製品開発を進めている点が好印象でした。KDDIが持っているセキュリティーサービスとモチベーションワークスのBLENDがタッグを組むことで、これからの教職員の方の業務を変えていける提案ができると考えています」と語った。


クラウド上で一元管理し、アクセス権限のコントロールも細かく設定

BLENDは、すべての機能をクラウド上で使えるフルクラウド統合型校務支援システム。「サーバーの設置不要」「日常的にアップデート」「マルチOS・マルチデバイス対応」といったクラウドのメリットを生かし、教職員が場所や時間にとらわれずにアクセスできるほか、校務における負担を軽減してくれる。

「BLEND」で提供されている機能の一部
KDDI株式会社 ソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部 事業企画部 関 崇氏

KDDI 関 崇氏はBLENDについて、一元管理しやすいところをメリットに挙げた。「多くの学校では、出欠管理、成績処理などさまざまなデータを複数のシステムで管理したり、自前のエクセルで管理したりと複雑になっている傾向があります。また教職員の出退管理や出張申請、共用備品の管理なども、それぞれに別のシステムを導入しているケースもあります。その点、BLENDではこれらのデータをひとつのシステムで扱えるのがいいですね。一見、クラウドサービスなので当たり前のように感じますが、オンプレミスの校務支援システムに後からクラウド対応した場合は、ここまでの一元管理はむずかしいかもしれません」(関氏)。

モチベーションワークス株式会社 執行役員副社長 野本竜哉氏

BLENDを手掛けるモチベーションワークスの執行役員副社長 野本 竜哉氏も、「BLENDはフルクラウドだからこそUIが優れた設計になっており、特にアクセス権限がコントロールしやすいのがメリットです」と語る。学校ごとに「保護者に」に見せたい情報を「ON」「OFF」で切り替えたり、 情報にアクセスできる人や時期などを詳細に設定できる。

野本氏は、BLENDでは校務支援システムは”先生だけのもの”ではないと考えていると話す。「BLENDは、保護者にとっても嬉しいサービスを学校が安全に提供できるようになっており、たとえば、保護者が自分のスマートフォンの専用アプリから出欠の連絡をできるようになっています」と語る。

これを聞くと、「出欠の連絡くらいなら、わざわざBLENDを使わなくてもGoogleやMicrosoftのフォームを使えばできる」と思われる方もいるだろう。

しかし、学校のシステムから見ると、これらのフォームで収集された出欠データは学習系のネットワークで管理される。そのため、出欠データを管理すべき校務系のネットワークにデータを転記する必要がある。つまり、効率化の目的で活用したICTツールであるにもかかわらず、わざわざデータを移し替えるという作業が発生しているのである。このような校務系と学習系の壁が、今の1人1台端末の活用が進む学校現場で、さまざまなEdTechサービスの活用を阻んでいるのである。

野本氏は、「BLENDはそもそも、校務系システムの中に保護者との連絡機能を設けているので転記作業は発生しません。このように保護者にとっても、先生にとっても嬉しい設計になっているのが特徴です」(野本氏)。


業務改善の効果はありつつも、クラウドに対する抵抗は根強い

実際にBLENDを導入している学校や自治体からは、ポジティブな反響が寄せられているようだ。

なかでも、BLENDによって校務がクラウド化されたことは、教員たちの反応も良かったという。今までは職員室でしか作業できなかったが、BLENDを使うようになってからは、教員が自分の教室や自宅からアクセスできるようになった。忙しい学期末や年度末は特に喜ばれた、と野本氏は語る。

また野本氏は、コロナ禍においても、校務がクラウド化されたことで業務を止めることなく、教育活動を継続できたことや、学級閉鎖や学年閉鎖の対応も保護者への連絡がスムーズにできた点も成果に挙げた。

ほかにも、私立学校の事例になるが校務効率化の成果として、紙とオンプレミスのシステムを使った出席簿登録とBLENDを比較し、年間80.7%の校務時間削減を達成したことや、システム経費が83%削減された例を挙げた。今までに比べて、ペーパーレスが進み、サーバーも不要になるため、時間削減やコスト削減のメリットは大きい。

年間80.7%の校務時間削減。出席簿登録の業務を「紙とオンプレミスのシステム」と「BLEND」で比較したもの。担任47名が年間200日に作業を行なった場合
システム経費の効果。7年間使用した際の「初期導入費+年間保守費+カスタマイズ費+入試費用」の場合

一方で、教職員や教育委員会には今も「クラウド=危ない」といったイメージが根強い。野本氏によると、文部科学省が示す「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」でクラウド化を推奨していたり、校務支援システムのクラウド化に対して予算化の動きが出ていたりしても、クラウドは危ない、情報が洩れるという意識がまだまだ残っているという。

GIGAスクール構想がめざす学習環境(文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインハンドブック(令和4年3月)」より抜粋)

「適切にアクセスをコントロールすれば、クラウドは“危ないものではない”と分かってもらうことが重要です。これから学校現場では本格的にクラウドが広がっていきますが、KDDIのようなセキュリティやネットワークに強いプロフェッショナル集団と組むことで、BLENDへの信頼感も高まると考えています」と野本氏は語った。


KDDIがBLENDでめざす、新しい教育のカタチと教員の働き方

このように、校務支援システムの活用で学校現場の業務改善に挑むKDDI。同社はすでに法人向けには働き方改革に必要なセキュリティサービスを提供しており、そのノウハウを今度は教育分野で活かしていくことになる。

山田氏は、BLENDとともに教職員の方の働き方改革を進めていくが、そのためにも学校のゼロトラスト化は欠かせないと語る。「KDDIはこれまでさまざまな企業に対しゼロトラストの環境をご提供してきましたが、そこで培ったノウハウを学校向けに最適な環境でご提供していきたいと考えています。2台持ちのPC、学校でしか作業ができない働き方、いずれもゼロトラスト化を実現していくことで解決できますし、業務を効率化することは可能です」と語った。

一方で、成績などの機微情報が教員⽤PCに意図せず保存されてしまい、それがPCの盗難や紛失で外部に漏れるといった心配もあるだろう。学校現場に限らずどこでも起こり得る、悪意のない過失から教員や学校現場をどう守るか。KDDIのソリューションは、このような運⽤⾯における”やってしまった操作”についても、教員が加害者・被害者にならないよう対策できるという。

関氏はこれからのKDDIにおける教育事業について「個別最適な学びや協働的な学び、学習の効率化、探究学習やプログラミング教育など、新しい学習も含めて提供していきたい」と語った。AEONやキッザニアなど個人向け教育サービスも扱っている同社は、こうした個人向けの教育コンテンツを学校へ展開することも視野に入れて検討中だという。

そして安心安全なクラウド化の恩恵は、教職員だけではなく、児童生徒の学びにも生かされなければならない。現状では、タブレット端末で使うAIドリルや授業⽀援ソフトの学習履歴は、校務⽀援システムと連携していないことが多い。しかし、今後さらに端末での学習活⽤が進むことは明白で、教職員の負担を増やさずに学習データをしっかり成績に反映する仕組みが重要になってくる。

BLENDはこの課題をクリアにし、教職員が説得⼒を持って児童生徒を指導・評価できるよう、客観的な学習履歴のデータを参考にできるような機能を改善していきたいと野本氏は語る。

教育においてクラウド化、ゼロトラスト化そのものが目的ではないことは言うまでもない。だが、児童生徒たちに寄り添う時間を作りたい、児童生徒の学びをデータにして適切な見取りをしたい、教員も児童生徒もいつでもどこでも学べる環境を作りたい、そういう現場の切実な想いを実現するためには、国が示しているクラウド化とゼロトラスト化が一つの解であることは間違いない。そこに強みを持つKDDIが校務支援システムとの連携を実現させ、業務改善や働き方改革に取り組むことは、教育の明るい未来に向けて選択肢が広がったといえるだろう。

フルクラウド統合型校務支援システム「BLEND」の詳細はこちら
本記事でも紹介したように、教職員、生徒、保護者との情報連携を効率化するクラウド型の校務支援システム「BLEND」は、出欠、成績、帳票などをシームレスに一元管理し、教職員の働き方改革を実現します。お問合せはKDDI株式会社のサイトにアクセスください。

※BLENDの詳細は、モチベーションワークス株式会社のサイトをご覧ください。