【連載】どれ使う?プログラミング教育ツール

インターネット上のふるまい方を学ぶ、Googleのオリジナル教材「Be Internet Awesome」

〜自分で判断できるようになるために

本連載の移籍について

2019年から僚誌『窓の杜』で開始した本連載「どれ使う?プログラミング教育ツール」ですが、今回からは『こどもとIT』へ移籍することとなりました。今後はプログラミング教育ツールを中心に、子どもたちのITスキル・ITリテラシー向上に役立つデジタル教材などもご紹介していきます。今後とも変わらずご愛読のほどをお願いいたします。

Googleのオリジナル教材「Be Internet Awesome」では、ゲーム仕立てでネット世界のことが学べるコンテンツ「INTERLAND」を提供

GIGAスクール構想によりすべての小中学生が自分専用の端末を使用できるようになった今、プログラミングだけでなく、そもそもPCの使い方やインターネット上でのふるまいについて学ぶ必要性に学校現場や家庭の関心が向いています。

今回紹介するGoogleのオリジナル教材「Be Internet Awesome(最高なインターネットユーザーになろう)」は、ネット世界で子どもたちが安全に自信をもって歩けるようになることを目指したリテラシー教材です。

一方的な禁止や抑制ではなく、インターネット上には危険も、偏向した情報も、いじめも存在するという前提で、危険を見分ける方法や対処について学び考えようという姿勢が感じられる内容。様々なインターネットサービスを提供してネットの仕組みを形成しているGoogle自身が提供する教材という点でも注目です。

ゲーム仕立てのコンテンツと学習シナリオ

「Be Internet Awesome」には、「INTERLAND」というゲーム仕立てのコンテンツと、家庭向けのガイドブックや、学校向けのカリキュラムなどの各種リソースで構成されており、いずれも日本語化されています。

無料で誰でも使えるコンテンツで、「Be Internet Awesome」のトップページにいくと、ゲームコンテンツと家庭、学校向けの各リソースへの入り口があります。

「Be Internet Awesome」のトップページ
ガイドブックやカリキュラムなどのリソースはPDFでダウンロードできる

トップページで紹介されている通り、「Be Internet Awesome」の規範は以下の5つで、各コンテンツはこれに沿って構成されています。

・BE INTERNET SMART(かしこくインターネットを使える人になろう)
良いニュースも悪いニュースもネット上ではあっという間に広ります。共有するときは、どのような点に注意すればいいのか、用心しながら共有することの大切さを学びます。

・BE INTERNET ALERT(用心深くインターネットを使える人になろう)
ネットで見るもの、つながる人には、想像している通りとは限りません。安全にネットを利用するために、本物と偽物を見極める方法を学びます。

・BE INTERNET STRONG(安全にインターネットを使える人になろう)
オンラインでもオフラインと同様に、個人のプライバシーやセキュリティを守る大切さを学びます。

・BE INTERNET KIND(優しい心でインターネットを使える人になろう)
良いことも悪いこともネットの世界では強い力で広がります。 「自分がしてほしいと思うように他人に接する」という思いやりの考え方で正しい行動を促します。

・BE INTERNET BRAVE(勇敢にインターネットを使える人になろう)
何かあやしいものを見つけたとき、困ったときは、信頼できる大人に頼る、相談することが大切であることを学びます。

ただゲームコンテンツをやらせておしまいというのではなく、ファミリー向けガイドや教育者向けカリキュラムを参考に、子どもたちと対話をすることが大切です。PDFのリソースはとてもていねいにできていますし、A4サイズで「Be Internet Awesome の誓い」なども用意されていますからぜひチェックしてみてください。

子どもたちが楽しめる3Dゲーム「INTERLAND」

ゲームコンテンツ「INTERLAND」の入り口

ゲームコンテンツ「INTERLAND」は、子どもたちの気持ちをとらえて学びや対話の印象を記憶にとどめるのにぴったりです。「真実の川」「用心の山」「宝の塔」「思いやり王国」の4つのワールドが用意されていて、どこからでも始められます。

例えば「真実の川」は、選択肢ある設問に答えながら川をわたっていくゲーム。安全なブラウジングの基本やフィッシング詐欺を見分ける手立てなどを学べるようになっています。危ないからダメというのではなく、ブラウジングもメールも子どもが自分で利用することを前提に、どこで危険を見分けるのか技術的な知識がきちんと入っているのが非常に好感が持てるポイントです。

また、自分でできる対処だけでなく、大きな問題は直面したらすぐに大人に相談するようにというアドバイスされます。

「真実の川」ワールドは「にせ物にひっかからない」がテーマ
例えばhttpsに関する設問も出てくる

よりゲーム操作自体を楽しめるワールドもあります。「宝の塔」では、キャラクターが走り抜けながらアイテムを取っていくゲームで、ポイントがたまると「安全なパスワードを選ぶ」のがミッションの最終ステージになります。

「宝の塔」ワールドは「秘密を守る」がテーマ。ポイントになるアイテムを取りながら走り抜ける

大文字小文字、記号を混ぜるとより堅牢なパスワードになるという現実的な知識が身につきます。

強いパスワードはどれか判断する。当たるとアドバイスも

他のワールドもゲーム性と知識が適度に組み合わさっていて、楽しめる内容です。

「用心の山」は「用心して共有する」がテーマ。この情報を共有して良いのは誰かということを意識するきっかけになる
「思いやり王国」は「思いやりを持つ」がテーマ。優しさを広げてワールド内の悪い雰囲気を追い払い、トラブルメーカーをブロックする

技術を理解して危険を回避する目を持つ

いずれも、インターネット上の危険を自分の目で見てどう察知してどう回避するかということをトレーニングしようという視点が一貫していて、危険なものに触れさせないのではなく、危険はある前提で自分の足で歩けるようにトレーニングしようとするコンテンツです。

GIGAスクール構想以降、学校のデータ管理はクラウドが基本で学習用のツール類もオンラインのものが圧倒的に増えています。子どもたちがまず自分自身でID管理するのは必須ですし、インターネット利用も制限するのではなく、正しい知識とともに積極的な利用を促すことが大切です。

先生自身や親自身が自分の知識に不安があって、子どもに対して抑制的になってしまうことがまだ多いかもしれませんが、ぜひこのような教材をきっかけに、クラスや親子で一緒に学んで話し合うきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

「どれ使う?プログラミング教育ツール」これまでの記事

2019年~2022年4月まで「窓の杜」掲載

狩野さやか

株式会社Studio947のデザイナー・ライター。ウェブサイトやアプリのデザイン・制作、技術書籍の執筆に携わる。自社で「知りたい!プログラミングツール図鑑」「ICT toolbox」を運営し、子ども向けプログラミングやICT教育について情報発信している。