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京都市、GIGA第2期で「iPad」を9万5,000台導入、ティム・クックCEOが視察

クックCEO、京都市立御所東小学校を視察

京都市はGIGAスクール構想第2期において、Windows端末からiPadへの機種変更を行い、市立の小学校・中学校・総合支援学校あわせて225校の児童生徒と教師に、計9万5,000台のiPadを導入した。すでにiPadの活用は始まっており、9月26日にAppleのCEO(最高経営責任者)であるTim Cook(ティム・クック)氏が京都市立御所東小学校の様子を視察した。

クックCEOが訪れたのは、同校3年生の社会科の授業。この日は、子供たちが地域の飴工場を見学した際の写真をもとに、Keynoteを使って6コマ漫画にまとめる学習に取り組んでいた。飴づくりの工夫を見つけて吹き出しに書き込み、作品に仕上げるのがポイントだ。

授業はKeynoteで配布された写真を選ぶところからスタート。自分の表現したい写真6枚を選び、さらにKeynoteのライブビデオを使って自分の写真を撮り、吹き出しに飴づくりのポイントを記入していく。途中で止まった子供たちは、取材メモを見直しながら、どのように表現するのが良いかを考えた。

Keynoteで配布された写真を選ぶ
飴づくりの工夫を吹き出しに書きこむ

そうした中、クックCEOが「ハロー!」と元気よく子供たちに挨拶しながら教室に現れた。クックCEOは、何人かの子供たちのとなりに座って、「その写真は何をしているところですか?」と聞いた。「青色と赤色の飴をまぜているところです」と話す子供に、「食べてみた?」「美味しかった?」と微笑みながら会話をしていた。子供たちは緊張気味だが、クックCEOを前に堂々と説明していて頼もしい。

子供たちの作品を見ながら質問をするクックCEO

授業後、クックCEOはインタビューで、「今日見せてもらったクラスでは、子供たちが自分から積極的に取り組んでいたのが印象的でしたし、iPadを使って創造的に学んでいる姿を見て、とてもワクワクしました。特に印象的だったのは、指示通りに作業するだけではなく、写真や吹き出しを工夫して編集しながら、自分たちで考えて作品を仕上げていたことです」と語った。

また、日本の教育にiPadが活用されていることについては、「学びをクリエイティブにする道具として使ってほしいと思っています。子供たちには、自分の考えを表現しながらクリエイティブなスキルを身に付けてほしい。コーディングも、問題解決の力を養ううえでとても重要です」と述べた。iPadは、日本の教育市場において、先生が教えること、児童生徒が学ぶこと、この両方に貢献できると話す。インクルーシブな観点でも、すべての子供たちが平等に学べる機会を提供できると述べた。

京都市立御所東小学校 後藤文博教諭

授業を担当した後藤文博教諭は、使い始めてまだ1ヶ月ほどではあるものの、iPadを活用した学習について、「子供たちも、教師も、写真や動画が扱いやすくなり、見て欲しいところ、表現したいところを伝えやすくなったのが良いと思います」と語った。またiPadのパフォーマンスの良さにも触れ、「子供たち同士でデータ共有もしやすくなり、表現の選択肢が増えることがiPadのメリットだと思います」と述べた。

京都市に聞く、iPad採用の背景やその理由

iPadの導入経緯について、京都市教育委員会に話を聞いた。

京都市では現在、児童生徒8万3000人が学んでいる。GIGAスクール構想第1期では、Windows端末を導入したが、障がいのある児童生徒たちが通う総合支援学校8校はiPadを選択した。この実践が、第2期におけるiPad導入の大きな後押しとなったようだ。iPadを活用した学習では、子供たちが表現できる幅が広がり、授業への参加意欲も高まった。こうした変化が教育現場での手応えにつながったという。

京都市の概要

GIGA第2期に向けた端末の検討会議においては、どのようなデバイスを導入するか、教員、学校長、教育委員会のメンバーで議論をスタートした。前述の総合支援学校での実践・成果を踏まえ、かつ、5年間使用して故障が少なかったこと、他のOSと比較しても予算的にほとんど変わらなかったことがポイントにもなった。

また、京都市が目指す学びは、子供たちが学びの当事者になること。自ら考え、アイデアを表現し、仲間と協働する学びを重視している。このビジョンを実現するための「6つの道筋」を提示しており、教育の質を向上させるためのデバイスを考えたというのだ。

京都市の目指す教育ビジョン

その結果、iPadが最適なデバイスであると判断された。特に評価されたのは、持ち運びやすさ、性能の高さ、多機能な点だという。教育長の稲田新吾氏は、教師の声を重視してiPadの採択を決めたと述べており、「iPadは直感的に使えるソフトウェアやアクセシビリティ機能が充実しており、多様な学習ニーズに対応できる。また、児童生徒の主体的な学びを支える伴走者としての存在を担っている」とコメントを寄せている。

京都市が採用したiPad

今後、京都市ではiPadを活用しながら、子供たちが予測困難な時代を生き抜くための力を身に付けられるよう、さまざまなアプローチで学習をアップデートしていく考えだ。主体性を引き出し、自分の学びを自分で調整しながら進められるよう、iPadを活用していきたいと語っている。

(前列左より)京都市教育委員会事務局 指導部 学校指導課 林 和津慎氏 / 総務部 学校事務支援室 担当係長 安部裕太氏 / 指導部 学校指導課 指導主事兼職 京都市総合教育センター 指導室 指導主事 津髙修一氏、(後列より)京都市教育委員会事務局 指導部 学校指導課 担当係長 北山翔太氏 / 京都市立御所東小学校 河原雅春校長 / 総務部 学校事務支援室 担当課長 福井俊彰氏