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矢野経済研究所、国内eラーニング市場の調査結果を発表

2021年度は前年度比13.4%増、2022年度も需要が維持されるが伸長は抑制

株式会社矢野経済研究所は、国内eラーニング市場について調査を実施し、BtoB・BtoC市場の動向や、参入企業動向、将来展望を報告した。

1. 市場概況:市場規模は前年度比13.4%増
2021年度の国内eラーニング市場規模は、前年度比13.4%増の3,309億3,000万円を見込む。内訳は、法人向け(企業・団体内個人を含む)のBtoB市場規模が971億3,000万円(前年度比12.6%増)、個人向けのBtoC市場規模が2,338億円(同13.8%増)。両市場ともにコロナ禍による需要の高まりが続き、市場を拡大させる見込みとなっている。

ネットワーク・ラーニング(BtoB)市場では、コロナ禍以降、企業での集合研修や対面教育などがオンラインに切り替わったことでeラーニングサービス全般への需要が急激に高まった。2021年度においてもその需要は高く保たれている。

一方で、顧客層の広がりにより、小規模なサービス導入が増加し価格下落が進行している。また、競合サービスの増加と多様化による競争の激化を課題視する事業者が多い。

BtoC市場においても、コロナ禍によりeラーニングを活用した遠隔教育が定着したことで引き続きeラーニングサービスに対する需要が高く、ユーザー数が増加している。また、子ども向けのeラーニング領域においては、学校教育におけるICT化の進行により、保護者のeラーニングに対する抵抗感が減少しつつあることが市場を拡大させる要素の一つとなっている。

なお、2021年度は前年度に続き、BtoC市場を構成する、ほぼすべての学習ジャンルが市場を拡大させるものとみられている。

2. 注目トピック:ほとんどの事業者が今後の成長を見込む
今回の調査では、参入分野や個人向け・企業向けの区分に関わらず、ほとんどの参入事業者がポストコロナ・ウィズコロナにおいて当該市場が順調に成長していくことを見込んでいた。

各参入事業者が今後の市場動向における重要トピックスとして注視している要素としては以下がある。

  • 遠隔教育やオンライン教育の定着:時間や場所などの制限を受けにくいeラーニングは事業者・学習者双方にとってメリットが大きいため、今後コロナ禍が終息した後も利用が定着し、対面教育と併用される状況が続く。
  • 学習者の年齢によるeラーニング活用状況の違い:一般的に学習に対するモチベーションなどの観点から幼児~小学生向けには対面での指導が効果的とされる。対して、中学生~大学生・社会人などの学習者向けにはeラーニングの強みを活かしやすい。
  • 新たな事業者およびサービスの参入:新規事業者およびサービスが多数参入していることから事業者間の競争が激化している。Web関連サービスや人事関連サービスなど、あらゆる領域の事業者が競合になり得る環境となっている。

3. 将来展望:2022年度の市場規模は10.2%増と予測
2022年度の国内eラーニング市場規模は、3,645億5,000万円(前年度比10.2%増)と予測する。2022年度も、BtoB市場、BtoC市場ともにコロナ禍によって高まった需要が維持されるものと見込まれ、eラーニングのユーザー数および利用企業数が増加することが想定されている。

ただ、市場全体を通してコロナ禍発生当初に比べ、ニーズが落ち着き始めている。また、BtoB市場では顧客単価の下落、BtoC市場では対面教育への需要の高さや無料学習サービスが数多く生まれていることなどの阻害要因(課題)があること。そのため、金額ベースの伸長は抑制されるものとみられている。

そうした点から、2022年度のBtoB市場規模は1,067億5,000万円(前年度比9.9%増)、BtoC市場規模は2,578億円(同10.3%増)と予測している。

【調査要綱】

  • 調査期間:2021年11月~2022年3月
  • 調査対象:eラーニングシステム開発・構築・販売事業者、eラーニングコンテンツ開発・製作・販売事業者、 eラーニングを介した研修や講義を提供・運営する事業者(学習塾、語学学校、研修事業者等)、 学習ソフトウェア開発・製作・販売事業者等
  • 調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・FAX・メールによるヒアリング調査、ならびに文献調査併用