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「対話」から始まるメタバース運用、信頼と温もりで支える富山市の不登校支援

自治体のメタバース不登校支援 現場レポート<富山市編>

不登校児童生徒の増加が全国的な課題となる中、富山市では学校でも家庭でもない、新しい学びの形として、 レノボ メタバース スクールを活用した「MAPメタバース」 を整備しました。アバターを通じて子供たちの交流を生みだす工夫とは?現場の丁寧なフォローで運用する富山市独自のメタバース運用を紐解きます。

●富山市教育委員会
富山市は人口約41万人。市内に小学校64校、中学校26校(令和7年度)を擁しています。自立と公共の精神を重んじる教育の中で、約27,000人の児童生徒が学んでいます。

※記事の内容や肩書きは、2026年3月時点のものです

適応指導教室のその先へ 第三の居場所としてメタバース空間を整備

富山市における不登校児童生徒数は、令和5年度末時点で1,120名に達し、その増加に歯止めをかけることが喫緊の課題となっていました。市では以前より適応指導教室である「MAP豊田」や「MAP婦中」を運営してきましたが、心身の状況により外へ出ること自体が難しい子供たちに対しては、支援が届きづらい現実がありました。

そこで、自宅からアクセスできる選択肢として、 レノボ メタバース スクールを活用した「MAPメタバース」 を開設。リアルの適応指導教室とは異なる、第三の居場所として2025年度よりスタートしました。

左より、富山市教育センター所長 山岸朋子氏、教育相談係 指導主事 奥野由子氏

富山市教育センター所長 山岸朋子氏は「MAPという名称には、子供たちが思い描くそれぞれの道へ歩んでほしい、人生の地図を描いてほしいという願いが込められています。MAPメタバースも子供たちが自分のペースで社会とつながる機会を持ち、自立に向けた学びを進められるような支援を目指しています」と語っています。

2026年1月現在、市内の小中学校を対象に40のアカウントを配布し、33名の児童生徒がこの新しい居場所を活用しています。

まるで一緒にいるような感覚 自分なりの距離感で過ごせるのが魅力

富山市教育センター教育相談係の指導主事 奥野由子氏は、レノボ メタバース スクールを使用する中で感じた優れている点として、「教育現場において不可欠な 安全性が確保 されていることと、メタバースでありながら リアルに近い交流体験 ができること」と語ります。

チャット機能には 不適切なワードをマスキング するフィルタリングが備わり、管理者が必要に応じてログを確認できる点は、教育委員会が運用する上で大きな安心材料になっているといいます。

また、アバター同士の距離が離れると声が小さくなるという空間設計は、まるでその場に一緒にいるかのような臨場感を生み出してくれます。奥野氏は、「子供たちはメタバース上でつながりを求めていますが、同時に、自分の時間を大切にできる選択肢も必要だと考えていました」と語ります。

積極的に誰かと交流したい時は近づき、一人の時間を過ごしたい時は離れるという具合に、子供たちの繊細な心の揺れに合わせて、自分なりの距離感で過ごせるのが魅力だというのです。

「仲間の声が聞こえなくなって『待って、待って』とやり取りする場面も見られます。そうした交流を持てたことが子供たちの自信につながってほしいですね」(奥野氏)。ほかにも、 オンライン支援員 の存在も心強いといいます。

MAPメタバースの教室に入ったすぐの空間。今日の活動やゲームが示されている

信頼を構築する120分の「ウエルカムセッション」

富山市が「MAPメタバース」の運用において最も重きを置いているのが、利用開始前に教育相談員が行っている「 ウエルカムセッション 」と呼ばれる個別面談です。これは単なる操作方法やルール説明にとどまらず、1時間半から2時間という長い時間をかけて、オンライン上で子供や保護者の不安を丁寧に取り除くことを目的に行われています。

奥野氏は「勇気を出して来てくれた子供たちにとって、メタバース空間への最初の一歩は抵抗が大きいと感じています。ウエルカムセッションを通じてその不安を和らげることが、その後の継続的な利用につながると考えています」と語っています。

実際に、このセッションが子供の行動に変化をもたらした例も報告されています。ある生徒は、ウエルカムセッションを受けた翌日、久々に学校の相談室へ登校し、その内容を先生に伝えたといいます。メタバースという空間であっても、現実世界で子供と大人の信頼関係を築くプロセスがいかに大切であるかを示しています。

アバターが育む自己肯定感と現実へのフィードバック

「MAPメタバース」は現在、学校がある平日の10時~12時、午後は13時~15時に開室しており、子供たちは自分の好きな時間に来て過ごしています。会話やゲームを楽しむ子もいれば、一人で学習に取り組む子もいるなど、様々です。

また、空間内では、子供たちが自ら役割を見つけ、いきいきと活動する姿が見られます。例えば、学習コンテンツに100時間以上取り組んだ生徒に対し、周囲の仲間がアバターの拍手機能で一斉に喝采を送るなど、仲間を承認し合う交流も生まれています。富山の地方鉄道の駅名を模したすごろく大会やクイズなど、地域性を活かしたイベントも子供たちの心を掴んでいるといいます。

オンライン支援員が様々なアイデアで活動をサポート

ほかにも、「静かに過ごしたい人のための部屋も必要だ」という生徒の提案から、落ち着いたカフェのような空間が新設されるなど、子供たちの主体性も見られるようになってきました。こうした体験を通して、「開室時間に合わせて活動することで昼夜逆転が解消された」という保護者の声や、メタバースでの交流を経てフリースクールへ通い始めた事例など、少しずつ成果が届いています。

子供たちに「地図」を届けたい 学校・家庭への周知と理解を広げる

一方で、この新しい支援の形をさらに広げていくためには、学校現場の先生への理解と周知が不可欠です。

山岸氏は「子供たちに最も近い存在である担任の先生や保護者に『MAPメタバース』の可能性を正しく知ってもらうため、来年度は研修会等を通じた積極的な情報発信を計画しています」と語っています。情報を必要としているすべての子供たちにこの地図が届くよう、富山市はこれからも温もりのある支援を続けていく考えです。

📌レノボ メタバース スクール(LMS)へのお問合せ

今回ご紹介した静岡県教育委員会で採用されたレノボメタバーススクール。詳細・お問合せは下記よりご確認ください。
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