トピック
AI時代の学びに向けて今、教師が知っておきたいこと
情報科教諭×日本マイクロソフト社員対談企画
- 提供:
- 日本マイクロソフト株式会社
2024年12月17日 06:30
「ChatGPT」に代表される生成AIが社会で急速に広がった今、教育現場においてもAI活用が始まっています。
AIはどのように学習で活用できるのか、またAIは学びをどのように変えていくのか。Microsoft Showcase Schoolに認定され、先進的なICT教育に取り組む足立学園中学校・高等学校 情報科教諭 杉山直輝先生と、元高校教員で現在は日本マイクロソフト株式会社の栗原太郎氏にAI時代の学びをテーマに語ってもらいました。
探究学習や面接指導など、生徒の個別対応に生成AIを活用
─ 生成AIを教育で活用することについては、さまざまな意見があります。杉山先生はどのように考えられていますか?
杉山 これだけ社会で生成AIが使われると、学校での活用も今後スタンダードになると思います。私はMicrosoftの会話形式の生成AI「Microsoft Copilot(以下、Copilot)」を授業や校務で使用していますが、調べもののスピードが一段と速くなりました。
栗原 例えばどんなことに使っていますか?
杉山 生徒の探究活動のサポートですね。高校の探究コースでは1年かけて個別のテーマで探究活動を進めるのですが、そのテーマ決めの面談で、いろいろな分野やテーマに興味を持った生徒が相談に来ます。私の専門ではない分野については事前に調べておく必要があり、とても時間がかかっていました。Copilotを使うと、専門外の分野もさっと調べて効率よく知識を深めておくことができます。これは大幅な時間削減になっています。
栗原 特に専門性の高い情報は、ウェブ検索で上位に出てくる情報だけではアカデミックな背景まではつかみづらいですよね。
杉山 あとは、進路指導でもとても助かっています。大学受験では面接を行う受験方式が増えていて、生徒の面接指導の準備負担が年々増えています。大学のパンフレットを全て調べ、学部・学科のアドミッションポリシーを読み込み、生徒の発言に面接官らしい指摘をしなければいけません。ひとりひとり違う志望校に合わせた準備にかなり時間がかかっていたのですが、Copilotを使うことでかなり楽になりました。
栗原 確かに、探究活動や進路指導のように、先生の専門とは全く違う知識や対応を求められるようなシーンでCopilotが力を発揮しますね。ほかにも、文章作成などにもCopilotは有効で、多くの先生が業務の効率化に利用できると思います。Microsoft 365 Educationでは、すでに教員の皆さんはCopilotの利用ができるようになっていますから、ぜひ積極的に使っていただきたいですね。
特に教育現場では機微情報の漏洩リスクなど、生成AIの安全性が気になるところだと思いますが、学校向けのCopilotではアカウントが保護されていて、ユーザーが書き込んだ内容が保存されたり、AIモデルの学習に使われたりすることはありません。書き込む内容を気にせずに使えるのがCopilotの安心ポイントです。
生徒も生成AIを使うことが当たり前の時代に
─ 生徒たちは生成AIを利用していますか?
杉山 生徒たちには、まだ授業では使わせていません。私が情報の授業でCopilotを使うところを見せているので、どのようなものかは理解しています。
私は、これからの世の中は文章生成AIを使うことが当たり前になるので、できれば高校生に文章生成AIも触って欲しいと考えています。使いこなすには練習が必要で、実際に画像生成AIでも生徒が思った通りの画像を生成させるのはとても難しいです。求めているものをAIに生成させるには、使いながら経験値を上げていくしかありません。
一方で、学校で使用を制限しても、生徒は個人でChatGPTを使用して感想文などをAIに書かせて、そのまま提出してすぐにばれてしまう……なんてことも起きています。でもそうやって使ってみて、使い慣れていくと、できた文章を推敲する技術を自分で身につけていこうというふうに、価値観がすこしずつ変わっていくんじゃないかと思っています。
栗原 もし生徒がCopilotを使えるようになったら、どのようなことに使いたいですか?
杉山 最初は調べものからですね。今までもウェブ検索は使っていますが、検索結果の一番上しか見ないという生徒も多いので、Copilotはそれをだいぶ変えられるのではないかと思っています。
栗原 確かにウェブ検索は、生徒によっては、さまざまな情報からどれを選ぶかというのが難しくて、ずれてしまうことも多いんですよね。会話形式で調べられるAIを使うことで、だんだん良い情報の選び方がわかるようになっていくと思います。AIの回答は間違うこともありますが、Copilotの回答には参照元のウェブサイトのリンクが出るので、元の情報を確認することもできます。
杉山 Copilotの良いところは、そこですね。今の生徒たちは、わからないことをさっと調べる習慣はあるし、リンクをたどっていくことも慣れているので、会話形式で聞けて、リンクも示されれば、関連した情報をどんどん深めていけるんです。教科書のレベルをはるかに越えるような知識をつける生徒も出てくると思います。
探究学習では、最初に自分のテーマについて文献を調べたり論文を読んだりするんですが、生徒はそういうことに慣れていないので、ものすごく大変で時間がかかります。ここでCopilotを使えば、論文を要約してもらうこともできるので、ポイントを押さえてから深掘りできます。探究の最初の入り口部分のスピードが全然変わるでしょうね。
栗原 興味をもって情報を調べるサイクルがどんどん早まりますよね。全然違うスピード感で情報を吸収できてしまう。そうなると、高校で生成AIを使っている生徒とそうでない生徒では得られる情報量にも差が出て、高校生のうちにアクセスできる知見が大きく変わる。サポートする先生が生成AIを使っていたかどうかということだけでも、情報量の差が出てきそうです。
AIで変わる未来の学びの姿
─ AIの今後の発展で学びはどう変わっていくのでしょうか?
栗原 今の生成AIは主にウェブアプリとして利用しますが、Microsoftは近い将来、すべてのアプリやデバイスをAIで使えるような環境を提供していく予定です。すでに「Microsoft Word」や「Microsoft Excel」などのアプリケーションにCopilotが組み込まれていて、AIに指示をして文書作成や計算処理ができるようになっていますが、今後はアプリ以外にも“あちこちにAIがいる”という環境になっていきます。
文字入力もAIによって音声やペン入力の認識力がますます上がっていきます。手書きや音声で入力した文章を、AIが解析して構造化して表示したり、手書きで丸や矢印で図にしながらメモしている内容をわかりやすくまとめてくれたり、AIが人のあらゆる作業をアシストして、“それならもっとこうしたらどう?”と提案してくるような世界が待っていると思います。
杉山 AIが発達しても最終的な作品を完成させるのは人間ですが、それをアシストするAIがいることで作れるものの質が変わってきますね。
栗原 そうです。例えば、「Microsoft Whiteboard」にはアイデアを構造化する機能があります。画面にたくさんの生徒の意見が付箋で貼られた状態から、クリックひとつでAIが付箋に書かれた内容を解析して、ジャンルを立てて分類して、付箋を並べ直してくれます。今は付箋に入力されたテキストをもとに解析していますが、これが将来的には手書きで書いたものでも自在に解析して、構造化したりレイアウトしたりできるようになる。そんなイメージを持ってもらえたらいいと思います。
AIが人をアシストするという点でもうひとつ紹介したいのが、「Microsoft Teams for Education」のルーブリックを自動生成する機能です。例えば地学の授業で、どういった分析力をつけさせたくて、どういった評価をしたい、というAIへの指示を書いて、生徒の年齢やABCなど評価の幅を選ぶだけで、あっという間にルーブリックが生成されます。
探究の活動では、先生方からルーブリック等の評価の部分が大変だという声を聞きます。この機能を使うとルーブリック評価のサイクルを早めることができます。今まで単元ごとにやっていたものが、授業ごと、あるいは授業の中で作成と修正ができ、探究授業そのものの質が変わっていくと思います。
生徒と先生、両方をサポートする教育用AI機能
─ 今からでも利用できるAI機能は他にもありますか?
栗原 Microsoft 365 Educationには無償で利用できる「Learning Accelerators」というAIツール群があります。その中の「Search Progress」は、ウェブ検索のスキルを上げて情報リテラシーを高めることができるツールです。
生成AIを利用すれば情報を調べやすくなるとはいえ、ウェブ検索で情報の発信元をきちんと確認して、自分で情報を選ぶ、という基本的な力は重要です。Search Progressは、ウェブ検索でどうやったら正しい知にアクセスできるのか、検索のコツや手法がわかるようにサポートしてくれるツールで、先生は生徒の検索スキルを確認することができます。杉山先生が仰るように、生徒の情報リテラシーとウェブの情報を批判的思考で見る力を育むことは大切です。
杉山 同じLearning Acceleratorsにある「Reading Progress」は英語の授業で非常によく使っています。英語科の先生によると、PCに向かって英語を読み上げると発音や流ちょうさをAIが判定してくれるので、話す練習にとてもいいそうです。英語を話す練習は敬遠してしまいがちですが、生徒もPCに向かって話すことは抵抗が少ないようで、たくさん場数を踏むことができます。
Reading Progressが無かった時代は、生徒が撮った動画を提出させ、それを再生して発音と流ちょうさをチェックして、一人ずつ評価をつけていたので、先生側の負担もかなり減っていますね。生徒も自分の発音のどこがよくてどこが足りないのかが具体的にわかりやすく、繰り返し練習できるので、英語の学び方の質がすごく変わってきていると感じています。
ICTを活用するようになってから、生徒の学び方って変わってきているんですよ。生徒が受け身ではなく、自発的な姿勢で、会話をしながら授業を進めていくことがとても増えました。デジタルツールがあることで協働的な学びもしやすいし、わからないことをすぐに調べるという習慣もつきます。
学んだ内容はデジタルデータで残しておけるし、生徒にとって得意な入力手段が違っても、手書きはもちろんタイピングでも音声入力でも好きに選べます。これでさらにAIがアシストしてくれるようになるとすごく便利になるし、そのアシストをうまく使いこなせるようになると、相当学びの質が上がってくると思いますね。
Copilotでできることをまとめたリーフレットがこちらから無料でダウンロードできます。
動画の要約や、お知らせ文書の下書きや挿絵の生成、成果物の評価など、教育現場で生成AIの活用方法をご検討する際にお役立てください。
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※本記事は、2024年4月に日本マイクロソフト株式会社から発行された小冊子を元に再構成したものです。