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ついにChromeOS搭載電子黒板が登場、これは大画面のChromebook! 新しくなったミライタッチで授業はどう変わる?

 電子黒板が、またひとつ進化した。

 さつき株式会社は2025年1月27日、電子黒板に搭載可能なChromebox OPSを発表した。この新製品は、2023年2月に発売を開始した「MIRAI TOUCH for ChromeOS Flex」の新型となる。Google Playストアのアプリが使えるなど機能の自由度が格段にアップしたほか、高性能CPUに加えてChromebookと同等のセキュリティチップを搭載。性能とセキュリティの面で長期に渡って安心して使えるものとなっている。

 まさに“大画面で高性能なChromebook”とも言える新型ミライタッチについて、スタディサプリ「情報I」の講師でもある青山学院中等部講師の安藤昇先生に、活用法を聞いてみた。

ChromeOS搭載新型ミライタッチは、これまでの電子黒板と何が違うのか?

 その前に、そもそも、ChromeOSを搭載したミライタッチは、これまでの電子黒板と何が違うのかを確認しよう。

Chromebox OPS を搭載したミライタッチ

 今回、ChromeOS FlexからChromeOSに変わったことが最大のポイントである。従来の電子黒板は、Android OSが主流であったが、Google Playが利用できないなどの制約や、GIGAスクール端末と異なるOSであることが課題になっていた。

OSごとの機能比較、新型ミライタッチはChromeOSを採用

 そこで、新型ミライタッチでは、GIGAスクール端末であるChromebookと同じChromeOSを搭載し、児童生徒が普段使用している端末と全く同じことをできるようにした。授業で使っているアプリのインストールが可能なほか、操作感もChromebookと同じなので、現場の先生や児童生徒もより使いやすくなる。しかも、Chromebookにも搭載されているセキュリティチップ「Titan C」を搭載しており、セキュリティも大幅に強化。ゼロタッチ登録にも対応し、自治体や学校の管理運用面での安心感も高い。

ChromeOSを採用した「Chromebox OPS」が新型ミライタッチに搭載されている

安藤先生の注目ポイント① Google Play ストア対応でアプリ活用

スタディサプリ「情報I」講師/青山学院中等部講師 安藤昇先生

 安藤先生は、新型ミライタッチでアプリの利用が可能になることについて、「今の生徒たちって、教師が知らないようないいアプリをたくさん知っていて、生徒から『このアプリを使いたい』と提案されることもあります。ChromeOSに対応するアプリであることが前提となりますが、生徒が見つけたアプリを電子黒板上で動作できることで活動の幅が広がりますね」と語る。

「ChromeOS Flexでは、Google Play ストアが使えなかったんですが、今回はChromeOSということで電子黒板上でアプリが立ち上がります」と安藤先生

 安藤先生があげた例では動画エディタの「CapCut」がある。Webブラウザでは使える機能が大幅に少ないが、新型ミライタッチで動かせばアプリが本来持っている多くの機能をそのまま活用でき、共同編集の機能も使える。特に新型ミライタッチでは、一般的なビジネス用ノートPC並みの高性能なCPUを搭載しており、この性能を活かしたアプリを使える。

「使い慣れたアプリと電子黒板がシームレスにつながることで、生徒たちの表現の幅が広がり、よりすぐれたものを電子黒板上で作り上げることができる」という。

電子黒板上で高機能なアプリが使える新型ミライタッチ(安藤先生のYouTubeより)

安藤先生の注目ポイント② セキュリティが担保され最新機能もとりこみやすい

 安藤先生はChromeOSが搭載されることで、「セキュリティや最新機能の取り込みで大きく差が出る」と話す。特に旧来のOSであるAndroidやChromeOS Flexは簡易版という意味合いが強かったため、そこが解消される点を評価している。

 たとえばOSのバージョンアップ。ChromeOSは1カ月に1回程度はアップデートがあるが、ChromeOS Flexはアップデート頻度が低い。ChromeOSを搭載するChromebookでは使える新機能が、ChromeOS Flexで使えるようになるには時間がかかることもあるという。また、バージョンアップでは同時に新機能搭載だけでなく、既存機能の仕様変更も発生する。

 そういった状況のなかで、ChromeOS Flexを搭載したPCにおいて、バージョンアップタイミングが違えば期待する新機能が使えないこともある。仕様が違えば操作に戸惑いも発生しがちになるが、ChromeOS搭載ミライタッチではそれがないことが期待される。

「ChromeOSの最新バージョンを使用できるところがメリット」と安藤先生

 また、セキュリティの面でもChromeOS搭載ミライタッチは有利になる。Chromebookと同様のセキュリティチップを搭載しているため、GoogleのTitanセキュリティキーといったセキュリティデバイスを使って認証をすることもできる。これはセキュリティチップのないChromeOS Flexにはできないことだ。

 これにより、休み時間は児童や生徒に開放していて、先生用のIDでログインされてしまうことを防ぐ、といったことができる。電子黒板は常に教室に置いておくもの。セキュリティデバイスを使うことで、児童生徒のいたずらから守り、しかも使い勝手が悪くならないのもChromeOS搭載ミライタッチのメリットとなる。

ChromeOS搭載でセキュリティーを強化。児童生徒が先生用IDでログインしてしまうリスクを防ぐ

安藤先生の注目ポイント③ ChromeOS Flexで使えた機能はそのまま使える

 ミライタッチは、ChromeOS FlexからChromeOSに進化したが、もちろん今までChromeOS Flexで利用できたデジタル教科書の利用やWeb会議といった機能はそのまま利用できる。また、管理コンソールで一括管理することも同様に可能だ。

 そのほか、ChromeOS搭載ミライタッチは電子黒板としての機能も充実している。カメラは、電子黒板の下部に内蔵された4Kカメラを実物投影機として活用できるほか、Web会議用に超広角カメラや8アレイマイクを搭載し、話者からの声を確実に収録する。しかも、録画データも容量が軽く、安藤先生は「スクリーンショットの感覚でどんどん動画が撮れるのが良いと思います。解説動画や授業動画なども今以上に簡単に作成できますね」と語っている。

Web会議用に超広角カメラと8アレイマイクを搭載
黒板のマークされた部分のみが録画され、解説動画や授業動画を簡単に収録できる
手描きの文字もリアルタイムで清書できる
ホワイトボードとしても使用可能

安藤先生の注目ポイント④ 4Kカメラ搭載で読み取り性能アップ、文字認識率も向上

 安藤先生が新型ミライタッチに注目する点は、アプリへの対応やセキュリティーだけではない。電子黒板の下部に内蔵されたカメラが、4Kにアップグレードされて「実物投影機」として活用できる点もおすすめしている。しかも、光学3倍ズームレンズを搭載しており、教科書や資料など細かい文字までしっかりと映し出せる。

 使い方も簡単で、電子黒板の下に映したいものを置くだけで簡単に読み取り、投影することができる。資料全体を映すだけでなく、光学ズームレンズで一部分を拡大することも可能だ。

ミライタッチの下部(赤丸部分)にはカメラが内蔵され、実物投影機として活用できる
ミライタッチの下部に内蔵された4Kカメラ

 4K解像度と3倍光学ズームを活用し、資料を鮮明に読み取り撮影することで、Googleレンズで必要な部分をテキスト化し、Googleドキュメントに貼り付ければ、簡単に文字起こしもできる。テキストデータにすることで、英語翻訳や読み上げも一瞬でできてしまう。また、翻訳する言語は英語だけではなく、多言語に対応可能。生徒の回収物を読み込んでテキスト化したり、「外国から来た児童生徒への対応にも活用できます」と安藤先生は話す。

内蔵の4Kカメラで映したいものを撮影
Googleレンズで選択し、テキスト化
テキストをGoogleドキュメントに張り付けて文字を認識
英語や韓国語など多言語に翻訳や読み上げ可能

 そして、テキストデータを生成AI、たとえばGoogleのGeminiに読み込ませれば、そこから問題を瞬時に作成することもできる。

 安藤先生は、文章になった資料だけでなく、授業の解説動画などもGeminiに読み取み込ませることで、問題作成があっという間にできることをメリットに挙げる。「授業が終わった後すぐに、その授業の内容をもとにした確認問題や宿題が出せたり、振り返りがしやすくなりますね」と安藤先生は語った。

動画をGeminiに読み込ませて、内容を要約させる
要約した内容から、問題を作成するのも瞬時にできる

 安藤先生はChromeOS搭載の新型ミライタッチについて、個別最適な学びにふさわしいツールだと話す。「AI時代に入って個別最適な学びがどんどん進んでいきますが、教室では個人で学んだことを共有し、他者と共感できる場が重要になってきます。新型ミライタッチであれば、子供たちや先生が安心・安全に使えるのはもちろん、高性能なアプリの利用も可能、クリエイティブな活動を電子黒板上で行えるようになることで、単なるデータ共有、情報提示に終わらず、児童生徒の共感を生み出すような場面がつくれると思います」と語った。

性能・セキュリティ・管理運用性に優れ、GIGA第2期の本格的な活用を支える

 安藤先生が語ってくれたような学びの活用を支える新型ミライタッチは、第13世代インテル Core i3プロセッサーに、8GBのメモリと256GBのストレージを搭載。GoogleがAI時代の端末として最近発表した、Chromebook Plus並みの処理能力を持っている。

 また、新型ミライタッチにはもうひとつ大きな特徴がある。ChromeOSを搭載している本体「Chromebox OPS」が、取り外し可能なモジュール構造となっていることだ。これはインテルが策定したオープン規格「Open Pluggable仕様(OPS)」に準拠しているため、ディスプレイ部分と取り外しが可能になっている。

新型ミライタッチは、ChromeOSを搭載している本体の取り外しが可能(安藤先生のYouTubeより)

 これにより、保守が必要なときに本体とディスプレイ部分を別々に扱うことができるほか、将来、ディスプレイ部分、つまり“黒板”の部分はそのままで、OPSに準拠した新しい機器と入れ替えるということも可能だ。反対に黒板部分に何かトラブルがあった場合でも、本体部分まで修理に持ち出すことなく対応ができる。柔軟な保守体制をとれるため、授業を止めない、という点でも大きなメリットになる。

 電子黒板の進化は、先生の教え方にも大きく影響する。新型ミライタッチでどのようなことができるようになるのか、安藤先生の動画もチェックしていただきたい。